第3話
いつも気丈に振る舞う彩が泣いている。
何かが彩の身に起こったんだ。
幸い彩の家は此処から歩いて5分位の場所だ。
僕はキャップのツバでおでこを隠し小走りで彩の家に向かう。
途中、3人程すれ違ったがその3人とも僕と同じ様におでこを隠している。
そして4人目とすれ違った時、僕は違和感を覚えた。
その人は堂々とおでこを出していたがソコには華の文字が書かれている。
「あの人、額に文字が書いてある」
自分の事を棚に上げてボソリと呟いてしまった。
僕の声が聴き取れたのかすれ違いざま、その人にキッと睨まれた。
僕は慌てて逃げる様にその場を立ち去る。
通常で無い何かが起きている事を感じたが一体何が起きているのか僕には理解出来なかった。
だが今は彩の事が心配だ。
疑問を一旦胸にしまい彩の家へと急いだ。
「彩どうした? 何があったんだ?」
彩の家に到着し僕はインターホン越しに彩の様子を伺う。
「翔、来てくれたんだね。今そっちに行くから待ってて」
彩はしゃくりあげてたさっきまでとは違って少し落ち着いた様子に思えた。
彩は周りを気にしながら少しだけ扉を開くと僕の腕を掴んで内に引張り込んだ。
僕は少しよろけて彩に抱きつきそうになった。
「ねえ私… 変でしょう?」
「あっ、涙の跡?」
さっきまで泣いていから彩の頬にはクッキリ跡がついている。
「違う、ほら」
彩は手で前髪を上げて僕におでこを見せた。
ソコにはなんと肉の文字が刻まれている。
「キン肉マンみたいだね」
僕は言葉に出そうになるのをぐっと堪えた。
『その現象は彩だけじゃない』
と彩に少しでも安心してもらおうと思い、僕はキャップを取り自分のおでこを彩に見せる。
「彩だけじゃないんだよ。街中の人がこうなっているみたいなんだ。だから心配しなくていいんだよ」
僕が彩の事を気づかって言葉をかけたら…
彩はゲラゲラ笑い出した。
「写ってなんだよ? しゃらくせーのシャ? 翔は写楽かよ?」
さっきまでコイツ泣いていたのに…
なんだかバカバカしくなってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます