3節「突然デレ始める美少女たち」

 ミカの「本気の告白」――その言葉が頭に残ったまま、屋上から降りた俺は、しばらく教室に戻る気にもなれず、校舎の裏で風に当たっていた。


(本気……って、どういうことだ?アプリのせいじゃないって、そんなの……)


 心臓の鼓動がうるさいくらいに響く。

 ミカが嘘をついているようには見えなかった。でも、それを信じてしまえば、俺の人生がとんでもない方向へ進みそうで怖かった。

 ポケットの中のスマホが、かすかに震える。


《攻略対象の一部が接近中です》


「……は?」


 表示された通知に思わず声が漏れた。

 そして次の瞬間――


 「風間くん!」


 その声は、背後から。

 振り返ると、そこにいたのは――風紀委員の天城ルナ。

 黒髪ロング、完璧な立ち居振る舞い、そして近寄りがたいほどの真面目キャラとして有名な彼女が、何故か頬を赤らめながら俺に駆け寄ってきた。


「き、昨日落としたハンカチ……返そうと思って、ずっと探してたの」

「え、ハンカチ……?」


 思わずポケットを見る。昨日拾った覚えなんて、まるでない。


「それに……その、できれば一緒に……帰りたいな、なんて」


 ルナがそんなことを言うなんて、昨日までなら100%あり得なかった。


(こ、これが……アプリの影響……!?)


 まるで恋愛ゲームのイベントのような展開に、背筋がゾクッとした。


「わ、私……風間くんのこと、前からちょっと気になってて……!」

「ちょっ、待って待って待って!ルナさん!?落ち着いて!?」


 さらに追い討ちをかけるように――


「ユウト~~~!ルナより先に帰る約束、私とでしょ~?」


 背後から抱きついてきたのは、同じクラスのギャル系美少女・夏川ユリナだった。胸元からふわっと香る甘い匂い。制服のボタンは相変わらずゆるめで、距離感もバグってる。


「ねえ、ユウト~、今日どこ行こっか?カラオケ?それとも、……うち来る?」

「は!?ちょ、な、なんで!?なんでそんなに……!?」


 女子に囲まれ、見上げられ、迫られ、戸惑う俺。

 でも、アプリは静かに、淡々と通知を送ってくる。


 《感情好感度:上昇中》

 《現在の攻略対象数:3/5》


(やばい……!このままだと、俺――本当に、ハーレムにされる……!)

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