兎と桜と狼と──満月の約束──
華周夏
山神さまの眷属
これ以上飢えたら、渇えたら、自分の理性は本能に負けてしまうのだろうか。所詮は動物だと自分のことを嘲りながら、泣きながら、理性を本能に明け渡し、君のふわふわした白い柔らかな毛の下の首の肉に、卑しい牙を剥き出しにして齧り付き、君を屠り喰らうのだろうか。
君によって気づかされた、自分は山の神さまの眷属だという、毅然と群れを率いる誇り高い白色の狼としての自分は、昔のようなうらぶれた、餌を求めるただの狼に成り下がるのだろうか。そんなことを思いながら………自らの狂暴の恐怖で震えながらも、空腹に、栄養も足りず寒さに震える白い兎の君を、私はさも自分も寒いかのように君に優しい、励ましの言葉をかけながら君の冷えた身体を固い白い毛の生え揃った懐で暖める。
君は、私の名前─白霜さま─と、弱々しく私にしがみついて震えながら、譫言のように私を呼ぶ。君のふわふわの毛は、体温が下がってしっとりとねてしまっている
──餌には申し分ない。
そう何かが頭の中で囁いた。私は発狂したように、君を置き去りにしその場を立ち上去り、雄叫びをあげた。洞窟を出て、叫ぶように吼えた。外は雨だ。濡れたら体温が下がる。白い毛が乾くまでには時間がかかる。栄養が足りず、衰弱しきっている私にとって、愚かな行為とは解っている。よろよろしながら、私は何故吼えているのだろう。何を吐き出しているのだろう。解っているのだ。そんなこと。
君は解っているのだろう?喉が千切れそうなほど、雨に打たれながら雄叫びのような遠吠えをする私の心の内を。
さっきの脳裏を掠めた声は、私の自分の生きようとする本能をまざまざと見せつけた気がした。つらくて、たまらない。君を愛しているのに、それでも、本能に生きる私は彼女を見て餌と穢く心の中で舌舐めずりをした。死んでしまいたかった。私は地べたに這いつくばり泣いた。
……………………………………………………………
『生きることへの執着』と『本能』は、表と裏。だから私は、千切れるように切なかった。何かきっかけがあったらなら私は簡単に、赤く色づいた楓が風を受けるように簡単に裏返る。『本能』を剥き出しにして、君の喉を喰いちぎる。
これ以上なく、理性を欲しているのに。君と生きたいのに、付き纏う、いや待ち構えるような不幸な結末が浮かぶ。昔、放蕩を重ねた、罰か?山の神様が私に一番残酷な罰を下しているのだろうか?
華と幸せになって、おばあさんになった彼女を最後まで見守って、逝った彼女を花一杯にして埋めてあげて、それから独り、崖から翔ぶ。君を追いかけ、空を飛んで会いに行きたい。それが、私の夢だ。
彼女と、生きること。私の幸せに、欠かせない彼女。………消えてしまえばいい、醜い本能など消えてしまえばいい。なのに、私は、いとしいと思った君を『餌』と見た。穢い『けだもの』だ。
所詮、山の神様の眷属の白狼だと言えど、狼の性根を持つ私は、君とは一緒にいることは許されない。君を手にかける前に、消えてしまうべきなんだと思う。
自分の心の中に潜む狼の本性の、獣の本性の卑しさが、君を犠牲にして、小さな君の身体を喰い散らかしても、そう長く生きることはできない、僅かしかない生にしがみつく浅ましさが私は憎い。
憎いのだよ、華。春の花のように、可憐でやさしい、かたちをした華は洞窟に滴る雫なのか涙なのか解らない濡らした顔で、みっともない涙で顔を濡らした私を見て微笑み、よろよろと洞窟を出て、私の隣で一緒に雨に打たれながら真っ直ぐ私の目を見て言った。
「白霜さま、いいんです」
「華………」
「運命には、逆らいません。白霜さま………ただ欲を言えばもう一度、貴方さまと桜を見たかった。貴方は生きて。私の分まで生きて」
華はそう言い微笑んだ。彼女はすべて解っていた。私の中の眷属とは思えない卑しい野生で、彼女の喉元を喰いちぎりたいことも。
僅かな食料にしかならないことは解っているのに、彼女を食べたから生命がが助かる訳でもない、それでも、ただ、血肉が喰いたくて食べたくて、食べたくて仕方がなくて、それ以上に彼女を食べたくなんかないことを。
「何故貴女は、こんな私を許してしまうのですか?」
貴女はクスクスと子供を見るような目線で言った。
