第6話
ガチャガチャ。
檻に閉じ込められた少女を繋ぐ鎖が音を鳴らす。
檻に閉じ込められた、翼の生えた少女ティア。
「ククク、空から降ってきた翼付きの女か。これは高く売れるぞ。ククク」
奴隷オークション会場
「今回は珊瑚さんとペアか。」
「今回の任務は、奴隷オークションに囚われた人々の解放だ。それと、天空神の封印の鍵がある島出身の少女がいるらしい。彼女に天空の島へ案内してもらい、鍵を手に入れるのが目的だ。分かったな?」
「分かってます。でも、その島出身の少女ってどうやって見分けるんですか?」
「簡単だよ。翼が生えてる。」
「翼?」
「そう、翼だ。そろそろオークションが始まるぞ。」
「じゃあ、手はず通り煙玉で目くらまししてからですね?」
「ああ。」
「さて、続きまして今回の目玉商品! 翼の生えた少女です。最低落札価格は1000万からでお願いします!」
「2000万!」
「2500万!」
「3500万!」
「1億!」
「何!?」(会場がざわつく)
「1億1000!」
「2億!」
「くっ…。」
「2億2000!」
「3億!」
「クソッ!」
「他にいませんか? 57番の方、3億で落札決定です!」
パチパチパチパチ
「さて、次は――」
シューーーー
「なんだ!?」
「ゲホゲホ!」
「煙幕か!?」
「商品を守れー!」
「煉獄!」
鎖が切れる音。
「一緒に逃げるぞ。名前は?」
「ティア。」
「ティアか。いい名前だ。逃げるぞ!」
「ゲホゲホ! クソッ、逃がすな! 商品も盗人も捕まえろー!」
「亜人の子供が多いな。金持ちの性奴隷にするつもりか。」
「許せねえ…。」
「落ち着け。全員逃がしたし、騎士団の本部で身柄を預かる。この子たちはもう安全だ。受け渡し先は南に少し行ったところだ。急ごう。」
「はい。」
「そろそろ落ち合うポイントだ。」
「氷の馬? 瑞姫と竜騎か!」
「ここからは私たちが引き継ぐよ。珊瑚さんと竜弥は天空神の封印の鍵を探して。」
「分かった。」
「じゃあ頼んだよ、竜騎と瑞姫ちゃん。」
「ああ。」
「はい。」
「ティアちゃん、天空の島まで案内してくれるかな?」
ティアが首を振る。フルフル。
「連れてったら二人とも死んじゃう。」
「どうしてそう思うんだ?」
「第2階梯の魔王軍がものすごい数いるから。」
「それなら大丈夫だよ。第2階梯くらいなら何体いても平気だから。」
「案内はできるけど…空を飛べないとダメだし。」
「それも大丈夫。聖四炎成!」
珊瑚の背に翼が生える。
「竜弥は俺に捕まってな。じゃあティアちゃん、案内よろしく。」
「……分かった。」
「珊瑚さん、飛べるんですね。」
「まぁね。行くぞ。舌を噛むなよ。」
1時間後
「ここらへんから魔王軍の縄張り」
「俺も珊瑚さんも敵を感知する技を使ってるから安心して。」
「あの島か。」
「ウヨウヨいるな。」
「そうですね。あそこに天空神の封印の鍵があるんですよね?」
「行こう。」
「騎士団だ!」
「騎士団がいるぞ!」
「金木犀! 竜舌蘭!」
「ギャアアアアア!」
「バースト!」
「グアア!」
「ハァハァ…俺、30体は倒しましたよ。」
「45、46、47…。」
「さすが元Sランク。」
「金木犀や竜舌蘭みたいな大技の連発は体力を使う。珊瑚みたいに最小限の技で倒す癖をつけろ。」とグレンが言う。
「そういうことは先に言ってくれよ…。」
「珊瑚さん!」
「分かってる。」
バサバサ。
「元Sランクのガンナーと、太陽神と契約した小僧か。お前らのことは魔王様から聞いてるぞ。元Sランクのガンナーは、第三階梯を一度に20体相手にしたらしいな。」
「!」
「珊瑚さんってそんなに強かったのか…。」
「昔の話だよ。」
「私はフクロウ。」
「俺はファルコだ。どちらがどちらの相手をする?」
「俺がフクロウを相手にします。」
「分かった。俺はファルコだな。楼炎郡閣!」
フクロウと竜弥が対峙する。
「猛禽蹴!」
鋭い蹴りを放つフクロウ。
「竜尾!」
後ろ回し蹴りで応戦する。
「猛禽嘴!」
嘴を伸ばして攻撃してくるが、
「竜牙!」
手に牙を纏って防ぐ。
「猛禽剣!」
「煉獄!」
キィン!
