第9話

「はっ。いけない!急がなくては。」


我に変わり慌てて身体の向きを変える。



再び、リモコンが置かれてある机へ行き、携帯と鍵、それと。



「忘れたらいけない。」



もうひとつ大事な物を手に取り、鞄を開けて中に入れた。




物思いに更けるのは私の悪い癖。




チャラチャラと音を鳴らして鍵のついているキーホルダーを握りしめる。




可愛いネコのぬいぐるみも一緒につけてあるキーホルダー。




「さてと、行こうかな。」


辺りを見渡して戸締まりがされているかを確認する。



ベランダの窓の施錠よし、ガスの元栓も閉めた。


使わない電気コードの線も外したし。



カーテンは開けとこうかな?


防犯防止にね。




最後に。




玄関へと歩いて行く途中に、持っていた携帯の画面を見つめる。




「……………………行ってきます。」



返ってこない返事とわかっていても、毎日絶対に欠かさない挨拶。



よし、と小さく呟いて携帯電話を鞄の中へ入れる。



ガチャリと玄関の扉を開けると、眩しい光が部屋の中へ差し込んできた。




それと同時に気持ち良い風が吹いてくる。




水無月結衣、桜坂高等学校ニ年生として行きますか!




大きく深呼吸をして玄関の鍵をかけた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る