「だって、貴方がいない明日には私は生きる意味を見出だせませんもの。私は、狡いんです。私達はもう助からないでしょう?なら、私に訪れる死を無駄にしないで下さい。貴方を、愛しています。だからお願い。罪悪感など感じないで。貴方が、終わらせて下さい」
そう首を軽く傾げて笑う白い兎の無力な華が、数ある動物の中から、この山の神様のもう一つの眷属だと解る気がした。それくらい華は、神々しく、慈しみ深い眼差しで私のことを見ていた。私は自分の『死』でさえ私の為に許容する華に、涙が止まらなかった。
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華──私は君を食べたくない。絶対にだ。もしを食べようと、空腹に負け、誇りに負け、君への気持ちに負け、君を手にかけるくらいなら──本能に負けるくらいなら、私は死を選ぶ。私は君を絶対に食べたりしない。そう思い、自分を弱い奴だと思われたくなくて、なのに、理性を失った自分が怖くて、君を手にかける浅い夢を何度も見た。その度に私はボロボロ泣いていて、そんな自分を君に気づかれないように、君に見つからないように、私は毎日夢の続きに怯えて声を殺して泣いている。
それでも、君はきっと気づいている。君は聡く賢いから。そして、誰よりもやさしく、あたたかいから。こんな弱い私を知らないふりをしてくれる。
本能を律してこそ、理性で本能を捩じ伏せられてこそ、眷属の名に相応しい。君とずっと一緒にいたい。君と一緒に居たいのに。華、それは許されないことなのか?私には眷属の資格がないのか?いつの間に君の方が暖かくなった。私が弱ってきて体温が下がったから、君が私を暖めてくれる。だから毎日寝たきりになった私と、柔らかな白い毛に空気を含ませ、暖かな君と横になって話す。
「寝ていますか?白霜さま」
「ああ。………眠っているよ」
「私のこれからの夢の話を聞いていただけますか?」
「春には、桜を見に行きましょう。夏には川遊びを。秋になったら、栗拾いと紅葉狩りに。白霜さまは目を閉じることが怖いと仰っしゃられましたが、怖くないでしょう?ずっと傍に、貴方の一番傍にいますから。同じものを見て、香りを感じて、水の冷たさに笑って。ですが、幸せの隣に居たいのですが、この約束を叶えられないのなら貴方自身となって、私の夢をかなえたいのです」
馬鹿なことを、言うな。君がいない世界は私にとって意味がないものなのに。声にならない声で言う。それでも君は解っているね。長い耳が揺れている。やるせなさに身を震わせている。
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この豊かな美しい、山の神様の眷属として出逢った私達。初めて出会った君は、可愛らしくて、気高くて。濡れたような黒いつやつやした黒曜石のような大きな瞳で、私を射るような瞳で見ていた。まだうら若い君は、小さな若い白兎。ふわふわの真っ白な毛をしていた。
そして、私はただの武骨な白い狼。私は、この山の神様の眷属であることを、華………君に会ってから初めて正しく、歪みなく、誇りに思えた。君が私に生きる意味をくれた。この山を守り、山の神様と生きること──それまでの私は、君に会うまでの私にとって、生きる意味などはなかった。ただ毎日、旨い『飯』が、いや、旨い『餌』が食えればいい。それだけの、ただのうらぶれた狼だった。
この山の眷属だった両親は、この山の動物に崇められていた。強い熊も、賢者と言われる梟も、人間でも手を合わせる者がいた。今となってはそんな者はいない。もう人間は、山の神様も、山の神様の眷属も、信じない。狼の仲間も次々と人間に狩られて死んでいった。
両親は、人間に狼にしては珍しい白い毛皮だと、金になると執拗に銃で撃たれ、幼い私の目の前で死んだ。冬の寒い日だった。身を切るほど寒い朝だった。怖いくらいに晴れていた空は、両親が撃たれてから、雲が立ち込め、急に山は吹雪になって、人間は大慌てで去っていった。幼心に、
『山の神様が人間を山から追い出した』
そう、思った。山の神様は怒っている。僕達の味方だ!と。仲間に協力してもらい、《満月の約束》で私は変化し、両親から教えられていた通り、山の上に両親を埋葬した。この時私は、この山の狼の首領になった。皆、幼い私を支えてくれた。山での暮らし方を教えてくれた。