鍔迫り合い、二人が距離を取る。
「ハァハァ…。」
「随分息が上がってるな。」
「後から出てきてよく言うぜ。狙ってたんだろ?」
「ククク。さぁね。ただ、これは魔王軍と騎士団の戦争だ。都合良くタイマンになるわけでもなく、一対多数なんて当たり前だ。男ならそんな不条理を飲み込んでかかって来なさい。」
「ケッ。別に言い訳してねぇだろ。竜鳴!」
剣から光線を出す。
フクロウが飛び、避ける。
「夜の帳!」
フクロウの技で視覚のみ封じられる。
「何!? どんな技だ。視覚が効かない…天照!」
「猛禽穹!」
弓で攻撃をするフクロウ。
「来る! 竜星群!」
ドガドガドガン!
無数の竜を模ったエネルギーの塊がフクロウの矢を迎え討つ。
煙が消える。
「!!」
珊瑚にファルコが引きずられている。
「こっちは終わったよ。手を貸そうか?」
ドサ。
投げ捨てられるファルコの死体。
「何!? これが元Sランクの力か…。」
驚くフクロウ。
「珊瑚さん、タイマンだ。手を出さないでくれ。倒す算段はつけてある。」
「ホーホー言うね。感知はできても姿は見えない。それで勝てると思ってるのか?」
「俺は魔王を倒す。お前程度に躓いてられるかよ。陽炎!」
炎の矢を放つ。
フクロウが避ける。
「避雷針! 竜玉!」
「ギャアアアアア!」
「ハァハァ…勝った。」
「やるな。さすが太陽神と契約しただけある。」
『弓矢を放ちそれを避けさせ、マーキングのしてある矢に瞬間移動し攻撃を当てる。強いな。』
「魔王軍も倒したし、ティアちゃんに天空神の封印の鍵の場所まで案内してもらおう。」
「私たち一族は封印の鍵を守ってきた。でも魔王軍が来て、お父さんとお母さんが私を地上に逃がしてくれた。魔王軍は知らないけど、封印の鍵は心が清い人にしか持てない。紅き龍の御子にこそ相応しい。貴方は世界を夜明けに導く者。魔王を倒す者。私、未来を見ることができる。貴方が魔王を倒すよ。ここ、これが封印の鍵。」
「ティア、魔王は俺が倒す。」
『うん…けど、魔王を倒したら今度は貴方が魔王になるよ、紅き龍の御子。』
ドン!
「何!?」
「この圧は第4階梯…魔王の側近だ。」
「!」
「竜眼、鷹の目。翡翠さんと竜騎、碧にザスクが魔王軍と対峙してる。」
「騎士団の最高戦力だ。それでも第4階梯には勝てない。俺たちも加勢に行くぞ。ティアちゃん、俺たちは行く。聖四炎成! 竜弥、捕まって!」
「はい!」
「行くぞ!」
バサバサ。
魔王軍、第四階梯の魔王の側近と対峙する翡翠達。
「翡翠、地爆神と海流神の封印の鍵を渡せ。」
第四階梯の魔王の側近が言った。
「翡翠、渡すな。魔王軍の手に封印の鍵が渡れば大変なことになる。」
碧が翡翠に呼びかける。
「封印の鍵を渡せば命だけは助けてやる。」
魔王の側近が重ねて言った。
「翡翠、渡す必要はない。鍵を渡しても俺たちを殺す気だろ。第4階梯だろうが、ここで殺す。」
ザスクが翡翠に呼びかける。
「そういえば、碧に言ってなかったことがある。」
「こんな時に何ですか?」
「コーンウィー支部を皆殺しにするよう命令したのは僕なんだ。」
「!!!」
「翡翠、何!?」
「だから、僕が命令した。魔王の側近として人間への侵攻を指揮してるのも僕だ。」
「翡翠――!」
碧が斬られる。
翡翠に銃を向けるザスク。
「てめぇ!」
「遅いよ。」
ザスクが斬られる。
「黒縄天弦氷月牙!」
「だから遅いって。」
竜騎が斬られる。
「何!? 嘘だろ…。」
「翡翠――!」
珊瑚が翡翠に銃を向ける。
