タイムリープ【過去・現在・未来】
あのね!
第1話 美少女
受験受験に追われる海斗は気晴らしにチャリンコで近所の原宿に足を進めた。某有名クレープ店で大好きなクレープを買い自転車でウロウロしていると、どこかで会った事のある美少女とすれ違った。
(あれー?どこかで会ったような……)
余りの可憐な美しさに見惚れてしまったが、それと同時にどこかで会ったような?
それがどこだったのか、まったく思い出せない。
その時は横顔だけだったが、ガッカリしていたのも束の間、その時友達と笑顔で話をしていて一瞬海斗の方向に顔が向いた。
(あっ!やはりどこかで見たことがある。それが一体どこだったのか?)
まるで春風のような空気をまとい、そうなのだ。正しく今の季節、桜の満開の季節が訪れた4月初旬の事だ。桜の花びらが舞う季節に桜の妖精のように初初しく美しい…そして…どこか儚げなその美少女は一瞬で消えてしまった。
それでも海斗には口では言い表せないほどの強烈なインパクトを残して、その少女は通り過ぎた。休日でもないので人通りもまばらで竹下通りはチャリンコで走っても快適だ。
(そうだ。少女の跡を追って探してみよう)
そう思い通路と言う通路を片っ端から自転車で制覇したが、その少女はどこにもいない。
(まあいっか―)
その時はそれで終わっていた。
だが、不思議な事に海斗は受験に追われていると言うのにどういう訳か、吸い寄せられるように、時間が空くと近所の竹下通りをブラつくようになっていた。自分でもそれがどうしてなのか、まさか一瞬で恋に落ちたのだろうか?
イヤイヤそれも有るが、どこかで会ったことがある気がするのだ。
(どこで会ったのだろうか?)喉元まで出かかっているのだが思い出せない。
◀◁◀◁◀◁◀◁
父は現在竹部薬品工業東京本社に勤務している。
だが、海斗の幼少期は父の転勤で愛知県に住んでいた。やがて東京勤務となった父だったが、家族は母の実家で生活を送っている。その理由は、祖父も亡くなったので祖母の事も考えて同居の道を選んだのだ。
もしその少女とどこかで会ったとすれば、父の転勤で一時愛知県に住んでいた事があったが、多分その頃の記憶の断片に、その少女の記憶が残っていたのだろう。
海斗は現在17歳の高校3年生。渋谷区の古い町並みが残る一角に両親と祖母と妹の結衣で生活している。もし……少女の記憶を辿るのなら愛知での記憶を辿るしかない。
海斗はこんなに受験に追われていると言うのに、あの日会った少女の事が頭から離れない。
そんなある夜、何と夢の中で変な夢を見た。
それは……愛知県に住んでいる時に親戚のおじさんの家に行った時の事だ。その夢の中には誰と行ったのかは分からないが、只どういう理由か分からないが、1枚の写真を見せられたのだ。
その写真こそ、あの竹下通りで会った美少女にそっくりの少女だったのだ。
この夢をヒントに時間が空くと竹下通りのあの少女とすれ違った場所を、度々訪れていた。そんなある日とうとうその少女に出くわした。
(そうだ。おじさんの家に行った時に見せられた1枚の写真に写っていた少女の写真に酷似していたという事は、我が家と何か深い関わりがあるのかも知れない?)
そう咄嗟に思い付き携帯で隠し撮りをして家で聞いて見ようと思った。
夢の中のおじさんは父の従兄だったので父に聞こうと、父が帰宅するのを待ち構えた。すると父は夜の8時に帰宅したので早速父に聞いてみた。
「パパ……チョット聞きたいことがあるのだけれど……」
「何だい?あらたまって……」
「ぅうううん???この写真なんだけど……パパこの女の子見たことある?」
すると父の顔がみるみる豹変して怒りに震える表情に変貌した。
「どうしたの……パパ?」
「一体……一体……どこでその少女と会ったんだ?」
「竹下通りだよ」
父はいつもの穏やかな優しい父の表情とは打って変わって、今まで一度たりとも見たことのない凍り付くような冷酷な表情で書斎に向かった。
(あの少女と我が家には……何か関わりがあったのだろうか?)
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