第12話 最後の放送
校舎の屋上から見下ろすグラウンドは、夕日に染まっていた。
今日は卒業式の前日。
いつも賑やかな校舎も、今は静けさに包まれている。
放送室の扉を開くと、そこにはマイクと、見慣れた機材が並んでいた。
この場所で、何度も放送を流した。
体育祭、文化祭、試験前の応援メッセージ——
そして今日。
これが、最後の放送になる。
スイッチを入れると、ヘッドフォン越しにノイズが微かに響いた。
時計の針が午後六時を指す。
「——みんな、聞こえてる?」
静寂を破る、自分の声。
もう、校内にはほとんど人はいない。
でも、きっと、誰かが聞いてくれている。
「卒業式を迎えるみんなへ。放送部から、最後のメッセージを届けます」
言葉を選びながら、一つずつ気持ちを込めて話す。
「楽しかった日も、辛かった日もあったと思う。でも、今日という日までみんな頑張ってきたよね」
グラウンドを見下ろすと、後輩たちが帰り支度をしていた。
手を振ると、小さく振り返してくれる。
「これでお別れ、なんて言わない。どこかでまた会えるから」
そして——
「最後に、この曲を届けます」
流し始めたのは、在校生との思い出の曲。
スピーカーから流れるメロディーが、静かな校舎に響いた。
涙がこぼれそうになる。
でも、マイクを握る手に力を込める。
「それじゃあ、またいつか。放送部より——」
最後の放送。
言葉を届け終えた瞬間、ノイズが消えた。
静寂が戻る。
マイクを外し、深呼吸をした。
放送室を出ると、夕焼けの中で、誰かが遠く手を振っていた。
俺は、大きく手を振り返した。
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