第2話 結木千秋
トゥルルル トゥルルルル トゥルルルル トゥルルルル ・・・・・
♬UFO ♪
タラララララ タラララララ タラララララ タラララララ
♫手を合わせて見つめるだけで
愛しあえる話も出来る🎶
街中ピンクレディー一色の1977年の12月の事だ。
ピンク・レディーがヒットした要因は有名振付師が手がけた「ペッパー警部」の大股開きの振り付けにインパクトがあり、日本中から注目されたのがきっかけだったらしいが、あの当時は正しくピンクレディーは社会現象化した超人気スターだった。
1977年に入ると、その人気はさらに加速し、文房具や食器・自転車など関連グッズが飛ぶように売れた。当時の子供たち(女子)は、みんな学校の休み時間に歌と振付を真似て教室で練習して踊っていた。日本中の小中高女子たちが振付をマスターしていた。
そして…当時の高校生は、女の子はピンク・レディー、男子はフォークソング。(神田川、我が良き友よ、学生街の喫茶店、精霊流し、さよなら、等々名曲ぞろい)男女ともにほんの少しの洋楽ファン。というのが居た時代。
全女子が休み時間にラジカセでピンク・レディーをかけて踊り狂っていた時代。
そうなのだ。ここにもそんな高校生がいる。この界隈では偏差値最高峰に当たる半○高校に通学する現在高校2年生の結木千秋は、誰もが恐れる2学年女子のボス。
「みんな行くわよー。最初はペッパー警部ね!」
休み時間になるとクラスの女子皆でラジカセでピンク・レディーをかけて踊り狂うのが日課になっていた。
「次は♬UFO ♪」とまあこのような時代だった。
◀◁◀◁◀◁◀◁
高校2年生の結木千秋の父50歳は愛知県知○市の市長で、母静子45歳は中学の教員だ。
一方の高木克彦の父は現在48歳で知○市役所の課長で、母43歳はたまにパートに出るくらいの専業主婦だ。
この様な環境から2人の間には口に出さずとも知らぬ間に、克彦が一歩下がる暗黙の了解があった。それは当然だ。片や父が市長で片や市役所課長では大きな開きがあるので当然のことだ。
この2人は小中学は校区が違うので接触したことは1度もなかったが、高校が一緒で市長のお嬢様ということで否応なしに手下となり、イヤな用事を言いつけられることもある。例えば気にくわない子をやっつけるとか……
そんな千秋のプライドを粉々に打ち砕く事件が起きる。千秋は今期成績が落ちて特進クラスから一般クラスにクラス替えさせられてしまった。
一方のライバル大野明美は成績優秀にしてスポーツ万能、おまけに可愛い。
千秋は父が市長で母が教員。それなのに一般クラスにクラス替えさせられ家族に合わす顔がない。イライラむしゃくしゃしてイライラが収まらない。
「ねえ!あの明美を懲らしめて欲しいのよ。例えば……崖から突き落とすとか……」
「そんなこと……そんなこと……出来ません😥💦」
「あなた💢💢💢克彦よくもそんなことが言えたものね!良いのそれで?私パパに言ってあなたのパパを降格させることだって出来るのよ!」
「待って……待って……そんなことして怪我したら大変だから……例えばもっと違う事だったらするけど……😥💦」
「じゃー明美と彼氏を引き裂いてよ!確かミスターパーフェクトと呼ばれている文武両道にしてイケメンの木村君と付き合っているでしょう。私許せないのよね。全て揃っている子見ると我慢できないのよ」
「千秋ちゃんだって十分揃っていて幸せに見えるけど……」
「克彦は何も分かっちゃいないのよ」
それではこの千秋はどのような家庭環境で育ってきたお嬢様なのだろうか?
一見誰もがうらやむ雲の上の存在の女子に見えるのだが……。
千秋は誰から見てもスタイル抜群の超美人。更には父が市長を何期にもわたって務め、母は中学の教員と誰の目にもハイスペック家族と映っている。だから傍からすれば近づきがたい存在の家族だ。それなのに何故この様な恐ろしい事を克彦に要求するのか合点がいかない。
それでは千秋の家庭の事情を少しづつ紐解いて行こう。
千秋は誰の目にも超が付く美人だ。それなのに「私許せないのよね。全て揃っている子見ると我慢できないのよ」それはそっくり誰もが千秋に返したい言葉である。それなのに何故このような言葉を吐くのか?
そこには結城家の家庭事情があった。実は…母は北海道千島列島出身のアイヌ人だった。アイヌ人は濃い顔が多いが、もっと言えば美男美女も少なからずいるという事になる。
だから……たとえアイヌ人だったとしても、美しい母静子に夢中になり親の反対を押し切って結婚した父だったが、祖母は豪農の地主様のお嬢様で華族出身の伯爵様で生粋のお嬢様。
※明治17年7月7日に公布された華族令により公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の五爵制5爵に区分された。
祖母と母静子は水と油、月と鼈、階級が違い過ぎて交わる接点など到底見つからない。決してアイヌ人差別をしている訳ではない。時代背景がそうさせたのだ。
「お前のような卑しい人間など、この家の敷居をまたぐなどもっての外。汚らわしい!💢💢💢」
この様な生活環境の中母静子は姑に「罵詈雑言」を言われたくないばかりに、娘千秋にそれこそ虐待とも取れる厳しいしつけを繰り返した。
千秋は相当なストレスをかかえていた。それを学校で発散させていたのだ。
立派な豪邸に住む千秋は一見何の不満もないお嬢様に映っていたが、祖母節子が気位が高く、嫁静子の血筋家柄を何かにつけて毛嫌いして嫌味を言っていた。
母静子は北海道千島出身のアイヌ人。それは普通の日本人とは到底接点の見つからない生活環境で生活して来た民族であり、字も読めない民族で日本語とは違う言語を話す民族だった。
気位の高い華族出身の伯爵様には到底受け入れがたい民族と言う事になる。
この様な理由から母静子は姑にことごとく嫌味を言われ、仕舞いには娘千秋にまでその矛先が向くのを恐れて敢えて厳しくしていたのだ。
それでも…どうしてアイヌ人が教員になれたのかと言う事だが
1945年、昭和20年8月15日正午終戦。だが、終戦後にソ連が参戦し、樺太や千島列島を攻撃し、北海道を分割支配しようとした。だが、アメリカが拒否した為ソ連は北方領土の占領、数十万人の日本兵をシベリアに抑留した。その過程でソ連軍による日本の捕虜や民間人に対する苛烈な強姦や虐殺が行われ、現在でも日露両国間で禍根を残している。
その時母静子は僅か10歳だったが、母と千島から日本軍の手で北海道へ逃れることが出来たが、美しかった母はその過程でロシア兵に強姦されて息絶えてしまった。
悪い事は続くもので、何と北海道内地に送り届ける過程で、静子たちを面倒見てくれていた日本兵は捕まりシベリアに抑留されてしまった。
だが、賢かった母静子は内地に到着するや否や逃げて、逃げて、隠れていたところを育ての両親に助けられて、何と運の良い事に、その養父母には子供がいなかったので養子縁組してもらい実子として、やがて大学卒業して教員となった。
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