なのに、人間は仲間を次々と奪っていった。確かに私達の毛皮は貴重だ、そして、ただの武勇伝にするためだけに私達を狙う者もいた。
年を経ると共に、私は自分がこの山の神様の眷属であることは、ただの飾りにしか感じないようになっていった。父も母も白い毛皮でなければ、この山の神様の眷属でなければ、死ぬことはなかった。まず、狙われることもない。
山の神様の眷属だといっても何の意味も成さない。ただの珍しい白い毛皮を持つ狼だ。眷属なんて、ただそれだけ。両親から受け継いだこの白い毛皮。こんなもの、要らなかった。
ただ、便利なものは《満月の約束》
満月の夜に人間になれること。食いものを喰いあさり、人間の女性と淫蕩に耽った。月に一度の様々な快楽を貪った。
その頃の私は自尊心の拠り所を、山の神様の眷属の自分自身にすることなんて到底思えなかった。両親が何故死んだか?珍しい白い毛皮だったからだ。眷属だけ白いというのは、厄介なことしかないと思っていた。
もうその頃の私は、この山を縄張りにしていることは白い毛皮が証明してしまうけれど、もう狼の仲間以外信じない、必要としない、時代はもう山の神様を捨て、眷属の私達も捨てたと思っていた。いつぞやの山の神様を信じる心や、その眷属の誇りなど何処にもない、私はただのうらぶれた、狼に成り下がっていった。初めて会って、君と話をするまで。君に恋に落ちるまで。
白い兎と罠にかかった君と同じ真っ白な幼い弟。君は美しかった。私は、まだうら若い君に出会って私は君に見惚れた。強い瞳に反比例する華奢な体躯。君は今まで見たどの動物より綺麗だった。
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白い兎の私と、見目麗しい白い狼の貴方は、きっと、山の神様に愛されているのかもしれない。でなければ、今、私はこうして貴方を見つめていられることなんて、できないもの。
私達、山の神様の眷属は、満月の日にだけ、人間の姿になれる。
山の神様の眷属に受け継がれた《満月の約束》
その日、やっと私は貴方の涙を指先で拭うことが出きる。白霜さま。私が足手まといになることがあったなら、怪我をしたり、何かがあったら貴方が私を終わらせて下さい。喉笛に容赦なく、牙をたてて、終わらせて下さい。出来るならば、苦しまなくて済むように。私が死んだら、私を食べて下さい。そうきちんと伝えなければならないな、と思いました。
貴方は嫌だと私の前で涙を流しましたね。貴方には残酷なことを強いていると、解ってはいるのです。ですが、貴方には生きて欲しい。そして、私と貴方では見られなかった景色、季節、生き物、貴方の目を通して、私も見たいのです。
意識がぼんやりしてきました。可愛い方。泣かないで下さい。貴方は、優しい方。私の前でだけ涙を見せてくれる。
貴方は『狼の仲間はもういない』と哀しそうに言い、続けます。
「もう、人間に狩り尽くされて、この山には狼はいません。あんなにいた仲間はもう散り散りで、初めて貴女に会ったとき居た狼の群れの皆は、猟師に狩られたと。消息を辿っても、皆撃たれたと。白兎も、貴女で最後でしょう?………あの子は、残念でした」
と。一族を失い、抉られるようにつらいことなのに、貴方は笑います。私のためだと解っていますが、貴方の気遣うやさしさが、つらい。
そして、抱いてはいけない感情だと解っていますが私は、心の中の仄暗いところで秘かに恋においての優越感を感じてしまうのです。恋慕するなら素直に相手を認めればいいだけなのに、貴方と過ごした月日が、時間の長さが私をそうさせてしまいました。私は嫌な兎です。
私は貴方にとってただ独りの同じ眷属。そして、貴方にとって私は唯一無二の存在として扱ってくださいました。どの動物が崇め、雌の麗しい動物が言い寄っても、貴方は、
「すまないが私には華さんしか考えられない」
その答えを訊いた瞬間、嬉しかった。貴方の心には私が棲んでいる。貴方の心には私がいる。と。けれどそれは日を追うに連れ、私の心に秘めた、欲深さを集約した私が膨らんで耐えきれなくなりました。
「貴方の心は私と同じもの」
同じものを見て、喜びを感じていたはずが、何処をどう捩れたのか、
「貴方の心は私のもの」
歪んだ気持ちはそうやって、出来上がっていきました。
嫉妬、妬み、嫉み、意地悪さ。心の澱。どんどん穢くなっていくのです。
