第7章
長官:今回も配置を変えるぞ。よく聞いておくように。前衛をSランク隊とBランク隊。中衛をAランク隊とCランク隊。後衛をZランク隊。それでは、配置につけ。
ヒーローたち:はい!
ヒーローたちは配置に着いた。
長官:AI軍が進軍開始、攻撃に備えよ。
無線が切れる。
未無:(今回はAランク隊の氷凍先輩と羽織先輩、Cランク隊の僕と風華だ。氷凍先輩は憧れの先輩ヒーローだけど、気を抜かないように。成長したところを見せるんだ。)
氷凍:よぉ、未無。元気だったか?
未無:氷凍先輩。はい、元気ですよ。氷凍先輩こそ、元気でした?
氷凍:俺はいつでも元気だぞ。
羽織:2人とも、戦いの最中なんだから集中してね。
氷凍、未無:あ、はい…。
未無:先輩、来ましたよ。
氷凍:…アイツの相手は、俺だな…。
「異能力:氷結!」
氷凍がそう言って複数のAIに触れると、管轄内にいたAIは皆動きを止めた。
未無:すごい、でもこれって…。
氷凍:安心しろ、異能が暴走したわけじゃねぇ。1体ずつ俺がこの手で凍らせてきた。
未無:…氷凍先輩、あんな速度出せるんですね。
氷凍:…しれっと、地面を凍らせて、そこを滑って速度出してんだよ。
未無:異能の応用ですね?すごいなぁ…。
羽織:2人とも集中って何度言えば…。
羽織が2人を注意してる背後に、周りとは比べ物にならないくらい強そうな、それこそ幹部級のAIが槍で羽織の体を突こうとしている。
未無:羽織先輩、後ろ!
羽織:…この時を、待ってたんです!
「異能力:羽織物強化!」
そう言って幹部級のAIの槍の攻撃を軽々と避け、幹部級のAIに触れると、幹部級のAIは衣服となり、羽織に被さった。
羽織:これを着れば、並の、そこら辺のAIには負けませんよ!
未無:…すごいな、あんな強そうなAIを衣服に変えるだなんて…。
氷凍:すごいよなぁ、あの異能…。初めて見た時は、俺も感動したもんだぜ。…よし、俺も負けてらんないな!集中!
未無:僕も、周りをよく見て…。
ヒーロー基地。
長官:今回も新しい発見があった。ご苦労だった。解散!
ヒーローたち:ありがとうございました!
ヒーローたちが去っていく。
羽織、氷凍:未無!
未無:先輩方!どうされました?
羽織:未無はどうやって戦ってるのかなって思って、ね?
未無:羽織先輩、僕はサポート役です。
羽織:どういうことかな?
未無:僕の能力は異能無効化。だから、異能が暴走したらすぐ止められるように、常に周りに目を向けているんです。
氷凍:だから言ったろ、実はすごい奴だって。
羽織:えぇ、すごいわ。でもね、だからこそ危険なの。
未無:…と、いうと?
羽織:異能力を持つものは皆、暴走した時の姿がある。それは貴方も例外じゃないわ、未無。もし、唯一のサポーターである貴方が暴走してしまったら、どうなると思う?
未無:異能のブレーキが利かなくなって…戦場が、混沌と化してしまう。
羽織:そう。だから、貴方は周りだけじゃなくて自分にも、全てに目を向けなくてはいけないの。それが大変なのは私も分かるわ。でもそれが貴方の役割、貴方にしかできないことなの。そして貴方はその役割を全うしなくちゃいけないの。
未無:…………大変ですね、僕。
羽織:えぇ、すごく大変よ。重すぎて持てないくらいの荷物が貴方の肩には乗っているわ。だから…たまには、休んでもいいんじゃないかしら。
未無:いえ、僕は背負い続けます。全てを背負い続けて戦い抜いて、その先を見たいんです。守り抜いた人々の笑顔を。この目でしっかり見たいんです。
未無は覚悟が決まった目で羽織を見る。羽織はその目を見て少し驚くと、いつもの表情に戻った。
羽織:そう。なら、もう言うことはないわ。氷凍、貴方は何か言うことないの?
氷凍:そうだな。俺は特別頭が回るわけでもないから、気の利いたことは言えないが。それだけのものを背負ってるんだ、背負い続けると言うのなら…倒れないようにな。
未無:…ありがとうございます、先輩方。それでは、失礼します。
未無は2人に背を向け、帰路に着いた。
羽織:未無のこと、どう思う?
氷凍:心配、の一言に尽きるな。無理しすぎて倒れる未来しか見えない。
羽織:その時は、長官がきっとこう言うわ。
氷凍、羽織:未無を全員で守れ!
羽織:あら、息ぴったりね。
氷凍:あんたの言うことは大体わかるぜ?姉御。
2人は笑いながら帰路に着いた。
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