第6話「打ち合わせの行方」

午後の打ち合わせ時間が近づくにつれ、美咲の心臓の鼓動は高鳴っていった。

「落ち着いて...」

自分に言い聞かせながら、資料を確認する。


「お邪魔します」

山田が会議室に入ってきた。

「お待たせしました」

美咲は微笑みながら席を立つ。


「先日の文学フェス、本当に参考になりました」

「そうですか。良かったです」

山田の目が優しく微笑む。


打ち合わせは順調に進んでいく。

「この作家さんの新作、若い女性層に特に響きそうですね」

「ええ。SNSでの反響も期待できます」

二人の会話は、いつもより弾んでいるように感じた。


「ところで...」

打ち合わせの終わり際、山田が少し言葉を濁す。

「はい?」

「先日は途中で失礼してしまって...」

「いえ、家族の用事でしたから」


「実は...」

山田が真剣な表情で切り出した。

「佐藤さんと、もっと話がしたいと思っていて...」

美咲の心臓が大きく跳ねる。


「今度の週末、もし良ければ...」

「はい」

思わず即答してしまった自分に、少し照れくさくなる。

「どこか行きたい場所はありますか?」

「そうですね...」

美咲は少し考え込む。


「実は、新しくオープンしたカフェがあるんです」

「カフェ...ですか?」

「ええ。佐藤さんの趣味が読書とカフェ巡りだと聞いて...」

山田の言葉に、美咲は胸が熱くなる。


「是非、行ってみたいです」

「では、土曜日の午後1時に、駅前で...」

「はい、お願いします」


打ち合わせ室を出ると、美咲はすぐに田中の元へ向かった。

「里奈、大変!」

「え?また山田さんと?」

「うん、今度は...」

「デート!?」

「違うの!カフェに行くだけ...」


田中の目が輝く。

「それって、立派なデートじゃない!」

「もう、からかわないでよ」

頬を染めながら、美咲は小さく笑う。


オフィスの窓からは、初夏の日差しが差し込んでいた。

美咲は、これからの週末に胸を膨らませながら、

今日という日を静かに終えていった。


(続く)

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