第3話 - 開閉
「便意は強くなるのに、なぜ出ないのか? 恐らく、便は凸の形となり、かつ下側が硬いため、肛門で引っ掛かっている。にもかかわらず、上から新しい便が押し寄せてきているため、便意は強くなる。押し寄せているとなると、上側は流動性があり、柔らかい。となると、凸の硬い下側を出せば、栓を開ける要領で、いとも簡単に全てを出し切ることができるはず。」
便の状態把握に"3秒"。さらに、脳の旋回速度が速まる。
「敵は見えない、ならば、形を明確にイメージしろ。そして、そのイメージに対して効果的に攻撃をかけろ。仮に攻撃が効かなければ、イメージが間違っているはずで、そのイメージに対する誤差を修正し、再度攻撃をかける。それを続ければ、勝機は必ず訪れる。」
敵のイメージに"1秒"、その"0.3秒"後には、具体的な対策が浮かぶ。
「まずは凸の硬い下側を徐々に切り崩す! ここを気張って一気に出そうとするから勝てないのだ。そうではなく、少しずつ出す戦法をとるべきだ。」
攻め手が決まれば、あとは実行するだけである。
マサヒロは、門の開閉を短い周期で行うことで、凸の硬い下側を少しずつ削ることを意識した。
まずは気張る!そして、わずかに体外に出たことが認識できたならば、出口の筋肉を硬直させ、出た部分を切り取ることで、敵を徐々に切り崩すのである。
「コロン...」
小さな小さな片が落ちた。
「よし!」
この闘いが始まって"1時間"、初めての成果である。
「コロン...」
次の片が落ちた。
「よし!これを続けていれば、こちらの勝ちだ!」
勝機を見出したマサヒロは、心の中でガッツポーズした。
「勝った!」
しかし、"7日間"という歳月をエネルギーとしてため込んだ敵は、それほど容易に落とせるものではない。
マサヒロの戦略は頓挫した。
いくら気張っても次が体外に露出しないのである。体外に出ないので、当然、門で切り取ることができない。
先ほどから一転、マサヒロは焦りだした。
「まずい、このままだと本当に負けてしまう...、いったん落ち着いて新しい策を練らなければ。」
マサヒロは深く深呼吸した。
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