第7話
10年後編 開幕
「ん…ここは? 騎士団本部!? なんでこんな廃墟みたいに…。竜騎、起きろ! おい!」
「ん…竜弥か。俺は翡翠に斬られて…その後何が起きた?」
竜弥が説明する。
「第4階梯の技を受けて、気づいたらここにいたってわけか。ザスクや碧、珊瑚さんは?」
「天照。感知に引っかからない。近くにはいないのか…それとも俺たちだけ飛ばされてきたのか。第4階梯の言うことが正しければ、ここは10年後の未来。そして騎士団本部が廃墟になってるってことだ。情報を集めよう。」
「俺の感知範囲に誰か入ってきた。相当強いぞ。」
「二人組だ。いるのは分かってる。何者だ?」
「煉獄!」
「黒縄!」
竜弥と竜騎はそれぞれ刀を構える。
「根波!」
太い木の根が波の様に押し寄せる。
「炎月!」
「氷牙!」
炎を纏った剣と地面から氷柱を出し根を防ぐ。
「枝槍!」
槍を思わせるほどの鋭さを持つ枝が飛んでくる。
「黒縄天元氷月壁!」
竜騎が氷の盾を展開する。
「この世界はワシの感覚が狂う何かがあるな。竜弥、そいつは瑪瑙だ。戦闘をやめろ。」
「えっ? お前、瑪瑙か?」
「竜弥と竜騎か? どうして…死んだはずなのに。」
「えっ?」
「何!?」
「死んでる!?」
竜弥が説明する。
「そうだったのか。第4階梯の攻撃で飛ばされてきたのか。ここは2032年だ。魔王は倒され、新たに魔王となった者が統治している時代だ。新たな魔王の名前は白夜。この時代の竜弥を殺した張本人でもある。」
「!? 何!?」
「自身を含めた十二神将という兵を率いてる。その中に翡翠もいてね。翡翠は珊瑚さんと戦って左腕を失った。」
「!?」
「ただその代わり、珊瑚さんが…。」
「……。」
「俺たちがこの時代に来たのは意味がある気がする。倒そうぜ、その白夜ってやつ。俺の仇は俺が討つ。」
「ちなみに、この時代の俺を倒したやつは誰だ?」
「この時代の竜騎を倒したのは、白夜の左腕でもある神猿の悟空よ。」
「聞いたことねえ名だな。」
「そうよ。十二神将は白夜が引き連れてきた新手の魔王軍だからね。あと、今の竜弥と竜騎がどこまで戦えるか分からないけど、この時代じゃ全く戦力にならないだろうね。」
「何!?」
「着いたよ。ここが今の騎士団本部だ。」
「団長に会おうぜ。」
「団長?」
「そう。この時代最強と恐れられる騎士団三代目団長よ。団長になるにあたって第3階梯を500体狩ってる。」
「何!?」
「いたよ、団長様だ。」
「何!? 嘘だろ、瑞姫か!?」
「えっ? 竜弥と竜騎君? どうして生きてるの?」
「この時代最強って瑞姫のことなのか?」
「そうよ。騎士団団長兼戦闘部隊『戦乙女』の隊長、蒼木瑞姫。私は戦乙女の副隊長を務めてる瑪瑙よ。」
説明が続く。
「そんなことがあったんだ…。」
「竜弥と竜騎君は元の時代に帰る方法を探さないの?」
「俺たちをこの時代に飛ばした第4階梯が言ったんだ。『強くなって帰って来な』って。やっぱり何か意味があると思う。この時代で強くなりたい。元の時代に帰るのはそれからだ。」
「分かった。なら、この時代で生き抜くためには聖天を覚える必要がある。精霊最高戦闘術、聖天よ。」
「聖天?」
「精霊や神の力を100%引き出せたら聖天に至るの。」
「そういや、10年後に来てからグレンのやつ全然喋らないな。」
「この時代は精霊や神にとって有害な結界が張ってあるの。多分そのせいじゃないかな。」
「なんだよそれ。誰がそんなものを?」
「白夜だよ。」
「白夜はそんな強い結界を広範囲に展開する力を持ってるのか?」
「ええ。それが倒すべき相手の強さよ。怖気づいた?」
「いや。そのくらいじゃないと困る。」
「ふふ。じゃあ、二人が今どのくらいできるか見たいから、私と戦おうか。二対一でいいよ。」
「鬼灯!」
肉体強化をし瑞姫に殴りかかる。
ドガドガドガドガ!
「氷矢!」
「陽炎!」
氷の矢と炎の矢がぶつかる。
ドガドガドガドガ!
「どうした? この時代最強なんだろ、瑞姫!」
「怪我しても知らないよ?」
瑞姫の動きがさらに速くなる。
ドガ!
「くっ!」
ドガ!
「ぐっ!」
ドガ!
「うっ!」
『くっ。速すぎる。』
「俺がいることを忘れるな。黒縄天弦氷月爪!」
「天弦氷月壁!」
氷の爪と氷の盾がぶつかる。
「何!? あれは俺の技…。」
「ふふふ。」
不敵に笑う瑞姫。
「『エース技借りるぞ』火拳!」
竜弥が炎の拳を放つ。
「氷帝!」
炎でできた拳と氷の蹄がぶつかる。
「そこまで!」
瑪瑙が止めに入る。
「ハァハァ…。」
「ハァハァ…。」
「二人とも2週間で聖天を覚えてもらうよ。そのためには自分の待ち精霊や神の力を100%引き出す必要があるの。」
「にっ、2週間!?」
「まず1週目は戦乙女と付きっきりで戦闘して、基礎戦闘力を上げる。2週目は自分の持ち精霊や神と戦って倒す。自分の持ち精霊や神の力を100%引き出せないと倒せないからね。」
「どっちが先に聖天を会得できるか勝負だな。」
「へっ、てめえなんかに負けるかよ。」
「ニッ。」
こうして、竜弥と竜騎の二人はそれぞれ修行に励むことになった。
2週間後。
ハーレック城。
「12神将が揃うなんて、いつ以来だろうな。みんなに集まってもらったのは他でもない。鼠の能力で騎士団本部の場所が判明したんだ。一人残らず潰しに行こうじゃないか。」
「騎士団ってさ、戦乙女の蒼木瑞姫ってのが、うちの第3階梯を500体も狩ったって話じゃねえか。そんな相手に騎士団潰せるのかよ?」と猪が疑問を投げかける。
「問題ないよ、猪。羊鳴が蒼木瑞姫の相手をする。それに魔王軍にはあと1000体以上の戦力が残ってる。騎士団を潰すには十分だ。翡翠、騎士団の戦力を分析してくれ。」
白夜の問いかけに翡翠が冷静に応じる。
「はい。現在の騎士団は、藍川碧が率いる『百鬼夜行』、ザスクジェットが率いる『シリウス』、そして蒼木瑞姫が率いる『戦乙女』の三部隊に分かれています。この三部隊の総人数を合わせてもわずか13人と少数です。一方、魔王軍は第3階梯250体、第2階梯500体、第1階梯250体、そして我々第4階梯の十二神将と白夜様。騎士団を壊滅させるには十分すぎる戦力ですね。」
「そういや、この前戦った上白石琥珀と群青瑠璃ってのがいたよな。あいつら、弱かったぜ。」
「あれでも紅林竜弥の右腕と左腕なんだよ。」
「マジかよ、あれで?」
「ククク。巨像と蟻の戦いだね。さあ、騎士団本部へ向かおうか。」
「ウロボロス〜異世界に行って魔王を倒そうとしたら魔神に魔王が殺されて焦るはめに〜」 たつみ @9088468p
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