トリックスターの本懐(4)

 流れっぱなしにしてあるフェアリーステップの被害情報のひとつ、市外の映像にパジャッソの目が止まった。

「ハルカ!? まさか!」

 パジャッソは自分が構築中のリストラクテッド・ペルソナを確認した。

 彼のハルカはまだ手元に居る。

 ではあれは何だ? 見間違えでないか?

 市外映像と同じ方向を見ると、確かにパジャッソの目にも巨大なハルカの姿が映る。

 あまりしないことだが、片目だけ角膜ディスプレをシャットアウトする。

 崩壊しつつあるEnScapeのバグかもしれない。

 その確認の為に手始めにリアルと見比べるのだ。

 しかし視界のハルカは消えない。ライフのままでも見えている。

「パジャッソ!? なにか知ってるの?」

 EnScape側のパジャッソの耳に、ムルシエラゴの声が聞こえる。

 通常の通信手順ではないが、なにかあるのだろう。

「そっちからも見えてるのか?」

「見えてるかって? でかい糞ガキがピラピラしたスカート穿いて立ってるよ! あいつはなんなんだい!」

「ハルカはゲームのキャラだ」

「はぁ? アホかよ! ゲームなんかどうでもいいんだよ! 何が起きてる?」

「わからん……。ゲームのキャラが肉視できるわけないんだが」

「あんなデカい人間だって居るわけないんだよ! 兵器ならスカートなんて穿いてないだろ! バカか!」

 ムルシエラゴがしきりに毒づくが、仕方ないと思える。わけがわからない。

「攻撃中止だ。調べてやり直す」

「嫌だね! このあたしが、バカにされたままで終われるわけないんだよ!」

「死ぬぞ」

「うっさいね。お前が死ね!」

「おい!」

「……」

 捨て台詞を残してムルシエラゴの声が消えた。

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