第4話 会社で遊びてえ
例えば
全体メールで「〇〇各位」と最初に付けるところを
「〇〇角煮」と送ったら。
それを見た人は「……んふっ」と笑ってくれるだろうか。
急いで作ってる時とかあり得るから、たとえわざとだとしても見逃して欲しい。
そういえば、新人のころメールを送ったら。
部長には様ではなく、部長様と付けろと言われた。
調べたら、部長は敬称も含めているので様は要らないらしい。
最近UFOが近所に出た。
出た当初は驚いたが、特に動きがなくなり既に一ヵ月経った。
いまや日常の一部と化している。
時々、それを眺めて過ごしている。
UFOであることは間違いない。
今も内外の政府が接触を試みようと何かしら試しているようだが、今のところ反応はないようだ。
目的は分からない。
いつまでいるつもりだろうか。
話をメールに戻そう。
仕事でのやり取りは基本的にメールでやるべきだ。
なぜなら証拠が残るからだ。
相手とどういった会話をしたとか、どこまで進めたとか。
あと、「これどうなってますか」と相手に投げかければその間仕事の責任は相手に丸投げできる。
絶好の機会なのでぜひ逃さない様にしよう。
「おい、UFOが動いたってよ」
離れた所の会話が聞こえてきた。
ちょうど考えていたことなので耳にすんなりと入ってきた。
そうか、動いたのか。
どこに向かうのだろう。
また宇宙に飛び立つのだろうか。
俺も連れて行ってくれないかな。
もう地上の暮らしには飽き飽きだ。
途中で落としてくれたってかまわない。
それはそれで好都合だ。
男と女の関係性に半歩踏み込んで、自分の惨めさが際立った。
自分の中にある気色悪い思考回路が浮き彫りになった。
自分が理想とする関係性と、現実の自分の行動はあまりにも大きくかけ離れている。
俺は一生、深い意味で異性と関係性を持つことは無いだろう。
「え、あれ、UFOじゃね?」
「まじかよ、なんでこっちに来てんだ」
窓の外には確かに巨大戦艦の影が迫っているのが見える。
もしかして願いが叶ったのだろうか。
さっき思いつきで考えただけだが。
しかし、あれだけ巨大なものが動いているのに、とても静かだ。
動力もそうだが、あれだけ大きければそれだけで空気が震えるはずなのに。
やめようかな、会社。
やめたら、何しようかな。
崖に行くか、ロープを使うか迷うな。
いっそのこと、あのUFOが全部終わらしてくれればいいのに。
「あ、開いた」
誰かが言った。
UFOの底部が確かに開き始めている。
何が起こるんだろうか。
何を起こしてくれるんだろうか。
よし、決めた。
こんど角煮って書こう。
休日のひと ヨートロー @naoki0119
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