第5話

ドーヴァー王宮の大広間。玉座に座す王が、重々しい声で宣言した。「これよりオーロラの戴冠の儀を行う。オーロラ、前へ。」


オーロラが一歩進み出た瞬間、扉が勢いよく開き、低く不気味な声が響き渡った。「その戴冠の儀、待った!」

王が驚愕に目を丸くし、衛兵たちを振り返った。「衛兵、何をしている?」

闇の中から現れた男――ダゴンが、薄笑いを浮かべて進み出た。「王よ。20年前のツケを取り立てに来た。」

王は即座に声を張り上げ、威厳を保とうとした。「そんなものはない。帰れ!」

ダゴンは喉の奥でクククと笑い、目を細めて言葉を続けた。「お前は20年前、願っただろう? 娘の病を治してほしいと。心臓の弱いオーロラが、せめて20歳の戴冠の儀を迎えるまで健やかに生きられるようにとな。その願いを海の神は叶えてやった。だから今、俺が代わりにツケを取り立てに来たんだよ。」ダゴンは視線を横に滑らせ、隣に立つ瑠璃を嘲るように見つめた。「騎士団の小僧、殺気が漏れてるぞぉ?」さらに王へと向き直り、声を低くした。「王よ。お前はこうなることを予見していたはずだ。だから騎士団から人を雇ったんだろう? 願うなら、皺くちゃのババアになるまで長生きさせてくださいとでも願うべきだったなぁ。」再び瑠璃に目をやり、挑発的に付け加えた。「騎士団の小僧。俺は魔王から騎士団には手を出すなと命じられているが、刀を抜くならお前の命は保証しないぞ?」

