第5話 星に願いを

 夜空に広がる無数の星々が、まるで世界を包み込むように瞬いていた。


 山の上の展望台に、一人立つ。


 吹き抜ける風が頬を撫でる中、俺は静かに息を吸い込んだ。


 ——あの日、俺はここで願った。


「絶対に、宇宙飛行士になる」


 まだ幼かった俺は、夜空を見上げながら、流れ星にそう誓った。


 父がプレゼントしてくれた天体望遠鏡で、夢中になって星を追いかけた。


 そのたびに、俺の心は宇宙へと飛んでいった。


 だけど、現実はそう甘くない。


 何度も試験に落ちた。


 努力しても、報われないことの方が多かった。


 悔しさに涙した日もある。


 それでも——。


 あの日の俺に、恥じたくなかった。


 流れ星に誓った自分を、裏切りたくなかった。


 だから、諦めなかった。


 ——そして、今。


 俺は、一通の通知書を握りしめていた。


 「宇宙飛行士候補生、合格通知」


 震える手で、それをもう一度見つめる。


 夢が叶う瞬間。


 でも、不思議と実感が湧かない。


 夜空を見上げる。


 そのとき。


 ——スッと、一筋の流れ星が駆け抜けた。


 まるで、10年前の自分に「よくやった」と言ってくれるかのように。


「……ありがとう」


 俺は、そっと呟いた。


 星に願った夢は——


 今、現実になる。

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