彼女率0%

 ゆっくりしたあと、俺は帰る準備を始めた。

 明日は一限目から講義があるので、早く寝ないといけない。時計を見ると10時20分。

 帰って風呂に入って、歯磨いて...そうしているうちに11時になってしまうな。


「じゃあ、また今度遊ぼうな」


「あ、その...良かったら泊まっていか...」


プルルルル...


 玄関を開けた俺を引き留める天音に一通の電話がかかった。

 画面には「お母さん」と書いてある。


「ここで待ってるから。電話出な?」


「う、うん」


 なぜか彼女は冷や汗を書いていた。

 俺も、なぜか体中から汗が滲み出ている。

 ドクンドクンと規則的になる心臓の鼓動が段々早くなっているのがわかる。


...ピッ...


「お母さん、こんな夜遅くにどうしたの?」


『どうしたもなんも、あんた今日、誕生日じゃない』


 空気が凍り付いた。今日の日付は、9月23日。

 俺がこの前スマホの暗唱番号を調べるために、みんなに誕生日や記念日を聞いたことがある。

 天音はその時、11月5日と言った。俺のスマホの暗証番号と同じ。

 つまり彼女は、俺のスマホの暗証番号を知ってて嘘をついた。じゃあなんで知ってる?

 考えられるのは...


1.かなり親しい女友達

2.母が間違えている

3.彼女は、こっそり俺の暗証番号を盗んだ


「ちょっと待って蓮君。これは、蓮君の暗証番号に合わせて嘘をついたわけじゃないの!佐藤さんとの会話は関係ない!お母さんが間違えてるの!」


 天音が必死に訴えるが、母はさらに天音の墓穴を掘る。


『あら、誰か一緒にいるの?良かったわね。去年の誕生日は一人で寂しく過ごしたって言っていたし。あたしは邪魔かな?じゃあ、またね』


ブツ...


 答えは..3...

 俺は彼女にスマホのパスワードの話はしていないし、佐藤のことも話していない。

 俺の考えが間違っていることを願うが十中八九、あっているだろう。

 彼女は俺の...



「...ストーカー...」



 つい口からこぼれ出てしまった。

 それを聞いた彼女は、するどい眼光で俺を睨みつけた。

「逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ」

 俺の本能が走るように訴えかけるが、驚きで声が出ないし、足も動かない。

 彼女はゆっくりと家の中に戻っていった。

 あっちには確か...キッチン!

 包丁か!?

 どうしよう、正面から迎え撃つか!?いや、もう一回本気で戦えば俺は一生ベッドの上で生活する。

 もう逃げる以外の選択肢はない!足だけならダメになっても車いすだけで済む!


ダッダッダッダッダッダッ


 全力で走る俺の足音が、夜道に響く。

 後ろを見ると、天音の手元で何かがキラッと光った。

 電車は...あと3分後!待ってられない!

 となれば、カツアゲされるのを覚悟で、複雑な構造をしている路地裏に逃げ込むしかない。

 俺は、たばこを吸っている学生や、ヤ〇ザっぽい人がうろうろしている路地裏に入っていった。


「ねえ、大丈夫?」


 走っている最中、横から声をかけたのは聞き覚えなる人だった。

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