出会った頃の綺麗な心は何処に行ったのか。貴方の傍にいると、自分が段々穢くなる。穢い蔓が私を締めつけます。もう、がんじがらめです。心の内も、嫌われる覚悟で、此処を去る覚悟で晒けだしました。
「私は、白霜さまをお慕いしています。白霜さまは、私に親切にして下さいました。そんな私はいつの間にか私は傲慢になりました。白霜さまは私を愛してくれる。私だけを愛してくださる。それを笠に着て、他の貴方への取り巻きへの嫉妬。美しい動物が貴方に近づけば、妬んで、嫉んで。『白霜さまが認めるのは同じ眷属の私だけです。お下がりなさい』ふわふわの毛を逆立てて、そう言うことしか出来ない、小さく無力な他の動物に馬鹿にされてきた、眷属であることが唯一の自尊心の拠り所にしてきたの白い兎の私が眷属としての優越感と貴方の特別であることを同時に味わいました。私にとって貴方は唯一の便りでした。今まで貴方と一緒に生きて参りました。最初は貴方を利用しながら、ですが、いつの間にか貴方に恋をして、貴方に愛されていると思わないと、独りが怖くて。こんな兎を守ってくれる、愛してくれるのは白霜さまが初めてでした。白霜さまの心に、私が勝手に棲んだ気でおりました。申し訳ありません。今まで有難うございました。さようなら。あなたを愛していました」
最後くらい笑おうと震えながら白霜さまを見つめる私を見て、白霜さまは笑いました。
「君の悩みは小さい。私も美しい動物が君が近づこうとしていると、『私の眷属に近づくな』と威嚇してきました。華さん、私は貴女が好きです」
今は誰もいませんから──。貴女は笑いながら泣くんですね。そう言い、白霜さまは、やはり、泣きながら笑いました。
………………………………………………………
『眷属の誇りを忘れてはいけませんよ。山の神様が見ていてくださる』
そう母は言っていました。いかなるときも。山の神様は見てらっしゃる。私は理不尽だと思いました。目の前で、囮となって私達と仲間を守った父は笑う人間の群れに長い真っ白な耳を掴まれ、生き絶え私達を見て、微笑みました。父を見て幼い私は、解りました。死と生を父は微笑みで私に教えました。死は怖くありません。
ですが、吹雪のように凍てつく強さを、春に咲く蒲公英のように暖かな貴方を置いて逝くのはあまりにも私は哀しいのです。やはり貴方は可愛い方。優しくて。愛しい。この身を捧げていいと、自らの命を手放してもいいと思える方。
私は貴方の身体の中で貴方の命が尽きるまで生き続けることが出来るのです。先ほどの通り貴方の目となり、二人待ち望んだ春の桜を見つめ、私の好きな春の匂いと、貴方の好きな桜の花から馨る少し甘酸っぱいような匂い。私は貴方の一部となって、私は貴方との永遠を手に入れる。きっと、最後は、そう。ずっとそう思ってきました。
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「華!林檎だ!食べろ!留守の家に忍び込んできた。追手も撒いた。大丈夫だ」
「林檎、林檎………嬉しい………ごめんなさい、白霜さま。貴方だってお腹が空いているのに………はしたなく、申し訳ございません」
「謝るな。君は気にしすぎだ。満月を待とう。人間に変化して食物を分けて貰おう」
「この洞穴は寒いですね。早く、雨風がやめば」
外は暴風雨です。いえ、雨と言うより雪に近い。そんなとき、貴方は何か物音を聞きつけたようでした。人間の臭いがしました。鼻をひくひく動かせば私にも解ります。幸い猟犬の気配はありません。年老いた猟師のようでした──もはやこれまで──私はそう思いました。
この山の神様の眷属は白い狼と白い兎ですが、昨今、その二つを狩らない、信心深い猟師なんていません。兎の罠なんて至るところにありました。狩られた狼も、山ほど………。私たちが最後の山の神様の眷族です。
人間は私達の仲間たちの生命を簡単に奪っていきました。斑に落ちた血の痕に、白い柔かな毛は細雪のように、綿のように、散らばっています。歯噛みするほど、そのような場面を目にするたび、ぎゅっと『泣くものか』と思い、目を瞑りました。涙が滲んで目頭から伝っては落ちていきました。老翁の猟師は言いました。
「白い、狼?ありがたや。怖がらなくてええ。でもガリガリだな。綺麗な雪みたいな兎さんもいるなあ。何で狼さんは兎さん食わねえんだべ?神様どうし、仲が良いごど」
