恋のセーブデータは残せない―学園ハーレムは突然に、でも君だけは本気で好きだった―

蒼夜

第1章「普通の僕に、恋がバグった日」

1節「朝の遅刻、ヒロインその1とぶつかる」

 ――遅刻だ。

 いつもどおり目覚ましは5回鳴ったけど、いつもどおり5回とも止めて、いつもどおり二度寝して、そしていつもどおり――いや、今日は本当にヤバいやつだった。

 俺の名前は風間ユウト。ごく普通の高校2年生。運動もできない、勉強もそこそこ、顔もまあ平凡の範囲。

 そんな俺が、なぜか今日に限って全力ダッシュで校門に向かっている。


 「マジでヤバいマジでヤバい……!先生、今日は門の前に立ってないでくれ……っ」


 そんな俺の願いが届いたのか、校門の前には教師の姿はなかった。が、代わりに――


 「きゃっ!」


 角を曲がった先で、誰かと真正面から激突した。手から落ちたトーストが地面に跳ねる。

 反射的に相手を受け止めるようにして、俺はその子の肩を抱いたまま、ふらつく。


 「い、痛たた……」


 目の前にいたのは、光を受けてキラキラと輝くような栗色の髪の女子生徒。制服のスカートが風にひらりと舞う。

 俺の胸に倒れこんだ彼女の顔は、どこか見覚えがあるようで――


 「あっ……風間くん?」


 その瞬間、俺の時間が止まった。


 彼女の名前は一ノ瀬ミカ。クラスは違うけど、誰もが知っている**“学年トップの美少女”**。

 俺のような平凡な男子が、たまに廊下ですれ違うだけで緊張するような存在だった。


 「ご、ごめん!大丈夫!?怪我は……!」


 慌てて体を離すと、ミカは頬を赤らめて小さく笑った。


 「ううん、大丈夫。むしろ、ぶつかってくれてありがとう……なんて、変かな?」


 その言葉の意味が分からずに固まっていると、彼女は俺の制服の袖をそっと掴んできた。


 「ねぇ、風間くん。もし良かったら、今日の放課後、屋上でちょっと話せないかな?」


 ……え? 今、なんて?

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