何故。今がここであり、過去でも未来でもないのか

カッと目を開くとそこは宇宙だった。


床に流れる銀河。星屑が自分を見下ろしている。


自分はどこに足を着いているのだろうかと足下を見ると、土で出来た一本の道が自分の行く道を示していた。


両脇には、住宅が並び、街頭が自分を照らす。

周囲を見渡しながらゆったり歩いていると、平坦な土の道がだんだん勾配の厳しい坂に変わっていく。


まるで登山の様だ。


体感結構歩いて、息も上がってきた頃、坂の終わりに誰かが星を見上げ立っていた。


「あのぉ・・・」


声を掛けるとこちらに振り向く・・・髪がとんでもなく長いな。


下を除いても毛先が見えない程に長い。


「「ここはどこですか?」」


目が合った時、同じ声音で言葉が被った。


「君がそう思うのなら私もそう言おう」


「?」


なんだこいつは。


「何かを知っているのですか?」


「何を知りたいのだ?」


「何故、自分が今ここにいるのか教えてください」


「何故そんな事を知りたいんだ?」


「え・・・?えーと」


確かに何でそんな事。ここがどこだって良いじゃないか。


いや、ここがどこだって良い。けれど・・・。

何故。


「何故わざわざこの場所なんだ・・・」


「というと?」


「今がここである必要性が・・・。今がここじゃなくたって別に良いはz・・・」


ず?


良い筈だと言い切るタイミングで、目の前にいる長い髪の誰かはいなくなっていた。


土の道は消え、山頂だったその場所は極一般家庭の一軒家。しかも、カラフルに彩られた子供の部屋に自分は居た。


「今ってどこなんだろうか・・・」


一人ぽつりと呟いた。


「わざわざこのタイミング。この時期。この場所」


窓に手を当て、外を覗く。


「今が過去でも・・・」


窓が割れ、家が砕け、地面は灰色、月の様なクレーターが出来ていた。


目の前には、宇宙服を着た別の誰かが立っている。


「今が未来でも・・・」


クレーターは崩壊し、電気が太陽を象っている。


髪の長い和装の誰かが項垂れている。


自分というのは一体どこにあるのか、誰なのか。


項垂れたまま、ドロドロとスライムのように溶けていく。


・・・分からなくなる。


太陽までもが溶けていく。


「自分自身は・・・一体誰なんだ」


そうして何も無くなった場所には、眼鏡を欠けたパジャマ姿の誰かが現れた。


一番身近に感じるその姿。これは一体・・・。

意識した。


意識して、考えた。


「これは夢?」


どこか戻ってきた様な、戻りきれない様な。


「夢だと?夢じゃない。妄想だ」


似たようなものでは?


「どこまでを妄想とするのかは自分次第ではあるが。どこまでを今と呼ぶかと言う話でもあるかもな」


「と・・・言うと?」


「未来だって過去だって何だって今に集約しても別に良いだろって」


「過去も未来も今にあるって事?」


「まあ、そうとも捉えられるわな。過去が今だって、未来が今だって可笑しくないって思う。時間は流れてんだから今というその状況が今である確証は無いんだ。だから、どこまでを今とするか。今日を今とするのか、一週間を今とするのか。一時間を今とするのか・・・。その今の中に過去だって未来だって入っているだろう?だからなんで今?なんて言葉が出てくるのでは無いか?」


「一理ある様な、無いような・・・なんか違うな・・・」


「今という形を限定的に見過ぎているな。仕方の無いことだとも思う。映された一つの景色は・・・まあ自分が見ている世界だけれど。今とはある種見ている景色を指す。見ているモノを今としていると言った方が分かり易いか。だから、それ以外のモノも今と捉えない。ないしは、今を判断するのに必要ないとしているから不思議な感覚に陥る可能性はある」


見ている全てを以て為て今とする・・・。

ある種どこにでも居るって事なのか。


いや・・・じゃあ。


今の判断って・・・要らない?


「だからどこまでを今とするのか。現時点で過去でも未来でも何でも見えたら、それは今と呼べるかもしれないから・・・。まさか、時間って概念って無い?」


「どうだろうね。どの世界でによるかもね。時間という概念はある。それは、物事の順序を示すもの」


「その言い方だとまるで物事が起こる順番が決まっている様な・・・そんなことある?」


「時は流れだ。流れは誰が造っている?素粒子だ。素粒子は何だ。全てを形容するモノ。この時点が下流なのか上流なのか、流れの終点も始まりの地点も分からないだろう?じゃあ先に流れている波が決まっていてもなんら不思議では無い筈だ」


「でも想定とは違うモノが」


「流れのターニングポイント。自分達の選択という分岐点はあるのだろうな。決まった未来が一つだけとは限らない。そう言う結果だ」


「で、結局、なんで今自分はここに居るんだ」


「ここに居るんじゃ無く、素粒子の流れを追って見ているだけかもな」


「その場所を捉えているからそこに居るように感じるだけ・・・」


「まあ、君が流れに流されている。素粒子の集合体を持っているからこその疑問ではあるかも。まあそこを見る事に意味があるのかもしれないな。そして、その時点で選択が出来るのは贅沢な事だ。意思を持ち疑問を持ち、考えられる。それこそ今だからこそなのかも。いや、今しかないのかも」


「ふうん・・・・」


まあ誰かが色々語ってくれたけれど、つまりは自分の意思で今この場所を見ているのだろうな。


「この場を意識してその場を見る誰かが複数いるという事がどれだけの奇跡か。同じモノを見て同じd・・・」


・・・。


あれ?


なんだっけ?


今どこだ、ここ・・・。


暗い。


目を瞑っているからか。


・・・なんだこの天井。


目を開いても・・・な、なんだっけ?


「ここどこ・・・自分ってなんだっけ・・・?あ、あー。」


あーっと、夕方?


寝ちゃってたなぁ・・・。


なんか、すっきりしない夢を見た気がする。


なんだったっけ?


「何にもわっかんねぇ・・・」

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