013:青ゴブリン、猪と戦う

 初めてのおつかい、シシ狩り編。このあとすぐ!

 ……と、いうわけで~。静かに素早く、バレる前にいい所、押さえようか。



 ……着いた~ッ!

 じゃあここで、大盾と石を用意。


「……ぬんッ、【火の魔球ファイア・ボール】」


 茂みの奥、猪のお尻めがけて、石を投げる。

 火魔法もおまけしておこう。お得だね~。


 ……で、ご機嫌いかが?


「プゴォォ、ピャアァー !! 」


 両方当たった。HPゲージが出て、1割ぐらい減った。

 で、悲鳴を上げた猪がこっち向いた。目が血走ってるとか、毛ぇ逆立ってるとかは分かんない。


「……フーッ、フン!」


 でも鼻息は荒そう。お怒りだね~、当然ですが。

 ……え? “仲間にしますか” ?? 無理無理、それを決めるのは私ではない。


《「ブラウンボア」1頭と交戦中です》


 やっぱダメだな~。

 ……お、力いてきた。これがバフ?


 大盾を両手で持って、かまえ直すうちに、猪は走りだしてた。もちろん、俺めがけて一直線。

 やっぱり、もう1個石投げる時間はなかったな~。


 ……はい、ぶつかる前に【鑑定】。


―――――

ブラウンボア(♀) Lv.16[交戦中]

(分類)魔物/動物型

 北の大陸で最も一般的な猪。雑食。

 森に棲むが、エサを求めて平地に現れることも多い。


 HP:89%     MP:―

―――――


 あとで読む。まずは勝負 !!


「【ガード】、【着火バーン】!」


 猪の鼻先に火魔法出して、ひるませる。でも猪も、急には止まれん。


 結果……スドーン !!


「ぐおぉ~ッ !! 」

「プゴォォッ !? 」


 真っ正面から、盾に突っ込んできた。

 轟音ごうおんとともに、10mぐらい 後ろに俺は吹っ飛ばされた。


いったあ~……」


 けたり、宙に浮いたりはせずに済んだけど。盾をちょっとだけ上に向けたおかげかな?


 あと、木に当たったりもしてない。けどHP2割減。【ガード】使ってこれか、流石だな。

 パワー !!


 受け流したほうがいいけど、できるかな?

 ……いや、やれ !!


 即、盾を構え直して、猪を見る。


「フーッ、フーッ……!」


 あんな音が鳴って、俺でもこれだ。盾も何もない猪が、無事なわけがない。

 けど、HPは残り6割強。しぶとい。


 そして、向こうも俺を警戒してか、様子見している。

 え~と、木はそこか。なら……


「おら来いや! 【受け流、っと !! 」


 ズガーンッ !! ワシャワシャワシャ……


 ……すごい音だ。

 ぶつかる直前に、左に避けて受け流した。それでもちょっと、引きられたけど。


 ここで一句。



  気をつけろ、猪も急には 止まれない

                 ジンジュ



 で、そのまま木にぶつかった、と。

 ……あ、猪倒れた。気絶か。ほな回復……梅干し味キツい !!


 よし、魔法つけて殴る!


「【火の魔球】、【叩きつけ】、だぁ~ッ !! 」


 これでもまだ4割弱か~。マジでしぶとい。

 ……しゃ~ない、盾立てといて。

 持ち替えた〈初めての棍棒〉で、頭10回どつく !!


「【火の魔球】、【叩きつけ】、おりゃ~ッ!」


 ………

 ……

 …



 ◇


「……【着火】、10! ……だは~っ」


 あ゛~しんど !! 息切れる……


 10回殴って、HPは……まだ2割強。

 3回に1回ぐらい復活してたけど、また気絶してる。じゃあもう短刀使おうか……。


心臓ハツを捧げよ! ……どわ~ッち !!


 猪の胸元に短刀を刺したら、あかね色のサイコロの集まりポリゴンがブシュッ、て飛んできた。生ぬるいのが、べちゃ~っ……と。

 んで、猪の全身がポリゴンのかたまりに変わって、さらさら~、って消えていく。


《「ブラウンボア(♀)」1頭を討伐しました。以下の条件が満たされています》

《Lv.5になりました》

《〈鈍器〉〈挑戦者チャレンジャー〉両スキルのレベルが上がりました》

《称号〈果敢な挑戦者〉が〈大物を喰らいし者ジャイアント・キラー〉に更新されました》

《以下のアイテムを入手しました。

 ・「ブラウンボアの肉(中)」×4

 ・「ブラウンボアの毛皮(中)」

 ・「ブラウンボアの魔石(微小)」》

《〈挑戦者〉が〈大物喰らいジャイアント・キリング〉に変更されました》

《〈大物喰らい〉が〈下剋上〉に変更されました》


 また通知祭りか~。

 で、力が抜ける~ !! これがデバフ?


 いやいや、まずは手ぇ合わせて。なむなむ……


「はい【洗浄クリーン】、お疲れー」


 いつの間にか、ボーゼとえすとが寄ってきとった。


「あざ~っす!」

「どーも。 ……焼き鳥?」

「立体機動でもするんかお前?」


 色々ありすぎて、何にツッコまれたんか分からん……



 ほな、諸々見とこか~。


―――――

ブラウンボアの肉(中)

(分類)食材/素材

 イノシシの肉。食あたりの恐れや、特有の臭みがあるため、処理と加熱が要る。

―――――


 まずは猪肉。肉自体の説明は「でしょうね」って感じ。その先が知りたい、調理法とか。

 ま~、レベル低いから仕方ない。

 それより、ここの森の名前が出てるけど。いいのかな?


 じゃあ次、新しい称号とスキルを……


―――――

大物を喰らいし者ジャイアント・キラー

 レベル差が「10以上かつ倍以上」の格上相手に、単独で勝利した。

 その際、戦闘開始から終了まで、味方の援護を一切受けないこと。

  ※統率系スキルによる付与効果を除く

 人類NPC、および同族NPCからの信頼度が少し上がる。

―――――

〈下剋上 Lv.2/50〉

 【大物喰らいジャイアント・キリング

 格上の相手と戦う際、レベル差に応じてステータス値を増幅する。

 この効果は状況に応じて、その都度強化される。また、戦闘終了まで継続する。

 なお、効果が切れると、反動でステータス値が下がる。その間は再使用もできないため、安全確保にも気を配ろう。

―――――


 よ~分からんけど、なんか強そうやね……。ありがたい。

 無茶苦茶なこと言うたのに、止めてくれんかったわけやわ。


「お、やっぱええの出とるな」


 後ろからボーゼが一言。他人事かお前……


「……やっぱはかったな~ ?? 」

「チッ、バレたか……」

「「そらバレるわ~」」



 閑話休題。



 ◇


「さ~て、片付けて帰るまでが、ホンマの狩りですよ~」

「遠足か」

「何でお前が先生側やねーん!」


 ツッコミありがとう。


「あと正確には、“冒険者組合シーカーズ・ユニオンで報告するまで”やからな?」

「へい、気ぃつけま~す」



 じゃ、撤収てっしゅう~ !!


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