猟師はにこにこ上機嫌に、火を起こし暖を取ります。洞窟もほんのり明るく暖かくなります。白霜さまは私を庇うようにして私を後ろに隠し、唸り声をあげました。猟師は笑いながら、
「俺は、お前さんたちを殺せねえの。お前さんたちはこの山の神様の眷属だからな。ほれ、林檎と干し肉だ。食べてくろ。焚き火はそのままにしておくから、あったまれよう」
ザクザクと、足音が遠ざかっていきました。簑はすぐ見えなくなりました。足音も段々と遠くへ消えていきました。
「助かったな。珍しい人間だ」
「ええ」
「久々の肉だ───」
齧りついた肉から、白霜さまは口を離しました。
「どうなさったんです?」
「林檎………良かったな。好きだっただろう」
「貴方は?どうして?」
「………兎だ」
「食べて。貴方は悪くない。干し肉です。私は平気です。貴方が飢えて苦しむよりいい。私のことは気にしないで」
白霜さまは伏せて涙を流しました。私はそんな、白霜さまに寄り添うくらいしかできません。自分は所詮、獣だ。何もできない。そう私は思いました。
白霜さまはただ、自分を責めているようでした。痩せて浮かび上がる肋骨。空腹に耐えかねてあるのは目に見えて明らかでした。
「華………貪るように何でもいい、肉を喰い漁りたい、そう思い涎を飲み込む自分があさましい。白い狼と祀られても、山の神様の眷属と崇められても、所詮は獣。華、君を食べたくない。何があっても君だけは。兎も食べない!絶対に!此の世の者は笑うかもしれない。それでも、君を愛しているんだ」
そう言い白霜さまは泣きました。
「君を食べたくない。想う気持ちに、喰う本能が勝てば私はただの狼だ。獣だ。嫌だ。華、怖いんだ。助けてくれ。私を獣にしないでくれ」
「私は白霜さまの全てを受け入れます。ただ……」
「ただ、何なのだ………?」
震える声で白霜さまは言いました。私も声が震えました。
「食べるときは、残さず。骨も噛み砕いて食べて下さい」
白霜さまは声をあげて泣きました。私も涙が止まりませんでした。
…………………………………………………………
幾日か暴風雨は続きました。焚き火に木をくべ、その傍で暖をとって過ごしました。けれど段々、私は目が霞んで、息が苦しく、力が出ません。
「水を持ってくる!待っていろ!」
「………白霜さま、昔話でもしましょう」
「こんな時に!こんなに冷える前にどうして言わなかった!抱きかかえるから傍に寄れ!」
「こんなときだからです。一分一秒でも長くあなたのそばにいたい。昔の思い出もともに」
……………………………………
──幾年前のこと──
……………………………………
「うああああ!お姉ちゃん!痛い、痛い、痛いよおぉぉ!助けて!助けて!」
獣の罠に、弟はかかりました。罠はギザギザした固い金属が噛み合わさったようなもので私にはどうしようもなかった。何度も外そうと試みます。けれど、一向に罠は外れない。焦りだけが募ります。
満月になれば───満月の日だけ、私の家系の者は人間の姿に変化できます。昔はこの山の神様の眷属と崇められた一族です。
もう、私と弟しかいません。母と私と弟の三羽。母から生きる上での沢山の知恵や知識を教えられました。けれどその母も、偶然の出会い頭の猟師から、私と弟を逃がすために人間に捕らえられました。
「おかあさん!おかあさん!」
「逃げて!華、雪をお願いね!」
「行かないで、おかあさん!おかあさん!」
「諦めなさい!雪!おかあさんが捕まった意味が解らないの!」
「………」
ポロポロ泣きながらも弟は口を噤みました
『私たちを逃がすため』
これが解らないほど、弟も愚かではありません。ただ、まだあまりにも幼いのです。母と無理やり引き離され心細いのです。それから幾年の月日が経ちました。そして今、この難攻不落の罠です。
「お姉ちゃん、いたいよぉ。足が取れちゃうよぉ」
「大丈夫。必ず助けるから。お姉ちゃん嘘ついたことあった?」
今夜は満月。まだ月は昇りません。人間に見つからないうちに、私がひとのかたちをとれれば、弟は助かる。弟はまだ幼い仔兎で、まともに変化はできません。満月が先か、人間に殺められるか。全ては運次第です。その時でした。遠くに見えたのは、狼の群れ。
「お姉ちゃん!狼がきたよ!僕を置いて逃げて!