瑠璃が歯を食いしばり、鋭い声で吐き捨てた。「魔物風情が粋がるな。」

衛兵の一人が勢い込んで叫んだ。「そうだ、やってしまえ!」


瑠璃は一瞬の躊躇もなく刀を抜き放ち、ダゴンと対峙した。

二人は互いの間合いを計りながら、静かに足を滑らせ、緊張が空気を切り裂く。

キィンキィン! 刃が交錯し、火花が飛び散った。

鍔迫り合った瞬間、瑠璃が低く叫んだ。「渦竜!」

水の弾丸がダゴンを襲う。

パァンパァン! ダゴンは素早く後退し、銃を取り出して応戦した。

キィンキィン! 瑠璃は冷静に刀を振るい、空中を飛ぶ銃弾を次々と切り落とす。

「流竜!」 瑠璃が一気に間合いを詰め、流れるような一閃でダゴンの剣を叩き折った。

そのまま勢いを止めず、鋭い刃をダゴンの喉元へと振り下ろす。

ダゴンが呟いた。「墨」

次の瞬間、彼の体が黒い墨と化し、斬撃をすり抜けて分身を作り出した。墨の影が素早く瑠璃の背後に回り込む。

瑠璃は「漣竜!」と叫ぶ。

水でできた刀を出し、背後のダゴンの首元に刀を突きつけ、冷たく睨みつけた。

「流竜!」 再び振り抜いた刃が、ダゴンの首を跳ね飛ばす――かに見えた。

だが、それはまたも墨の分身。ダゴンの本体が遠くに現れ、不気味に笑った。

「オーロラの身は一旦預けておく。また取り立てに来るからなぁ。」

その言葉を残し、ダゴンは墨と共に闇の中へと消え去った。



騎士団本部近くの海岸。波が打ち寄せる岸辺に、巨大な船がそびえ立っていた。

竜弥が目を輝かせて呟いた。「デケェ船だな。こんなデカイ船乗るの初めてだ。」

ザスクが冷たく一蹴する。「はしゃぐな、ゴミ。」

竜弥は唇を尖らせ、言い返した。「あいつ俺に負けたのになんでそんな偉そうなんだよ。」

近くにいた碧が慌てて言った。「僕に話を振らないでください!」


航海が始まって2時間後。船の甲板に立つ一行を、ざわめく海が囲んでいた。

アーロが遠くを見つめて呟いた。「囲まれてるな。」

ザスクが短く頷く。「ああ。」

竜弥が目を凝らし、声を上げた。「第二階梯のマーマンの群れか!」

竜騎が冷静に数を数え、問いかけた。「一人当たり何体だ?」


甲板はたちまち戦場と化した。マーマンたちが鋭い爪と槍を手に襲いかかる。

船上でマーマンと戦闘する騎士団の面々。

竜弥が構え、低く叫んだ。「竜玉!」

右手に圧縮した玉状のエネルギーがマーマンを吹き飛ばし、ザスクの方に飛んでいった。

ザスクは吹き飛んできたマーマンを軽く蹴りで海へと叩き返した。

竜弥が肩をすくめて呟く。「悪い。」


突然、琥珀が遠くの空を見て目を丸くした。「何! 町が燃えてる!」

竜騎が苦々しく吐き捨てた。「遅かったか。」



ドーヴァーの市街地

炎が広がる中、第1階梯のアンデッドの魔王軍たちが市民を襲っていた。

「キャーワー!」市民の悲鳴が響き渡る。

瑠璃が歯を食いしばり呟いた。「何が『一旦預ける』だ。あいつ、仲間呼びに行ってやがった。」

再び悲鳴が上がった。「キャー!」

瑠璃がオーロラに鋭く叫んだ。「オーロラ、伏せてろ! 渦竜!」

水でできた弾を飛ばし、アンデッドたちを薙ぎ払い、地面に叩きつけた。


瑠璃がオーロラの手を掴んだ。「オーロラ、逃げるぞ!」

オーロラが目を潤ませ、振り返った。「けど、お父様は……?」

瑠璃は一瞬言葉に詰まりつつも、強く言い切った。「狙われてるのはお前だ。お前が逃げ延びないと全部が無意味になる。」

オーロラは唇を噛み、怯えた声で呟いた。「けど、もしお父様が人質に取られたりしたら……。」

瑠璃は彼女の肩を掴み、真剣な目で見た。「分かった。その代わり、俺から絶対に離れるなよ。」

オーロラは小さく頷き、涙を堪えた。「うん。」


タッタッタッ! 二人は城内の石畳を駆け抜けた。

オーロラが息を切らせながら言った。「あの角を曲がればお父様の部屋よ!」

だがその時、闇の中からダゴンの不気味な声が響いた。「おっと、どこへ行く? 騎士団の小僧とオーロラ姫。この先は王の部屋だが、何か用かな?」

瑠璃が歯軋りしながら吐き捨てた。「クソッ!」


