第5話

ふわふわ浮いたまま啞然とする。




「……………本当に最低で最悪な人。何が責任者よ!私は認めない、あの世界ではそうかもしれないけど。小さい頃に、最初に会っていたら躊躇なく殺せたはず。なのに、何故やらないの?私の事本当は憎いくせに。どうして………………。」



続きを話そうとした途端に、ガリッと口を噛んだせいか、唇の端が切れて血のニオイがする。



本能なのか、血のニオイに心が翻弄される。



「……………そういえば朝御飯食べていなかった。だから反応するんだ。」


無意識にぺろりと怪我をしている唇の端を舐める。



ほんのちょっとだけなのに、甘くて甘美で蕩けるような美味しさ。



もっと頂戴、もっと頂戴と、別の私が誘惑を誘う。



なんでもいいから頂戴、と。



血の味なんて鉄みたいな味なのに。



これが、夢中になれる、止められないぐらいに進み、貪り欲しくなる。



これが、私の中に流れている。



“吸血鬼“



純血と言うんだろうか、あの世界では。



でも、それは私では無い。



半分は人間の血も混ざっている異端者なのよね。



ま、昔の事は仕方ないじゃない。


でも、私は絶対に間違いはしない。



あの男だって、訳のわからない責任感に囚われているだけ。



面倒くさい話を何故に引き受けたのか、いまいち理解できないけどね。



「あーーーー、早く出ないと遅刻する。バカ男!変態!次からは誘拐されましたって大きい声で騒いでやるんだから。」


テレビの画面に映っていた時刻を見て騒いでしまう。

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