「出来るわけないでしょう!………一緒に食べられましょう?お姉ちゃんは、ずっと雪と一緒だから」
先頭に現れた狼は真っ白な狼でした。この山の神様のもう一体の眷属は白い狼と聴いた記憶はありましたが、見るのは初めてでした。仲間を引き連れ近づいてきます。弟は小さな身体を丸くするほど毛を逆立て威嚇しています。私は丁寧に言いました。
「白い、狼さま。食べるなら私を食べて下さい。だからお願いします、弟だけは、弟だけは………助けてください。どうか、食べないで、弟だけは、食べないで………」
私は半泣きになって白い狼に縋りました。狼は立ちはだかるようにして弟を守る私に、一言、
「どきなさい」
と低く言いました。恐怖で身がすくんだ私は、身動き一つできませんでした。白い狼が弟に近づきます。
───ガシャンッ
「罠はとれた。これから気をつけることだな」
「あの、お名前は、何と?」
「白霜。君は?」
「華です。弟は雪と。お礼は何を?」
「……あなたは、山の神様の眷族か?ひとに変化できるのか?」
「はい。弟はまだですが」
「では、夜、共に弟君の怪我の手当てに必要なものを買いにいかないか」
私は二つ返事で白霜さまと街にくり出しました。待ち合わせ場所は山の者なら皆知る、桜の大木。初めて行く街は明るく珍しいものばかり。たくさん話をし、笑いました。白霜さまはとても話が上手で、狼がこんなに優しい目をしているとは知りませんでした。
「これで充分だな、弟君を大事になされよ」
「ええ。まだ上手くひとの形をとれなくて。まだ仔兎ですから」
「………あなたは、澄んだ目をしている。また、会いたい。次の満月の日、また今日待ち合わせをしたい。あの桜の木の下で待っていてもいいか?街にいかなくても、会いたい。弟君も一緒に。変化はコツさえ掴めれば簡単なのだよ」
笑いながら、買ってきた薬や包帯で、白霜さまは雪に的確に手当てをしてくれました。
「骨は大丈夫だ。腱を少し傷つけたかもしれない」
それから私と弟は白霜さまの案内で、弟の表面の傷が治った後、早く後ろ足がよく動くようになるように、深い傷に良い温泉に通いました。雪は白霜さまに良くなつき、愉しい日々が続きました。毎回変化の練習をして5回目の結満月の変化の発表で上手に変化できましたが、白く長い可愛らしい耳が出ていました。
「雪、耳が出ているわ。可愛らしいけど今日は街に行くからダメよ」
「ちぇ。でも姉さんは、今日の満月も白霜さまに会えるね、姉さん。髪に僕があの桜の木の枝を彫って細工した簪を差して行くと良いよ!僕、巣穴から取ってくる。きっと、話に花が咲くよ。姉さんも、そろそろ白霜さまに想っていることを言いなよ!折角今日は満月なんだしさ!次の満月には三匹で街に行こう?ちゃんと変化できるように頑張るよ。僕、白霜さまみたいになりたいな」
そう言い雪は駆けてゆきます。雪の背中が、幾分か広くなって見えました。ああ、こんな僅かな間に雪も少年ではなくなろうとしている。雪は一生懸命大人になろうとしている。
「白霜さまみたくなるんだ!強くて、優しくて。大切なひとを守れるように。勇敢で、賢くなりたい」
いってきます、の笑顔を残しいつまで待っても帰ってきません。雪が帰ってきません。私は泣きながら山を探しました。嫌な予感が私を包んでいきます。暫くすると白霜さまが、巣穴を訪ねて来ました。
「華さん?桜の下に来ないので、何かあったのかと………」
「白霜さん!雪が、いない。雪が………桜の簪を取りに、ここに来たはずなんです。でも、いない。私のせいよ。桜花の神の罰です。雪、雪………」
そろそろと一匹の狼が白霜様に耳打ちしました。白霜様は、私を葉桜に近くなったあの桜の大木へ連れていきました。花はとうに終わり、名残を残すだけです。
「落ち着いて、聴いてください」
私はぎこちなく、『はい』と答えました。
「この桜の枝の………。雪くんの、最後の………」
「え………?」
「狐に………」
「雪が?狐に?怪我は酷いのですか?」
白霜様が私に頭を下げました。
「もう、喰われて………雪くんの毛皮です。少しでも、形見と………」
私は膝から崩れ落ち、雪の毛皮を抱いて人目も憚らず大声で泣きました。あの『姉さん!』の声はもう聞こえないのです。甘えるように背中に手を乗せたりして甘えたり、鼻をならして林檎をねだる可愛い弟はもういない。一緒の時間をすごすことはもうないのです。
「あの子の毛皮………ありがとう。簪は貴方が。あの子は貴方に憧れていたから」
「華さん………受け取れません。貴女が大切に持っていて下さい。帰りましょう」
私は差し伸べられた貴方の手を振りほどきました。貴方はひどく傷ついた顔をしてから、切なそうに微笑みました。
「罠と狐には気をつけます。雪と二人にしてください。それと、親切にして下さったのに、申し訳ありません。こんな失礼な態度を。お許しください」
「そんな、華さん………許す許さないの問題ではありません。私は、貴女が心配で………」
