第14章

ヒーロー基地のど真ん中でポツンと立っている人物がいた。Sランクヒーロー白化だ。彼の異能は触れたものをハッキングできるというもの。しかし、AI軍が崩れ去った今、その異能もまた、使われなくなろうとしていた。

未無:白化先輩―!

その背中に未無は声をかけた。

白化:…なんだい?僕の異能は、もう不要だと思うけど。

少し悲しそうに白化は言った。

未無:先輩…「機械」って、AI軍が全てだと思っていませんか?

白化:…何か、間違っているかい?

未無は少し困りながらも返事をした。

未無:半分正解で、半分不正解…ですかね。

白化:…半分不正解、何故だい…?

白化は納得できない様子で未無に問いかけた。

未無:この世界にある「機械」と呼ばれるものは、何もAIだけが全てではないですよ?救済措置で使われるもので言うのであれば、そうですねぇ…。クレーン車とか、ああいうものだって…しっかりとした「機械」ですよ?身近なもので言えば、この端末も、ね?

未無はポケットに入っていたスマートフォンを取り出す。

未無:だから、先輩の異能も、まだまだ現役ですよ。

未無はそう言って、手袋を付けた左手で白化の背中を押した。

白化:そうか…。ありがとう、未無。…やれるだけ、やってみるよ。

そう言って未無の元を去っていく。

未無:異能の暴走だけはないように、お願いしますよーー?

未無は、自分の元を去っていく白化の背中に、大声でそう言った。

白化:…分かってるさ。

白化は呟くようにそう言って、仕事に戻った。少し微笑んで、両目に溜めていた大粒の涙を拭って…。

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