ドーヴァー城近辺。城壁の下で、竜弥が目を細めて呟いた。「竜眼、鷹の目!」

竜騎が尋ねた。「竜弥、何やってんだ?」

竜弥は額に汗を浮かべながら答えた。「遠視と透視の両方だ。まだ慣れてねぇから待ってくれ……いた! 瑠璃と女の人、それに魔王軍だ!」

ザスクが鋭く聞き返した。「どこだ?」

竜弥が指さす。「三階の窓の近くだ!」


ザスクは即座に動き出し、城壁を軽やかに駆け上がった。

パリン! 窓ガラスを突き破り、ザスクは室内に飛び込む。

瑠璃が驚きの声を上げた。「ザスク!?」

ザスクが素早く叫んだ。「伏せてろ!」

ザスクは銃を構え、パァンパァンと連続で撃ち放つ。

瑠璃はオーロラに覆いかぶさりながら床に伏せ、銃弾がダゴンに直撃――したかに見えた。だが、それは墨の分身だった。

ザスクが舌打ちした。「チッ、分身か。」


パリン! 別の窓が割れる音が響く。

オーロラが顔を上げて呟いた。「お父様の部屋からだわ……。」


パァン! ザスクが王の部屋のドアを勢いよく蹴破った。

オーロラが駆け寄り叫んだ。「お父様ー!」

王が疲れ果てた声で答えた。「魔王軍が……人魚の住む島への海図を奪って行った。」


「チッ、下にも騎士団がいたのか。墨……!」

見る間に、街全体が黒い墨で覆われ始めた。

瑠璃が拳を握り潰し、吐き捨てた。「クソッ!」


部屋に沈黙が落ちた後、ザスクが口を開いた。「魔王軍が海図を奪ってったが、何が目的だ?」

竜弥が冷静に答えた。「人魚が海流神の封印の鍵を持ってる。魔王軍の狙いはそれだ。」

瑠璃が王に目を向けた。「国王、人魚の島の位置は覚えていますか?」

王は弱々しく首を振った。「大まかな位置しか分からん……。」

碧が決然と言った。「追いましょう。海流神の封印の鍵を奪われたら取り返しのつかないことになる。」

竜弥が驚きに目を丸くした。「そんなにヤバいのかよ?」

碧が重々しく頷く。「海流神は魔王と同じ第五階梯ですよ。」

一同が息を呑んだ。「!!!!!!」

竜弥が続ける。「大まかな位置さえ分かれば、俺の天照と竜眼で感知できる。行こう。」

その時、オーロラが前に進み出た。「私も連れて行って!」

ザスクが怪訝そうに振り返る。「誰だ?」

瑠璃が毅然と言った。「オーロラ姫だ。」

彼女はさらに続けた。「人魚に会うには海図だけじゃダメなの。」

ザスクが眉をひそめる。「?」

オーロラが静かに、しかし力強く告げた。「この国の王族の血が必要なのよ。」

一同が再び息を呑んだ。「!!!!!!」




海上。船尾から海流を操り、船を加速させる瑠璃とアーロがいた。

竜弥が鋭い声で叫んだ。「捉えた! 10キロ先に魔王軍の船だ!」

琥珀が目を細め、水平線に浮かぶ影を指さす。「見えた。あれだな。」

「追いついてきたか。」ダゴンが冷静に状況を見極め、命令を下す。「ここで騎士団を迎え撃つ。砲撃の用意をしろ!」

敵船から砲弾が飛来し、琥珀が身を低くして叫んだ。「打ってきたぞ!」

竜騎が即座に応じる。「渦竜」


氷の弾を飛ばし砲撃と相殺させる。

船が接近すると、ダゴンの声が甲板に響き渡った。「船をつけろ! 乗り込め!」


甲板では激しい戦闘が繰り広げられていた。瑠璃は渦を操って敵兵を吹き飛ばし、碧は槍を手に次々と襲い来る魔王軍を斬り伏せる。第1階梯と第2階梯の敵が波のように押し寄せる中、仲間たちもそれぞれの武器を手に奮戦していた。「数が多いな」とアーロが息を切らしながら呟いた。


その時、琥珀の脳裏に少し前の記憶が蘇った。

仲間の一人が怪訝そうに小さな装置を手に持つ。「これは何だ?」

竜弥が得意げに答えた。「インカムだ。俺の能力で作った。これがあれば連携しながら戦える。」

ザスクが鼻を鳴らす。「俺はゴミが作ったものはつけねえよ。」

竜弥が目を鋭くして振り返る。「ああ? お前、俺に負けたくせに態度デカいな! それに任務に私情挟むなよ。そっちの方がよっぽどゴミだろ!」

「チッ」とザスクが舌打ちし、気まずい空気が流れた。


ドボン!