「貴方の心配なんて要らない!雪、ごめんね。悪いお姉ちゃんだったね」
私は一晩中泣き明かしました。私の顔を見たら、誰もが皆、泣き腫らしたみっともない顔だと思うでしょう。足に怪我の名残が残る弟への注意を怠りました。まだあの子は全速力で走れない仔兎なのに。私は桜に寄り添って、雪に謝り続けました。
罰の悪そうな、白霜さまの気配がありました。私は、振り返らずに言いました。
「独りに、なってしまいました。白霜さま」
「気づいていましたか」
「誰も、いない。誰も。誰もいなくなってしまいた………」
白霜さまは、私の隣に腰を下ろしました。
「………私がいます。あなたの苦しみを分けて下さい。華さん」
「………貴方も、貴方も兎を食べるでしょう?私を食べない理性の保証はありますか?貴方だって飢えたら私を食べるくせに!雪を食べた狐と同じよ!」
言い放った言葉をこんなに後悔したことはありませんでした。ただの八つ当たりです。私は決して私に危害を加えることはないと解った上で白霜さまに向かって腹立たし紛れの言葉を繋げます。汚い私の言葉は、いつしか涙に変わりました。白霜さまは私の手を痛いくらい握りしめ、言いました。潤んだ声が辛かった
「華さんだけは………貴女だけは………食べない。飢えて死のうが、私は貴女を食べない!兎もだ!絶対に食べない!」
白霜さまは静かに泣いていました。私と一緒にいたらこの方は不幸になる。やるせない苦しみを私は白霜さまの傍にいる限り、これ以上ない荷物を負わせてしまう。もう、会うべきではない。私の隣で下を向き顔を上げることのない白霜さま。
私は足手まといの部類でしょう。群れの皆にも迷惑をかけたでしょうし、兎を食べられないと言ったら白霜さまの群れの頂点にいるものとしての沽券に関わります。私は白霜さまの手の甲にそっと口づけました。
夕方、この方のためにひいた口紅が、白霜さまに歩み寄るために引いたのに、別れを告げるためのしるしのように、白霜さまの手の甲に移りました。
「さよならです、白霜さま。ずっと私は貴方をお慕いしていました。本当にあなたが、好きでした」
それから、私は白霜さまと会うことを辞めました。
巣穴に帰ってみると、あの子の匂い。あの子の気配。もう、いない。毛皮を抱きしめ大声で喉が千切れるくらい泣きました。もう、聴くことの無い雪の声が聴こえてくるようでした。
『お姉ちゃん!林檎美味しいよ!』
『お姉ちゃん!この温泉、不思議な匂い』
『いいな。僕も早く白霜さまと、お姉ちゃんと街に行きたいな』
三日おいてから、毎日、巣穴の入り口に季節の食べ物や季節の花が置いてありました。すぐ貴方だと解りました。
律儀に一日必ず一つ。真摯に誠実に。欠かすことなく。満月の晩、必ず約束の時間に、貴方は桜の木の下で月を待っていましたね。私は決して見つからないように、貴方を見に行きました。
こんな兎の、下手な気配の消し方なんて貴方は解ってらっしゃるのに、貴方は知らないふりをしてくださいます。貴方の悲しげにこちらを向いて笑った顔が、胸に刺さった棘のように痛かった。
……………………………………………………
「あのときの私は意固地になっていました。桜の下のあなたに声をかけると、貴方はとても優しく、まるく笑いました。そして私に『待ちくたびれて死んでしまうかと思ったよ、華さん』と、私を責めることもなく、ただ控えめに微笑んで。私は、この純粋で、私を待っていてくれた真っ白な貴方を傷つけたのだと、思いました。もう遠い昔ですね………白霜さま」
弱々しい声音を出した私を勇気づけるように、白霜さまは言葉を繋げました。
「満月まであと、二日だ!耐えられる。二日待ったら街へ行こう、華。君の好きな甘い鼈甲飴を買おう」
二日後、満月になりました。人里に降りてありったけの食料を買い込みました。店に入り、私は忌々しくきつねうどんを噛みしめました。悔しいことに美味しくて、体力が回復する感じがしました。ですが段々、力の質が身体の中から変わっていく感じがして、身体が徐々に縮み始めています。苦しくて息を吐くと私の頭に兎の白い長い耳。白霜さまの耳は狼のような、大きな犬のようなピンとした耳が生えています。段々身体が薄っすら煙につつまれました。私と白霜さまの身体が元の容貌に戻っていきます。
何かが起こっている。そう思い、私と白霜さまは、素早く空を見上げました。周りは私達の姿に怖れ慄く人間達の輪の中あるものに出会いました。
──『月蝕』です!──
初めての経験でした。身体が無理矢理作り替えられているような感じがしました。
「逃げるぞ、華。走れ!背に乗れ!」
人間から白い狼と白い兎に変わるさまを沢山のひとに見られてしまいました。人間は怖い。独りなら何もできないくせに。集団になって徒党を組むとどんな残酷なことでもする不思議な恐ろしい生き物です。
『こっちさ逃げろ。おらん家でいいなら身を隠せ』
一か八かで私と白霜さまは、この前洞窟に来た猟師の老翁の家に身を隠しました。この老翁は、山の神様の眷属のことを知っていた。もしかしたらこのまま匿い、助けてくれるかもしれない。
