2節「謎のアプリ「Luv∞Save」インストール」
放課後のチャイムが鳴るころ、俺の頭の中はまだ混乱していた。
一ノ瀬ミカ。学年一の美少女。そんな彼女に「屋上で話したい」なんて言われて、平常心でいられる男がいたら、それはきっと心がバグってる。
昼休みも授業中も、俺の頭はそればかりだった。何かのドッキリ?それとも罰ゲーム?……いや、彼女の表情は本気に見えた。
そして――
「……来てくれて、うれしい」
約束の屋上には、制服のスカートを風に揺らすミカの姿があった。
「う、うん。こっちこそ、呼んでくれてありがとう」
「ね、これ……見てほしいんだ」
彼女がそっと差し出してきたのは、自分のスマートフォン。
画面には、どこかレトロで奇妙なUIのアプリが表示されていた。
《Luv∞Save》――あなたの恋、管理します。
「……恋を、管理?」
「風間くん、今朝から……何か、変わったこと、あったでしょ?」
彼女のその問いかけに、ドキリとする。たしかに、今朝からおかしい。
廊下ですれ違っただけの彼女が、突然俺に好意を向けてきた。しかも、まったく違和感なく。
「このアプリね……昨日の夜、何気なく落としてみたの。そしたら、今日から急に男の子たちの態度が変わって……」
「え、それって、俺も……?」
「うん。風間くんも、多分……アプリに選ばれた“対象”なんだと思う」
ミカの目が、まっすぐ俺を見つめてくる。その瞳の奥に、不安と少しの期待が入り混じっていた。
「風間くんのスマホにも……もしかしたら、来てるかも」
そう言われて、俺は急いでスマホを取り出した。
そして――そこに確かに、見覚えのないアイコンが表示されていた。
《Luv∞Save》
タップする指が、わずかに震える。
画面が開かれると、ポップな音と共にメッセージが表示された。
《新規プレイヤー認証完了。恋愛シミュレーション:開始します。》
《現在の攻略対象:5人》
《クリア条件:真実の恋を選び、他を拒絶すること》
「な、なんだこれ……ゲーム、なのか?」
「でもね――風間くん。これはただのゲームじゃないの。だって、私は……」
ミカが言葉を詰まらせた瞬間、彼女の目が潤んだ。
「私は……風間くんに、本気で恋してるの。アプリのせいじゃなくて、本当に……」
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