第3話 千秋という少女
「木村話がある。お前大野明美と付き合っているだろう?」
「おう克彦じゃないか?何だよ藪から棒に……💢💢💢第一俺は受験でそれどころじゃないんだ。東京の大学狙っているんだ」
「それは知っているが、お前たち付き合っているんだろう?」
「いや……それが……それには深い訳があって。実は…俺は……俺は……本当は千秋と付き合っていたんだ。それも……千秋が告白してきて……あの時は『夢見ているのでは😍💞💝』と何べんも自分の頬をつねってみたくらい嬉しかったよ。だが、そんな幸せな時間はある日突如終止符を打つ羽目になったんだ。千秋が一方的に俺から離れたんだ。電話しても出てくれないし、手紙を書いても返事をくれないし、だから……俺は堪り兼ねて千秋に聞いたんだ。『どうして手紙を書いても返事をくれないんだ』ってね。すると……こんな返事が返って来たんだ。『私……男の子から執拗に私に興味を持たれると一気に冷めちゃうの。バ~イ!もう会いたくないの』もうそれっきりさ」
「エエエエエェェエエエエエエッ!でも……でも……千秋が『木村君と明美ちゃん付き合っている』っていっていたのだけど?」
「そうなんだ!俺がショックで打ちひしがれていたら、明美が親身になってくれて、それで……付き合いだしたのさ」
「…あっそうだったんだ😥💦」
(千秋はどういう子なんだ。余りにも愛されると冷めて、それでも他の女の子と付き合いだしたら、また自分の方に振り向かせたいって事?全く人の心を弄びやがって💢💢💢)
克彦は千秋は高慢で自分勝手だという事はよく分かっていたが、これではあんまりではないか。何とか千秋と距離を置きたい克彦だった。
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明治維新で目指した「近代国家」とは、中央集権( 国の政治権力が全て国の中央政府に集中)による統治が行われ、国民の権利と義務が明確にされる国家を目指した。明治政府は「富国強兵」(西洋に習い 国を豊かにして、強い軍隊をつくる政策)を掲げ、憲法の制定、国民教育の充実、工業の発展この3つを推進した。
1869年の版籍奉還(各地の大名から土地と人民を朝廷(現在の日本政府)に返させるという政策で、中央集権をすすめようとした。土地を取り上げられた旧大名は、地方の長官である 知藩事(明治時代初期に置かれた地方行政官)に任命された。
また、廃藩置県(明治4年(1871)明治政府が中央集権化を図るため、全国261の藩を廃して府県を置いたこと。全国3府302県がまず置かれ、同年末までに3府72県となった)による中央集権化、身分制の廃止、地租改正(江戸時代においては、お金ではなく お米 が税として納められていた。その量は収穫高に応じていたため、天候などに大きく左右され、幕府の収入は安定しなかった。 そこで新政府は、土地の値段( 地価 )と土地の所有者を定めて、地価の3%を税として 現金 で納めさせた)などを行い、近代的な国家体制を確立した。これにより、日本は西洋諸国に対抗できる国力を持つことを目指した。
1871年の廃藩置県は中央主権を確立するための政策だったが、廃藩置県では知藩事は全員その職を失って華族となり、各県には知事にあたる県令(今日の都道府県知事の前身にあたる)が中央から派遣された。
華族とは、明治初頭から戦前の昭和の世にかけて存在した日本の特権的身分階級(いわゆる貴族)である。明治2年に実施された「版籍奉還」に伴い創設された。
華族という身分は、明治維新前の幕藩体制における公卿(大臣や納言など)ならびに諸侯(大名など)を代替する身分として設けられた。
一般民衆よりも天皇家に近い存在であった華族は、いわば天皇家の守護者としての役割を期待された。特に明治初期は、江戸幕府崩壊後の混乱の中で新たな社会秩序を模索していた時代。
華族の上には「皇族」、華族の下には「士族」すなわち武家に替わる身分が置かれた。
華族制度は明治17年に「華族令」によって整備された。華族令のもとで公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の爵位が設けられた。
華族には特権が与えられた。
★華族の財産は保護され、「ほかの誰からも差し押さえられない(奪われない)」という特権があり、その財産は、親から子へと引き継がれていった。
★明治以降、日本でも議会が開かれ、国民の代表者が選挙で選ばれるようになった。しかし華族と言うだけで、選挙をしなくても政治家になれた。選挙無し議員で構成されていた議会は「貴族院」。一方の選挙で選ばれた人たちの議会は「衆議院」。
★華族は試験を受けなくても無条件で華族の教育のための「華族学校(現在の学習院)」に入学できた。
だがそんな時代はあっけなく幕を閉じる。
1947年(敗戦直後)に「日本国憲法」の施行に伴い、華族制度は廃止された。
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華族制度が廃止されて10年以上も経つというのに、姑の嫁いびりは続いていた。
千秋は幼い頃から母が執拗に罵られている姿を嫌と言うほど目撃して育った。
一見誰もがうらやむ雲の上の存在の女子に見えるの千秋だが、母静子が罵られている姿は見るに忍びない。
何故そこまで母静子を追い詰めなくてはいけないのか?
実は祖父宗信は華族の中でも最も位の高い公爵様で政治家だった。昔は華族様は華族と言うだけで選挙で当選しなくても無条件で議員になれた。それを「貴族院」と言う。
千秋が3歳の頃まだ祖父宗信60歳は、たとえ華族制度が廃止されたと言えど、今までの功績が認められ政治家として君臨している。それも農林大臣としてだ。結局妻節子が豪農のお嬢様と言う事もあり適任であった。
この様な理由から嫁がどうにも受け入れ難いのだ。
正に封建的(上下関係を重視し、個人の自由や権利を認めない)時代に生きた姑節子にとっては、嫁の存在は正しく青天の霹靂。周りはお嬢様たちばかりの中で育った姑節子にとって、字も読めない、言葉も話せない民族を、気位の高い、ましてや公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の五爵制5爵の最高峰の公爵様が、おめおめとアイヌ民族を受け入れることなど出来る筈がない。
お金も華族様は保障されていてお嫁入り道具の1つとして乳母付で嫁入りしてきた時代に、アイヌ民族を受け入れる土壌がどこに有ろうか?
「あなた……剛のお父上様が公爵様で政治家だというのに、あなたときたら一体どんな育ち方をしておいでになったのかしら?アイヌ民族は訳の分からない儀式(熊送り)たる野蛮な祭りをする人種らしいけど……日本語も話せないって言うじゃないの。どんな育ち方をして来たのかしらね。全くあなたのような野蛮な血筋がこの高名な我が家の一族に混じったら大変なことになりそうだわ。何故剛の申し出をお受けになったのかしらね?自分の身の程をご存じなかったのかしらね。ビックリするわ。どうせ剛を色仕掛けで騙したのでしょうけど……💢💢💢」
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