君は誰かの為に要らない子?
「はぁ・・・」
夕焼け色に染まった公園のベンチに一人。
はしゃぐ子供達が似つかわしく、項垂れる自分が居る場所ではないだろう。
(仕様も無いことで怒ってしまった)
発端は友達との喧嘩だ。
本当に大した事では無い。
しかし、ヒートアップしてしまい、両者共に口論。
心ない言葉も吐いてしまった。
反省。後悔。
しかし今更である。
(怒りなんてものがあるから・・・)
気なしに足の先で地面をぐりぐりと削り穴を掘る。
そんな中、彼の内側では・・・。
「ははは!おい!凄い所に矛先が行ったぞ!!気をつけろ怒!」
「はぁ!?気をつけろってなんだよ。クソッ、まじで。自分の理性が弱いだけだろうが!」
「自己主張の結果だねぇ。気に食わないっていう、嫌だっていう自分の意見の主張」
「それを否定するってお前自分がねえのかよ!それすら否定するのかよ!!」
随分と荒れていた。
そんなことはつゆ知らず、彼は怒りを攻め反省をし続けた。
マジで要らない感情だよな、怒りって・・・・。
他人の行動馬鹿にして、文句言って、気に食わないって否定して・・・。
人それぞれなんて自分で言っておきながら・・・自分が正論だからと人を思い通りに動かそうなんて傲慢ばかりだ。
本当・・・何の為にあるんだろうか・・・。
不快感は与えるわ、傷つけてしまうわ、自分も疲れるわ、身体にも悪いわで・・・さぁ。
怒りなんてモノは結局自分を苦しめているのではないだろうか。
自分は器が小さいのだろう。
だから短気で。
許すことも出来ない、寛容であれない・・・。
小さいなぁ・・・。
本当に要らないよ・・・怒りなんて・・・。
消そう・・・怒りを。
その裏では・・・。
「ちょ、まっ!!」
「俺を止めるなッ!俺は出て行く!表現してやってんのに!なんて野郎だ!使い方が馬鹿なだけだろ!!自分を見つめて、落ち込むだけ落ち込んで、直しもしないで、行動しない奴に俺は要らねぇ!!」
感情が一つ出て行って大騒ぎ。
少し離れた場所で様子を伺っているのは内緒の話だ。
(おや・・・?)
なんだか気持ちが軽くなった気がする。
何かに気付けたからだろうか・・・。
彼は地面に開けた穴を埋めて、ベンチから立ち上がった。
子供はもう夜ご飯の時間だ。
それから自分は怒りに頭を悩ませる事は無くなった。
誰かの愚痴を聞いたとしても、小言を言われたとしても「そうだね」と寛容に受け取れる人間になった。
価値観への熱量が冷め、我を出す事がほとんど無くなった。
良いことなのだ。良いことなのだけれど。
興味という点で一言。
つまらない人生だ。
自分の思い通りになる事は無い。周りの主張を遵守するから。
それは別に自分の願った事だ。そこまでが自分の価値観。だから文句は無い。
自分の価値観はそこまで重要では無い。
しかし、何故だ。知らないうちにストレスが溜まっているのは。
凄く疲れるようになってしまった。
家に帰って眠る。そんな人生だ。
何事にも興味が薄れて、自分の行動力が薄れていく・・・。
熱が冷める。
・・・自分に対して甘く。奮起が出来、ない?
気付いた。
一年後。
また戻ってきてしまった、この公園に。
誰かと何かがあったわけじゃ無い。
空を見てベンチに身体を預けて脱力する。
怠けている自分。動けない自分を見て・・・。
情けなくなった。
嫌なのに。
何故・・・。
身体を動かそうとしないのか・・・。
「しゃんとしろ」と、誰も・・・自分すらも言わない、思えない。
理性が・・・楽という本能に食われている。
辛い、辛いぞ。
誰、誰か・・・。
いや、自分。自分だ!
しっかりしろ!動け!!
そう言え!自分にそう言え!!
情けない自分を叱れ!自分が。
自分に怒れッ!!!!!!!!!
「ったく・・・」
自分の不甲斐なさに奮起という熱をくれるのは、裏に潜んで様子を伺っていた怒りという感情だった。
「言ってんだろうが。どんだけ自分の情けない部分を反省したって、出来ない部分を認めたって、行動しなきゃ変わんねえんだって。熱量持って自分の尻叩いて、自分の嫌な部分に叱咤して次に進むんだろうが」
そうか・・・。
誰かに向けるの為では無く。
呆け怠け、甘えた自分に喝を入れる為
ある種自分の成長の為
嫌な自分を律する為に
自分自身の為に『怒り』があるんだ。
「うしっ・・・」
姿勢を正し、太ももに手を置いて踏ん張った。
そしてからベンチから立ち上がる。
自分が悪かった。
謝ろう。
今更、時効ではある。
友達とも仲は戻ったし。
でも、蟠りがある。
自分が変わる為に、反省して謝ろう。
謝るだけ。それだけ。
また同じ時が来ても同じ結果にならない行動で。
感情って、他人に自分の気持ちを表す一つだったり、自分の気持ちを整理したり、把握するものだと思っていたけれど・・・。
怒りはとても不思議な感情だなぁ。
いや、別段。怒りだけではない。
自分自身に対して表す気持ち。
自分に対しての喜びは賞賛、楽は安寧、哀しみは孤高(?)や感動(?)、怒りは自戒。
・・・なんてさ。
これもまた一種の表現だけど。
自分の為にだってあるべきものなのかもなぁ。
って。
ああ、そうだ。
忘れてた。
「おかえり」
そう誰かに言いたかったんだった。
「ったく、手間がかかる!」
「でもそれが成長だろうね」
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