水しぶきが上がり、アーロが叫んだ。「城にいた奴が海に飛び込んだぞ!」

瑠璃が状況を冷静に分析する。「人魚の島は海底にある。あいつは封印の鍵を取りに行くつもりだ。」

アーロが即座に決断した。「海中なら俺が行く!」

ドボン! アーロが海面を蹴って潜り込んだ。


アーロは海中を滑るように進み、低く呟いた。「『ブルーウォーク』。」

船上では各人が鋭い視線で敵を見据える。「第3階梯と思しき敵が6体いる。各自、これを撃破するぞ!」

仲間たちが一斉に応えた。「了解!」



船尾近くの甲板


瑠璃と蟹の魔王軍が対峙する。


「オーロラ姫、俺から離れないで」と瑠璃が言い放つ。

蟹の魔王軍が距離を詰めてくる。


ダッ。瑠璃が一気に距離を詰める。

キィンキィン。刀とハサミが火花を散らす。

ザーッ。蟹が素早く距離を取る。


「渦竜!」瑠璃が技を繰り出す。

蟹はそれを避けつつ、再び距離を詰めてくる。


「クラブハンマー!」蟹の巨大なハサミが振り下ろされる。

「流竜!」瑠璃が刀で迎え撃つ。

キィン。金属音が響き渡る。


「バブルランチャー!」蟹が水泡の弾丸を放つ。

瑠璃は水の分身を生み出し、瞬時に背後に回り込む。

「流竜!」刀が唸りを上げる。

「刃折り!」蟹がハサミで刀をがっちり掴む。


だが、瑠璃は動じない。「漣!」

逆に蟹のハサミが切り裂かれ、鋭い音と共に砕ける。

「グァッ! ハァハァ……フン!」蟹が苦悶の声を上げるが、切られたハサミはみるみる再生する。


「ウォーターウィップ!」蟹が水の鞭を振り回す。

「波竜! 漣!」瑠璃が連続で技を叩き込む。

「グハッ! クソが! キャンサー!」蟹が叫びながら反撃する。


巨大な蟹を召喚する。

「大海・渦竜!」瑠璃が渦巻く水流を放ち、蟹を飲み込む。

「グァッ! ギャアアアアア!」蟹の絶叫が響き、動きが止まる。


瑠璃は刀を構えたまま呟く。「水のある場所で俺に刀を抜かせたのがお前の敗因だ。」



中央甲板


竜騎と海月の魔王軍が激突する。


「渦竜!」竜騎が氷を操る。

「水心!」海月が水の盾で受け流す。

「流竜!」竜騎が鋭い一撃を放つ。

「雷心!」海月が雷を纏った反撃を繰り出す。

「グァッ!」竜騎が一瞬怯む。

「毒穿!」海月が毒の針を飛ばす。


パリン。竜騎の身体が砕ける。

「氷の分身か?」海月の魔王軍が眉を寄せる。


「氷牙!」竜騎が冷気を放つ。

「水心!」海月が水で防御する。

グサ。竜騎の攻撃が水の盾ごと海月を貫く。

「ナッ!」海月が呻く。

「氷爪!」竜騎が追撃する。


パシャ。水でできた分身が散る。

「泡沫!」海月が泡を顔に被せ窒息させようとしてくる。

「ゴボッ!」竜騎が息を詰まらせる。

パキン。泡を凍らせ砕く。


「毒穿!」海月が再び毒を放つ。

「黒縄!」竜騎が剣で受ける。

「無駄だ。この刀は毒で溶けたりしない。氷尾!」竜騎が氷の尾で薙ぎ払う。


パシャ。また水分身が散る。

「またか。本体はどこだ?」竜騎が周囲を見渡す。

「滝穿!」海月が滝のような水流で襲う。

「氷竜頭!」竜騎が氷の龍で迎え撃つ。

パキパキパキン。氷と水がぶつかり合い、砕け散る。


「雷穿!」海月が雷を纏った一撃を放つ。

「グァッ!」竜騎が悲鳴を上げる。「海月はマストの近くか!」

「黒縄天弦氷月牙!」竜騎が連続技を繰り出す。

「大水心!」大きな水の盾で竜騎の攻撃を防ごうとする海月の魔王軍。

