第2話 消失
授業で虚実存在を扱ってから一週間ほどたったころ、足立が目に隈を作りながら、やっと人工言語を覚えたと伝えに来た。
俺は彼を本当に馬鹿だなあなんて思いながらも、考えられる最大の賛辞を送ってやった。
「それじゃ今日の配信で、やるけど…お前はどうする?」
「配信は部室でやんの?」
「うん」
「あー、じゃ。 横で見てるよ。 気絶したら面倒だから」
「おー、お前ならそう言ってくれると思ってたぞぉ。 ありがと」
そんな風に俺は足立が検証をする様子を横から眺めることになった。
その日の放課後、部室にて足立が配信している様子を俺はぼんやり眺めていた。
配信を始めてしばらく経った頃、足立はやっと本題に触れ始めた。
「…それで、人工言語を作って。 覚えてきたってわけよ」
そう言いながら足立はポケットから折りたたまれた紙を取り出す。
「で、ここにこの言語で虚実体の特徴を書いた紙があります。 あぁ、印刷は
足立はそう言うと、「これね」と言って画面のほうに紙を開いて見せた。
紙には相変わらず意味の分からない記号が書かれている。
「そんじゃ、じらしても仕方ないから…よし、いくよ」
足立が紙を裏返す。
紙に書かれた文字を認識した足立が一瞬固まる。
そうして、口を押えてつらそうな表情を見せる。
しかし、それもすぐにやめて、彼は「あれ?」ととぼけたような声を出した。
「大丈夫か?」
俺がそう問いかけると、足立は驚いたように俺のほうを見た。
そして目を見開き、口を大きく開けた。
何かを叫んでいる。
足立が座っていた椅子から立ち上がり、こちらに近づこうとする。
■■が手を伸ばす。
■■が■かを■■■うとしている。
■■■■た。
……。
「は?」
気が付けば俺はそう口から漏らしていた。
足立のいた場所には何もなく。
そこには意味の分からない記号の書かれた紙がただ落ちていた。
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