「お前ん家に白い狼と白い兎、かくまってるべ!あいつらは化物だ!出せ!」
外では人間が雪崩のように押し掛けてきました。そのうち、野次馬だけではなく、武器や篝火を持った男衆が集まり出しました。
「おらん家は神様しかいねぇ。それに白い兎と白い狼はこの山の神様の使いだべ!眷属だべ!」
「うるせえ!爺!そんなの大昔の迷信だ!たかが猟師のくせに、山の麓にこんな小屋まで建てやがって。開けろ!そこをどけ!」
翁はまだかまだかというように空を仰いでいました。月蝕は終わり、煌々と月は輝いています。
「ああ、勝手に見ろ!」
「化物めが!退治してやる!」
男衆が見たのは痩せた、肌の色が色がすけるほど白く、染み一つ無い、此の世の者とは思えないほど美しい男女。
「ほら言ったべ」
男衆たちは、拍子抜けした様子で去っていきました。中には
「酔いすぎて、幻を見たらしい。これ、鼈甲飴。子供だましで悪いけどよ。あんちゃんと娘さんに」
…………………………………
「匿って貰ったお礼に私が死んだら毛皮を差し上げます。少しですが」
「華!」
「もう、無理だわ。足の感覚も、手の感覚もほとんどないの。最後は貴方が終わらせて。食べて。私は貴方の血と肉となりあなたと生きる。自然の摂理よ。ただ私はどうしようもなくあなたが愛しいから、哀しいの。私がいなくなっても、生きて。貴方を、ずっと愛してる」
私は、涙を流し震える白霜さまの目元を白く痩せ細った指で優しく拭い、これ以上もなく笑ってみせました。
「泣かないで。不器用で優しい貴方を、いつまでも愛しているわ」
段々視界が暗くなっての力が抜けていきます。白霜さまの声が小さく聞こえます。
「華………?華!嫌だ!返事をしてくれ!私を独りにしないでくれ!」
白霜さまの潤んだ叫びが山に響きました。
「助けてやっても良いぞ。愛しあう者を無理に引き裂き冥土に送ろうと、冥府の神もいい顔をしないであろう。その代わり一番その兎が大切にしている簪を貰おうか」
そこにあの翁はいませんでした。眩い程に神々しい、豊かな黒髪を結いあげた美しい女神がいらっしゃいました。あまりの美しさから人間ではないとはわかりました。
女神が指を動かすだけで、華の髪からするりと桜の枝で作った粗末な簪が動き出し女神の手の中に収まります。
「と、冥府の使者が来る前に………」
フッと女神さまが私に私に息を吹きかけると、視界は開け、明るい世界が広がっていました。月光も掴めそうなほど。
「生命の架け橋を渡る狼にも………」
フッと女神さまは白霜さまにも息を吹きかけました。まだ、事態を把握しきれてない私を、力一杯、苦しい程に白霜さまは抱きしめました。
「女神さまが、生命を下さった」
そして、白霜さまは女神さまに問われました。
「俺、いえ、女神さまにあげるものがありません。どうして、私の命をお助けに………」
「白霜、お前は私が翁の姿で洞窟を訪ねた時、あれだけ腹が減っているのに、兎の肉を喰わなんだ。干し肉さえも。兎は食べないと。本当に、あの白兎を愛しているのじゃのう」
「お聞きしても宜しいですか?あなたさまは?何故私たちを………?」
私は、か細い声で女神に訊きました。女神は機嫌良く、
「訊くだけ野暮よの。まあ、簡単に言えばお前たちが気に入ったのよ。死ぬほど痩せても餌となる兎を食わない狼と、自分が死んでも狼を生かすために、餌となろうとする、憐れなほどに狼を愛した兎と、たとえ餓死しようと兎を愛した事を貫こうとした狼にな。私はこの山の神よ。そなたの生命の代償はこの簪じゃ。異論はないな?」
「──命を救っていただき有難うございます。残り短い命を大切に致します」
女神はニコリと微笑んで言った。
「再び命を吹きこんでやったのに、簡単に死なれては困る。そうだな、山の麓のここに棲め。新しい力を与えよう。普段は人間の姿だが新月の時には変化の力を失い、獣の姿に戻る、というのはどうじゃ?」
「仰せのままに」
と二人は頭を下げました。女神は持っていた翡翠の煙管に火をつけ二人に煙をかけた。
「これで体力も戻ったはずじゃ。末長く幸せにな」
煙と共に女神は消えた。白霜さまは、私を抱きしめ声をあげ泣きました。いつの間にか私も泣いていました。
……………………………………………………………
狼の私と兎の君は、山の神さまに愛されたのだよ。新月だけは、隠し部屋に閉じ籠る。
案外昔の思い出が込み上げ、悪いものではない。自分が獣だと再確認する。ただ、山の神様は私たちの寿命については触れなかった。老いることを知らない私たちに終わりはない。
終わりがないことは怖いはずなのに
君がいる私は、明日を待ちわびない日はない。
……………………………………………【完】
兎と桜と狼と──満月の約束── 華周夏 @kasyu_natu0802
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