グサグサグサグサグサ。無数の氷柱が盾ごと海月を貫く。


「黒縄天弦氷月爪!」氷でできた竜が現れ、竜の爪が海月を襲う。

バタ。海月が倒れる。

「ハァハァ……」竜騎が息を整える。

「クソ。俺の技は燃費が悪いのが欠点だな」と苦笑し倒れる。



船首


碧と貝の魔王軍が対決する。


「シェルスピン!」貝が回転しながら突進する。

ドゴッ。碧が吹き飛ばされる。


「霧!」碧が辺り一面を霧で覆う。

「雷!」雷撃が霧の中を走る。

「キャッ!」貝が驚く。

「水穿槍!」碧が水の槍を突き出す。

「シェルパール!」貝が真珠を放ち、

爆発する。


「クッ!」碧が歯を食いしばる。

「シェルパールランチャー!」貝が連続で真珠を撃つ。

「雷槍!」碧が雷を落として応戦する。

ボガンボガンボガン。爆発が連鎖する。


「雷穿槍!」碧が一気に突きを繰り出す。

「シェルスピン!」貝が回転で弾き返す。


「水牙!」碧が水の牙で切り込む。

「シェルパール!」貝が再び真珠を放つ。

「水鞭!」碧が水の鞭で叩き落とす。

ボガン。爆発が再び響く。


「雷!」碧が雷撃を連発する。

バチバチバチバチバチ。雷が貝を包み込む。

「ギャアアアアア!」貝が絶叫し、倒れる。



船首


ザスクとエイの魔王軍が激しい戦いを繰り広げる。


キィンキィンキィン。剣と剣がぶつかり合う。

「毒穿剣!」エイの魔王軍が毒を纏った剣を振るう。

「円狩!」ザスクが三日月型の斬撃で応じる。

キィン。火花が散る。


ザスクが鎌を銃に換装する。「ぶっ飛べ! 狼炎!」

エイが船から飛び降りる。

「チッ、逃げたか」とザスクが舌打ちする。

だが、エイは船に槍を刺して身を隠し、船尾に復帰する。


「雷穿剣!」ザスクを雷を纏った剣で襲う。

「狼炎!」炎の弾丸が飛ぶ。

「毒穿剣!」毒の刃が再び迫る。

「その技はさっき見たぜ。纏・犲狼!」ザスクが素早く動き、蹴りで剣を弾く。

ザスクの蹴りがエイの顔面を捉え、口に銃を突っ込む。


「消し飛べ。狼炎!」

バタ。エイの魔王軍が消し飛ぶ。


「流石はザスクですね。第三階梯を瞬殺ですか」と声がする。

振り向くと碧が立っている。「何の用だ、コーンウィー支部皆殺しの碧。」

「いえ、別に用はないですよ。ただ、お互い紅林竜弥に負けた者同士、仲良くしようかと。」

プチン。ザスクの額に青筋が浮かぶ。

「俺の前でゴミの話をするな。消し飛ばすぞ。」

「彼は魔王を倒しますよ。なんせ僕を負かした男ですからね。」

「……魔王は俺が倒す。あのゴミじゃなくてな」とザスクが吐き捨てる。



中央甲板


琥珀と鮫の魔王軍が戦う。


「稲妻!」琥珀が雷を放つ。

「鋸鮫!」鮫が鋸のような刀で琥珀を迎え討つ。

キィン。火花が散る。


「紫電!」琥珀が素早い雷撃を繰り出す。

「槌鮫!」鮫が槌に切り替え、琥珀のハルバートを吹き飛ばす。

「しまっ!」琥珀が焦る。

「アクアジェット!」鮫が突進する。


バチバチ。琥珀が雷の分身で回避する。

「グアアア!」鮫が吼える。

「お前の負けだ」と琥珀が言い放つ。

「ニィ。暴食!」笑みを浮かべる鮫の魔王軍。


琥珀が球体の水に飲み込まれる。


「来い!」

琥珀がハルバートを呼び自身を覆う球体の水を斬ろうとする。

「蒼雷!」琥珀が水中で雷を放つ。

「無駄だ。水を切れると思うか? 何度でも元に戻るぞ。大槌鮫!」鮫が再び襲う。