「珊瑚か。」
翡翠が両手を上げる。
「竜弥、蒼炎だ。早くしろ。3人とも死ぬぞ。」グレンが早口に言う。
「蒼炎! 翡翠さん、どういうことだよ。説明してくれ!」
「簡単だよ。魔王様の器を探してる。そのために君を育てた。僕が魔王様に腕を捥がれた時も、ピンチを演出して君の早期覚醒を促そうとしたんだ。まさかグレンやクレセリアが出てくるとは思わなかったけどね。魔王様は不死だ。ただ、体は老いる。だから器が必要で、強い精霊や神と契約できる人間なら魔王様の器に相応しいだろ? だから騎士団に潜り込んだ。」
「事情は分かった。翡翠は俺がやる。竜弥、第4階梯を頼めるか?」
「分かりました。」
「ふー。魔王様の器になりうるなら、僕は君と戦いたくないんだがね。」
「一撃だ。一撃で決める。」
竜弥が第四階梯の魔王軍と対峙する。
「朱雀!」
「黒夜!」
珊瑚の技と翡翠の技がぶつかり、翡翠の技が珊瑚を襲った。
倒れる珊瑚。
「何!? アレは魔王の技だ。Sランクと元Sランクの戦いなのに手も足も出ないのかよ…。」
「竜弥、逃げろ!」
「えっ?」
「お前だけでも逃げろ。お前は魔王を倒す器だ。こんな所で死ぬな!」
グレンが言った。
「グレン、お前ならここにいる全員で逃げられるか?」
「10中8、9は捕まるな。」
「なら1、2の目に賭けよう。」
スゥー。
身体の主導権をグレンに委ねる。
「紅天 流桜!」
「グレンと入れ替わったみたいだね。」
「陽炎 燦光! 竜鱗 花鳥風月!」
「灰波!」
竜弥が炎の矢を無数に放ち空から降り注ぐが、矢を盾で防ぐ翡翠。
「私が行こう。神威!」
「ワシの感知から消えた…!」
突然現れる第4階梯の魔王軍。
「逃げても無駄だよ。」
「チッ。」
グレンが逃げるのを止める。
「天焦!」
鞘から刀を抜こうとするが、鍔を押さえられ止められる。
「何!?」
「水竜牙!」
「炎月!」
牙と剣が交差し、火花を散らす。
「天翔龍閃!」
「神威!」
竜弥の身体を借りたグレンが高密度のエネルギーを剣から放つが、魔王軍の身体を技がすり抜ける。
「神楽!」
高密度のエネルギーを放つ魔王軍。
「竜鱗 桜火! ハァハァ…クソッ。」
六枚の花弁を模した炎の盾で防ぐ。
「だいぶ息が上がってるようだね。逃してあげようか?」
「何を言ってるんだ?」
「私はね、魔王軍に所属してるし側近ではあるけど、正直人間との争いなんてどうでもいいんだ。だから逃してあげようか。」
「序列3位の神であるワシが、たかだか第4階梯ごときにそんなことを言われるとはな。逃げるのはやめだ。ここでお前を倒す。」
「強がりはよせ。神は精霊と違って顕現するのに自身をスケールダウンさせる必要がある。そうしないと次元が違いすぎて人間界に干渉できないし、そのまま顕現できたとしても影響力が強すぎて世界そのものを壊しかねない。人間の身体を使って力を発揮するなら尚更制限がかかる。器を壊してしまう可能性があるからな。」
「お喋りな魔王軍だ。熾天 雪!」
ドン!!!
「これは翡翠か…。」
「私がいくと言ったのに。とにかく訳あって君たちをここから逃す。逃す先は10年後の未来だ。せいぜい強くなって戻ってくるんだね。神凪!」
時空が歪む。
「何が目的だ?」
「グレン、目的は君と同じだよ。さようなら。封印の鍵はもらっておく。」
歪みに飲み込まれる。
「グァーーーーーー!」
10年後編 開幕
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