第16話 時をかける少女たち




 縄文文化は約1万6000年前から約3000年前まで続いた、現在の北海道から沖縄本島にかけて定住していた旧石器人(縄文時代の前は旧石器時代)が生み出した文化であり、その特徴としては、弓矢や土器の使用、磨製石器の発達などが挙げられる。アイヌ民族は、この縄文人の直接的な子孫であると考えられている。


 19世紀頃(西暦1801年から西暦1900年)までのアイヌ民族は、北海道、樺太、千島、東北北部などに住んでいた。アイヌ民族の歴史のはじまりは、北海道に人類がやってきた3万年前頃にまで遡ることができる。7世紀頃から狩猟採集や漁労に雑穀農耕が加わり、海を越える交易を盛んにおこなう特色ある文化が形成されていった。

 

 そして…19世紀後半、南から和人、北からロシア人がやって来ると、アイヌの住む土地に日本とロシアの国境ができた。この様な関係から色々な民族の血が混合されていった。


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 1669年(寛文9年)「シャクシャインの戦い」が勃発した。その理由は17世紀から次々と和人がアイヌ民族の暮らしの中に侵入し、不公平な交易を行い、 アイヌ民族が徐々に和人への不満を募らせるなかで、アイヌの人々を率いて立ち上がったのがシャクシャイン。 だが、最後は和人の企てに引っ掛かり悲劇的な死を遂げたが、松前藩は「シャクシャインの戦い」で勝利をおさめアイヌに対し絶対的な主導権を握って行った。


 だが、それだけでは終わらなかった。今度はでアイヌの未婚既婚にかかわらず若い女を強姦して虐殺した。ここまでされて、おいそれとは引き下がれない。


 恨みを晴らすために目論むものが現れた。そうなのだ。1人の少女が立ち上がった。シャクシャインの娘ノンノが立ち上がった。


「絶対に許せない!💢💢💢」


 そこで…ノンノは名前をユキと偽って和人となって、松前藩の筆頭家老秀則の前に占い師として現れた。


 出会いはある夕方の事だ。


 筆頭家老秀則は夕方になると家来を従えて、城下を馬にまたがり視察するのが日課だった。それは他でもない町民の生活環境や争いなどを未然に防ぐための視察だった。

 そんなある日の事だ。城下の団子屋で休んでいると、今まで一度たりとも見たことのない美しい少女?若い女?が話しかけてきた。ごく普通の町娘の恰好で秀則の前に現れて言った。


「お武家様……あなたの顔には戦いの相が出ております。それも近日中に妖しい雲行きが見て取れます」


 それは「シャクシャインの戦い」が始まる数日前の事だ。ノンノは筆頭家老であることをよく知って近づいたのだ。父が散々こぼしている姿を見て黙って見ていられなくなったノンノは立ち上がった。


 その時はそれで別れたが、本当に数日後に「シャクシャインの戦い」が始まり1669年(寛文9年)、アイヌ合同軍は、松前藩に対して武力攻撃を開始。


 だが、最終的には松前藩はシャクシャイン以下大勢のアイヌを謀殺した。


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 以前はこの蝦夷はアイヌ民族にとっては有意義な広域が続いていたのだが、事件は起きてしまった。

 ノンノは松前藩の実質的な指揮者で、「シャクシャインの戦い」の指揮をしたのが秀則だという事をよくよく知っていた。許せない気持ちで一杯だが、アイヌ人たちの思いを引き継ぎ報復の為には、こんな20歳以上も年の離れた男と、例えどんな関係になろうと致し方無いと考え近づいた。何が有ろうと嫌だからやりたくないなどと、甘っちょろい事を言っている場合ではない。


 そこで…どうしたら松前藩を追い込められるか考えたノンノは色々分析した。

(この秀則と言う男は慎重な男で計算高い。下手な事ではボロは出さない。この男を弱体化させるにはどうしたらよいか?実質上の藩主高晴からも全幅の信頼を得ていて、この優秀な男が首にさせられることはまずなさそうだ。困ったものだ!)


 美しい占い師がいると聞いて早速ノンノの元を訪れた高晴様だったが、余りの美しさに夢中になり、強引に高晴の側室にされてしまったノンノだったが、その後恒例の参勤交代があり江戸に出向いていた。


 だが、夢中になった高晴様から頻繫に文(ふみ)がノンノ宛に届いていて、あの事件の日到着するのも分かっていた。そこで賭けに出たノンノ。


 この有能な秀則を死に追いやることが出来たら、松前藩は失墜する事が分かっていたノンノは、自分の命よりも母や兄弟たち、 ひいてはアイヌ民族を救う事が一番大切だと考えていた。それが例え自分の命を失う事になろうと……。


 そう思い、きっとあの夜高晴様は待ちきれずにノンノに会いにやって来ることを知っていて、あえて秀則との交わりにふけっていたのだ。


(きっとこの場面を見たら嫉妬に狂った高晴様は、私だけでなく秀則様も殺すであろう……)

 こうして…秀則は高晴様の嫉妬により殺害されてしまった。だから……追い詰められたノンノは自分の命もいとわずあのような暴挙に出たのだった。


 高晴様から異常とも取れる熱い文を頂戴していたノンノは、毎日毎日江戸城での仕事もあるというのに、このような長文が書けるという事は、高晴様の急所( 物事の最も大切なところ)はこのノンノほか有り得ないと感じた。


 そこで…高晴様のもっともショックなダメージを与えられることは、何かと考えたところ、愛するノンノと男との情交であると感じたノンノは、2人同時に大ダメージを負わせるには、死んでほしい2人を最も苦しめる方法を思いついた。


 こうして実行に移した。


「貴様許せぬ!💢💢💢」


「おお お許しを」

 ”スパ”

 嫉妬に狂った高晴様は無防備な状態の秀則の首をはねた。



 それではこの複雑怪奇な一連の事件には何か繋がりがあるのか?


 延々とアイヌの少女が時をかけているが、そこにはどのような秘密が隠されているのだろうか?


アイヌ民族首長の娘ノンノと同じく、アイヌの血を引く首長の孫娘ナミは200年の時を超えてどのような繋がりがあるのだろうか?


 アイヌが日本人によって解体されるまではアイヌ集団は至る所にあり、シュムクルとメナシクルのほかにも、北海道にはさまざまなアイヌ集団が存在していた。例えば、石狩アイヌ(イシカルンクル)は石狩川流域を中心に居住し、鮭漁を生業としていた集団。また、内浦アイヌ(ホレバシウンクル・ウシケシュンクル)などの集団も存在した。


 アイヌの各集団は、交易や交流を通じて他の集団のことをある程度知っていた。例えば、北海道のアイヌは樺太や千島列島のアイヌと交易を行い、物資の交換をしていたともいうし、また、本州の和人とも交易をしていたため、和人の文化や言葉についてもある程度知っていた。


 同じ時代に生きていないアイヌの少女たちノンノとナミ、徐々に見えてきた真実。そこにはどのような真実が隠されているのだろうか?


 そして…ただ1つ分からない事は、海斗が竹下通りで会った少女が誰かという事だ。















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