略奪の果てに
- ★★★ Excellent!!!
辞書を編纂する時、改訂する際には、新しく追加される言葉もあれば、時代に即して削られ、消される言葉もあるそうです。
日本の四季が年々欠けてしまったかのように、夏と冬の猛威が厳しく、いったい春と秋は何処へいってしまったのでしょうね……
きっと、主人公の辞書には、かつて、季節感に沿った折々の言葉が無数に鏤められていたはず。
主に、茹であげられそうな酷暑は、外気温のもたらす情緒を根こそぎ奪っていきました。
なんだか、とても短い本文を見ていると、ほんの数十度の合間でしか快適に生きられない人間について、考えてみたくなったり……ならなかったり。するような。しないような。