略奪の果てに

 辞書を編纂する時、改訂する際には、新しく追加される言葉もあれば、時代に即して削られ、消される言葉もあるそうです。

 日本の四季が年々欠けてしまったかのように、夏と冬の猛威が厳しく、いったい春と秋は何処へいってしまったのでしょうね……

 きっと、主人公の辞書には、かつて、季節感に沿った折々の言葉が無数に鏤められていたはず。

 主に、茹であげられそうな酷暑は、外気温のもたらす情緒を根こそぎ奪っていきました。
 なんだか、とても短い本文を見ていると、ほんの数十度の合間でしか快適に生きられない人間について、考えてみたくなったり……ならなかったり。するような。しないような。

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