「霹!」琥珀が白虎の爪を顕現させ反撃する。

「大鋸鮫!」鮫が鋸の牙で切り込む。

「靂!」琥珀が白虎の牙を顕現させ反撃する。


「雷光! 紫電蒼雷!」琥珀が連続技を繰り出し、雷が鮫を包む。

バチバチバチバチバチ。雷鳴が響き渡る。

バタッ。鮫が倒れる。

「俺たちは第三階梯に手こずってる暇はないんだよ」と琥珀が呟く。



船尾


竜弥とトドの魔王軍が対峙する。


「爆烈拳!」トドが拳を振り下ろす。

「牡丹!」竜弥が炎を纏った拳で迎え撃つ。

ドゴッ。竜弥が吹き飛ばされる。

『右腕が折れたな、こりゃ』と内心で呟く。

『馬鹿が。相手は第三階梯だぞ。今のお前なら油断しなければ倒せるが、油断して倒せるほど強くはない』とグレンが言う。

『ザスクを倒して天狗になってたかもな』


「蒼炎!」竜弥が青い炎を放ち、折れた腕が瞬時に治る。

「何!? 折れた腕が治っただと?」トドが驚く。

「こっからは本気で行くぞ」と竜弥が構える。

「鬼灯!」炎が竜弥の体を包む。

「肉体強化か。爆烈拳!」トドが再び拳を繰り出す。

「炎舞! 紅葉!」竜弥が舞うように拳を躱し、トドを背負い投げで投げる。

「なっ!?」トドが驚く。

「竜玉!」竜弥が渾身の一撃を叩き込む。

「グアアア!」トドが叫び、床をぶち抜いて船底まで落ちる。


「カハッ! 内臓がズタズタだ。なんて技だ」とトドが呻く。

だが勝つのは俺だ。


「絶対零度!」トドが氷の技を放つ。

「金木犀! 太陽神の力を行使してる俺に氷属性は効かねぇよ」と竜弥が跳ね返す。

「クッ。爆烈剣・双牙! これが俺の最高の技だ。消し飛べ!」トドが剣を振るう。

「煉獄! 炎月!」竜弥が剣ごとトドを切り裂く。

「何!? 剣ごと切られただと? なんて切れ味だ」とトドが絶句する。




甲板 


ヒュードゴッ。


アーロが甲板に飛ばされてくる。

「何!?」竜弥が驚く。

「水中で俺に勝とうなんて100年早いわ」とダゴンが言い放つ。



回想


「ブルーウォーク!」アーロが水中を移動する。

「ちっ、追ってきたか」とダゴンが舌打ちする。

「墨!」墨で視界を塞ぐ。

「目くらましか」とアーロが呟く。

「流鮫!」アーロが鮫の技で襲う。

「何!? なぜ居場所が分かった?」ダゴンが驚く。

「血の匂いだよ。お前から血の匂いがするからな」とアーロが答える。

「チッ。蛸足!」敵が蛸の足で攻撃する。

「鮫牙。」アーロが鮫の牙で応戦する。

「クラーケン!」ダゴンが巨大な蛸を召喚し、アーロを掴み船に投げる。


船に絡みつくクラーケン。


「!!!!!」

「船が!」

「クソ!」


「沈めえー!」ダゴンが叫ぶ。


「ハハハ! 海上で俺に勝てると思っていたのかぁ? フハハハハ!」ダゴンが哄笑する。



人魚の島


「ここは……?」竜弥が目を覚ます。

「気がつきましたか、紅き龍の御子よ」と声がする。

「ここは人魚の住む島、ルナ・アウリン島です。」

「!?」竜弥が驚く。

「オーロラに助けられましたね。彼女がいなければ助けていませんでしたよ。」

「人魚!?」


驚く竜騎。


「ここは人魚が住む島です。本来ならドーヴァー国の王族しか立ち寄れません。少し前の話ですが、人魚の血を飲めば不老不死になれるという言い伝えのせいで、人魚の乱獲が始まりました。それを止めたのが先代のドーヴァー国の国王です。それ以来、この島に立ち寄れるのは王族のみというルールと結界ができたのです。」

