第3話 変身に必要な条件
1
黒島は、異形の男と対峙している。
河合は黒島を見守るしかない。
男は両手を広げて構えている。
防御を捨てた構えであることは、空手をやっている黒島にわかることだ。
一方こちらは防御を考えなければならない。
男は黒島に向かって、口から液体を吐いた。
黒島はそれを躱す。
躱した先にある大きめの石にそれがかかった。
すると、その石は、徐々に溶け出した。
これが皮膚にかかったらと思うと、黒島は恐ろしくなった。
黒島は中段蹴りを放った。
男の身長と黒島の身長は2㎝ほどしか変わらなかった。
どちらも160cm前後である。
間合いも変わらない。
変わるのは男は異形の存在であるということだ。
こんなものと戦ったことがあるわけがない。
男は黒島につかみかかろうとした、体に触れたくない黒島はそれを躱し、顎に蹴りを放った。
やぶさかであるが、男の服を掴み、そのまま下にたたきつけ、顔面を踏みつけた。
しかし、男は血を流しながら喜んでいるだけだ。
獣のようなうめき声をあげ、起き上がった。
その辺に武器になりそうなものは転がっているが、武器を使うことは格闘家の名に恥じる。
なので、それはできなかった。
ましてや、相手は不審者とはいえ、格闘技の素人なのだ。
軽くいなすことなど造作もないはずであった。
男は黒島に大ぶりのパンチを放った。
不規則な動きの殴りであった。
しかし、それを黒島は喰らってしまった。
相手が素人だと思って油断していたのだ。
黒島の体は数メートル飛んだ。そして、その場にへたり込んだ。
男は、黒島を追いかけ、蹴りを放った。
しかも、今度はでたらめな動きではなく、勢いがあり、早い中段蹴りであった。
起き上がった黒島に更に蹴りを放った。
重い一撃だった。
組み手で何度も男子の蹴りを喰らっているはずだった。
並の男の蹴りなら耐えれると思っていたが、実際に自分は、倒れこもうとしていたのだ。
男は黒島の背中に向かって、両手を組み、その手を叩きこんだ。
黒島はうつぶせに倒れた。
男は黒島を、サンドバックのように、何度も蹴った。
黒島は体を丸くして身を守るしかない。
しばらくすると、黒島は動かなくなった。
河合は男から逃げなかった。
他の者は、異形の男を見るや一目散に逃げた。
「純奈....にげて...」
か細い声で、黒島は叫ぶも、河合には届かなかった。
「イヤリング返して...」
男は河合の元に走った。
「助けて!!」
河合は叫んだ。
すると、河合の背後から円盤が投げられた。
金属製の円盤だ。
それが男の顔にめり込んだ。
「だ....だれ....」
そこに現れたのは、スーツを着こなし、髪はぼさぼさ、丸いメガネをかけた、長身の男だった。
「円盤投げ。中学生以来ですねえ。」
中元碧清である。
男から中元までの距離は50mを優に超えていた。
「また、会いましたねえ、河合さん。」
中元は呑気に河合に話しかけていた。
「いやあ、僕非常勤講師なんでね。たまたま帰り道が被っただけっていうか..」
何やら言い訳をしていたが、河合は黙って、イヤリングを中元に渡した。
中元は頭をかいた。
そして、渡された、イヤリングを耳にセットする。
すると、中元の体が黄金に輝いた。
そして、その光が収まると、姿が変わり、メカリックな姿になっていた。
「お前は....適合...」
そういう前に、中元は男の顔面を殴った。
男は顔から血を流していた。
中元は右手を前に出し呪文を唱えた。
すると、口径10mmほどの太さの短筒が出てきた。
中元は、 それを、男に向けて撃った。
男の肩に命中する。
それを撃つとその短筒は消えた。
今度は手を天に向けて呪文を唱えると、刀が出てきた。
中元は鞘から、刀身をあらわにした。
中元は男を斬った。
横腹に一筋。
そこから血が出たのだ。
男は出血しているところを手で押さえた。
その抑えているところを、肘で、打ち付けた。
男は、地面を転がった。
そして、仰向けに倒れているところを、中元は顔面で踏んだのだ。
すると、男は砂になって消えた。
2
男を倒した中元は、河合にイヤリングを返した。
ボロボロの黒島は、中元に尋ねた。
「あなた、何者?」
「僕は、社会科教師の中元ですが?」
「それは、知ってるよ!!さっき変身してたでしょ!あの男もあなたも。もしかして、仲間なの?あいつの?」
「さあ?僕には分かりません。僕が興味あるのは、歴史だけです。このゴールデンイヤリングの。」
「何で、それを、持ってると変身できるの?というか、純奈もこのこと知ってたの?今までずっと隠してきたの?」
「知らなかった。今日までそんなことなかったし。」
中元は、掃除の時間に河合に会ったことを、黒島に告げた。
「そうだったの....でも、純奈のイヤリングが何で狙われているのか、それを先生は探ってるの?」
「まあ、この学校に着任したのが、今年でした。理由は、ゴールデンイヤリングがあることが去年分かったからです。場所は特定できましたが、誰が持っているかまでは分からなかった。そんな中、異形の存在を感じ取ったのです。階段に来てみれば、異形の存在がいるではないですか....なので、彼女を退治したというわけです。」
「じゃあ、あなたも...」
「まあ、ゴールデンイヤリングの存在は、分かったので結構です。私が知りたいのは、ゴールデンイヤリングの歴史と、なぜ、私がそれを使って変身できるかということです。」
「なるほど....でも、純奈はそれはおばあちゃんの形見だから手放したくないんだよね。」
「うん...」
黒島は言った。
「じゃあ、今まで通り、イヤリングを狙う変や奴を私が倒せばいいってことか...」
「そうなりますね。」
中元も頷く。
「いやいや、あんな怪物どうしろってのよ!!どうやったら、あんたみたいに変身できるの?」
「それを今調べているところです。」
何で今になって、怪物が現れたのか...
謎が深まるばかりであった。
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