第3話

人間とゴブリンが戦っている。

「人間100人対ゴブリン100体といったところか。このままじゃ、カーフィリーは確実に陥落するぞ。」

グレン戦場を見渡しながら呟いた。ゴブリンの甲高い叫び声が響き合い、剣と槍が交錯する音が絶えない。

「それをさせないために来たんだろ!グレン、どうすればいい?」

焦りを隠せない声でグレンに問いかける。頭の中では、グレンの冷静な声が響いた。

『一振りで100の敵を薙ぎ払う技がある。だが、今のお前じゃ無理だ。』

「さっきから黙ってるけど、どうしたんだい?」

隣に立つ瑪瑙が怪訝そうに竜弥を見やる。

「グレンと話してるんだ。このゴブリンの群れを突破する方法をな。」

竜弥がそう答えた瞬間、頭の中でグレンの声が響いた。

『ワシと代われ。前回は口出しせんと言ったが、今後の参考に見せてやる。天翔龍閃だ。』

スゥー。

グレンが竜弥の体を依代にする。


「煉獄。天翔龍閃!」

一振り。

剣が空を切り裂き、鋭い風が戦場を駆け抜ける。ゴブリンの群れが一瞬にして、地面に転がる無数の屍となった。


「ザッとこんなもんだな。」

「ゴブリンだけを攻撃したのか?」

「ワシのレベルになると、任意の敵だけを狙って攻撃することもできる。お前もいずれこうなる。」


「騎士団が加勢に来て、ゴブリンの群れを一掃したぞ!カーフィリー城に攻め込んで王を救出だー!おおー!」


士気が上がる兵士達。


「俺らも行くぞ。」

「ああ。」


城を目指そうとした俺と瑪瑙の前に女性が現れた。


「ハァハァ……あなたたちが騎士団ね。お願い、私の父――この国の王を助けて!」

「王様?」

「行かせるかよ!」


突然、砂の中からサソリの尻尾が襲いかかってきたが、俺は素早く避けた。


「ククク、王女様よぉ。どうやって檻から逃げ出したんだぁ?」

「私だって精霊使いの端くれよ。あの程度の檻とゴブリンなら、障害にもならないわ。」

「こりゃ参ったな。精霊使いが3人か。」

「竜弥、そこの王女を連れて城へ行け。こいつは私が引き受ける。」

「お前、ランクは?」


瑪瑙に問う蠍の魔物。

「Aランクよ。」

「ちっ、めんどくせぇ相手が来たな。」




城内に入る

「王様はどこだ?」

「父はこっちよ!」


城内のゴブリンを次々と倒しながら進む。


「ここよ!」

「なんだ、てめぇは?」

「騎士団の紅林竜弥だ。」

「ククク。俺は第3階梯のコブラだ。俺を倒してカーフィリーを守ってみな。」

「そのつもりだ。王女様は下がって。こいつは俺が倒す――4の型、竜尾!」


コブラに後ろに回り込み後ろ回し蹴りを喰らわす。

『速いっ!』

「牡丹!」


炎を纏った拳で殴りかかる。

「クッ!」


回し蹴りとパンチを喰らい呻き声を上げるコブラ。

「竜頭!」


ゼロ距離からコブラに竜頭を喰らわす。

「グオッ! ハァハァ……こいつ、強いな。」






瑪瑙とスコーピオンの戦い


「シュヴァンツ!」


「矛!」


キィン!


蠍の尻尾と切り結ぶ瑪瑙。


「木!」

「何!? 砂の中から木が生えてきただと!?」


瑪瑙が生やした木がスコーピオンに巻き付き、締め上げてくる。


「矛!」


スコーピオンに矛で斬りかかる瑪瑙。

「ギフト!」


スコーピオンが毒液を飛ばしてきた。


「木分身!」

「何!?」


木でてきた分身で毒を躱わす。

「締め付けろ!」

「グゥッ!」


呻くスコーピオン。

「矛!」


グサッ!


矛でスコーピオンを刺す。


「クゥッ! シェーレ!」

「双矛!」


スコーピオンの両腕の鋏を両手の矛で迎え討つ。


キィン!


「シュコルピオーン!」


巨大な蠍を召喚し向かってくるスコーピオン。

「盾! 枝槍!」


スコーピオンの鋏を盾で受ける瑪瑙。


鋭い枝が無数に飛んできて、スコーピオンを襲う。


「咲け!」

「グハッ!」


枝がスコーピオンの体を串刺しにし、動きが止まった。





城内


「竜胆!」


コブラが素早く身をかわす。


「鳳仙花!」


これも軽やかに避けられる。


「シュヴァンツ!」


尻尾で攻撃してくるコブラ。

「竜牙!」


牙を手に纏い防ぐ。

「ギフト!」

「焔!」


コブラが毒を飛ばしてくるが、炎でできた分身で躱わす。

「竜爪!」

「グァッ!」

「7の舞 不知火!」


炎でできた槍でコブラを刺す。

「グァー! クッ……!」

「Xバーナー!」

「ギャアアアアア!」


コブラが倒れ、息を切らしながら周囲を見回す。


「ハァハァ……王様、大丈夫か!?」


竜弥が言った。

「パパ!」

「おお、ありがとう、騎士団の若いの。これでカーフィリーは――グハッ!」

「何!?」

「パパー!」


王の腹から血が噴き出し、腹を剣が突き破っていた。


「私の名前はジャッカル。第3階梯だ。どうやら王は地爆神の封印の鍵を体内に隠していたようだな。」

『こいつ、さっきの蛇野郎より強い……!』

「目的は達した。無益な戦いはしない主義でな。さようなら、騎士団の少年よ。」


ジャッカルが煙玉を投げ、姿を消そうとする。


「逃すかよ! 天照!」


キィィーン!


「何!?」

「この炎の円の中は俺の感知範囲だ。逃がさねぇよ!」

「くっ!」


俺はジャッカルの腕を掴み、引き寄せる。頭にグレンの持つ刀が浮かんだ。


「煉獄!」


スパッ!


斬られるジャッカル


「クハッ!」 『このガキが……!』

「鳴牙!」


ジャッカルは剣で攻撃してくるが煉獄で防ぐ。


キィン!


「木!」


瑪瑙が姿を現し、地面から木を生やしてジャッカルを拘束する。

「クッ!」


「炎月!」

「グァッ!」


剣に炎を纏いジャッカルを両断する。


バタッ。ジャッカルが倒れ、動かなくなった。


「ウォオオオオオオオオ! やったぞぉ! 騎士団の2人が魔物を倒したぞおおおおおおおお!」

「蒼炎!」


王の傷に青い炎を当てると、傷口がみるみる塞がっていく。

『頼む、間に合ってくれ……!』


「う、うん……ワシはどうなったんじゃ?」

「ウォオオオオオオオオ! 王様が目覚めたぞおー!」

「良かった、間に合った……。」

「魔王軍はどうなったんじゃ?」

「騎士団の2人が倒したのよ、パパ。」


王と王女が抱き合う。

こうして、カーフィリーの戦いは幕を閉じた。




翌日。

「これが地爆神封印の鍵じゃ。魔王軍には渡さないでくれ。」

「ああ、安心してくれよ、王様。魔王は俺が倒す。」

「ふぉふぉふぉ、それは楽しみだわい。」


拳を合わせる2人。

その様子を、瑪瑙とローズが見つめていた。

物語は騎士団の新たな抗争へと移っていく。

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