第6話

「………………そんなに目立ちたいのか。」


若干怒りを含む低い声が聞こえてきた。




え?



いないはずの男の声が聞こえてくる。


思わず、声のする方へ視線を向けてみた。



「誘拐?言えるんだったら、言ってみろ。まあ、君の場合は見世物にされるだろうけど。」


ふっと嫌味たっぷりの笑みをする。



「…………頼んでいない。私は、生きてほしいって頼んでいない。そちらが勝手にしたんじゃない。」


「へぇ?そうだな。面倒くさかったんだが、仕方なく引き取っただけだ。しかし、俺と行動をするのが嫌みたいだから、お言葉に従おう。君のね?」


余裕綽々だけど、どこか背筋を凍らせるような、そんな笑顔を私に見せる。



「へ?」


呆気に取られてはいるけど、こころなしか顔が引き攣っているのがわかった。




「Unfloating(解除)」


腕を組んでいた人物が何かを唱えると、まるでシャボン玉が弾けたかのように身体が落ちていく。



「ち、ちゃっと!下はフローリング!」


バランスを崩したまま腕を組んでいる男を睨む。



「そこまでは責任取れないな。あ、死にたかったんだよな?大丈夫、後は任せて。」


にっこりと満面の笑みをする。



このまま落下すれば怪我は免れない。


下手したら骨が折れるか、打ちどころが悪かったら。



「あり得ない!」


「褒め言葉をありがとう。」


男は更に綺麗な笑みで微笑んだ。



天井からフローリングに落ちれば怪我だけじゃない。


凄い音も聞こえるはず。


下手したら、この男、犯罪者にもなる可能性もあるのに。


見物のように見る男に、沸々と更に怒りが殺意が増す。




「残念ね!死んでほしかったのはあなたじゃないの?面倒くさい女の子がいなくなったら肩の力が降りるものね。」


最後の悪あがきのように叫ぶ。



「可愛くないな。Slowly and slowly she will get off(ゆっくりゆっくり彼女は降りるだろう。)」


チッと舌打ちをしたかと思えば、何やら唱えるように呟き、何故か不敵な笑みを浮かべ。


「じゃあ、行こうかな。」


身体の向きを変え始めた。



この最低男と思いながら、思いっきり目を瞑る。



ドスンとか、がターンとか、凄い音をたてるとおもうのだが。



ペッタンコとまねけな姿でフローリングに着いてしまった。

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