「そうだったのか」と竜弥が頷く。

「ええ。貴方達はオーロラの護衛という名目で特別に許可されています。」


「俺たち騎士団の任務は、あんた達から海流神の封印の鍵を受け取ることだ。いきなりで悪いが、鍵を渡してもらえないか? 魔王軍もその鍵を狙ってる。」

「いいでしょう。ただし条件があります。オーロラはクラーケンの呪いを受けています。クラーケンを殺し、その呪いを解くこと。それが条件です。」

「分かった」と竜弥が答える。


「出てこい! 結界で見えねぇが、海図で位置は分かってる。出てこい、騎士団! オーロラ!」

「人魚の加護で水中でも呼吸ができ、地上と同じ動きができるようにしました。魔王軍を倒してください」と人魚が告げる。

「任せろ」と竜弥が応じる。



最終戦


「籠城は終わりか?」ダゴンが現れる。

「お前は俺が倒す」と竜弥が構える。

「やってみろ。墨!」敵が墨を放つ。

「天照! 竜尾!」竜弥が感知能力を持つ炎で迎え撃つ。

「なぜ居場所が分かった?」敵が驚く。

「俺の天照は感知機能があるからな。」


竜弥がカトラスを蹴りで折る。

敵のダゴンが銃を撃つが、竜弥が全て受け止める。

「蛸足!」ダゴンが蛸の足で襲う。

「炎月!」竜弥が炎で切り裂く。

「ギャァ! クソ! 蛸壺! 八重桜!」ダゴンが分身を繰り出す。


ダゴン対琥珀


「蛸足!」

「霹!」雷が炸裂する。

「ギャァ! 毒突!」

「靂!」琥珀が勝利する。


対瑠璃


「蛸足!」

「漣!」水流が切り裂く。

「ギャァ!毒突!」

「大海渦竜!」瑠璃が圧倒する。


対アーロ


「蛸足!」

「鮫ヒレ!」

「毒突!」

「鮫牙!」アーロが制す。


対竜騎


「蛸足!」

「氷爪!」

「毒突!」

「氷牙!」竜騎が勝利。


対碧


「蛸足!」

「水穿槍!」

「毒突!」

「雷穿槍!」碧が勝つ。


対ザスク


「蛸足!」

「円狩!」

「毒突!」

「狼炎!」ザスクが圧勝。


対竜弥


「クラーケン!」巨大な蛸が再び現れる。

「竜舌蘭!」竜弥が強烈な一撃を放つ。


九つの頭を持つ炎の竜を召喚する。

「ギャアアアアア!」燃え盛るクラーケンの身体。


クラーケンが悲鳴を上げる。

「クラーケンが……!」

「竜玉!」竜弥がトドメを刺す。


「全員倒したか」と竜弥が息を整える。

『竜舌蘭……こいつ、どこまで強くなるんだ』とザスクが怒りを覚えた。



結末


「オーロラにかけられたクラーケンの呪いは解けましたか?」人魚が尋ねる。

「どうなんだろ。今までも呪われてたって知らなかったから」とオーロラが答える。

「ふむ。呪いは消えたようですね。では約束通り、海流神の封印の鍵を渡しましょう。翡翠はなんて言っているのですか?」

「それが、何も教えてもらってなくて」と竜弥が苦笑する。

「分かりました。紅き龍の御子よ、魔王を倒してください。」

「言われなくてもそのつもりだ」と竜弥が拳を握る。


竜弥と人魚姫が拳を合わせる。

物語は天空神の封印の鍵を巡る新たな章へと移る。

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