第4章

ヒーロー基地、朝礼。

長官:ヒーローの諸君、おはよう。

ヒーローたち:おはようございます!

長官:今日は、同ランク隊での訓練とする。明日に備え、しっかり訓練に臨むように!

ヒーローたち:はい!

長官:以上だ、解散!

ヒーローたち:失礼します!

朝礼後。

未無:えっと、同ランクってことはCランクヒーローの子だよね。一体、どんな子なんだろ…。

女性:ちっす!

未無:うわあぁ!

ギャル風の女性が、突然視界のど真ん中に出て来たので、未無は驚いて尻餅をついた。

女性:リアクションバッチリじゃん!いじりがいがあるわ。あ、アタシは風華。君と同じCランクヒーローだよ、よろしくね。

未無:あ。よ、よろしく。

風華:緊張しなくて大丈夫だから!

風華は未無の背中を押す。

風華:同じCランクヒーローなんだし、お互いの異能を高め合お?ね?

未無:う、うん。

風華:そしたら、もうちょっとしたら訓練の時間だから、それまで休憩ってことで。よろしくー。

未無:あ、よろしくー…。

未無:(嵐のように来て、嵐のように去っていったな、あの人…。)

数刻後。

長官:それでは各自、訓練始め!

ヒーローたち:はい!

Cランク隊。

風華は両手の手袋を外す。

風華:…手袋、外さないの?

未無:う、うん。

風華:へぇー…ちなみに理由は?

未無:…後で説明するよ。

風華:…あっそ。そんじゃぁ、行くよー…。はっ!

風華が掴み掛かるように迫ってくる。

未無:っ!

未無はスレスレのところで交わす。

風華:上手く交わすじゃん!次はどうかなっ!

風華は未無の周りを走り回り、掴み掛かるように迫ってくる。

未無:っっ!

未無はまたもやギリギリのところで交わす。

風華:へぇー…なかなかやるじゃん。

未無は、その後も風華の攻撃を交わし続けた。

数刻後。

長官:訓練終わり!解散!

ヒーローたち:ありがとうございました!

ヒーローたちは訓練した仲間にお辞儀をして、去っていく。

未無は1人、訓練場に残っていた。

未無:風華の攻撃、上手かったな…。

訓練の光景を思い出しながら、そう呟く。

風華:そう?ありがと。

未無:まだ残ってたの!?って、もしかして聞こえてた?

風華:うん、まぁね。

風華、未無:ねぇ。

未無:あ、先、いいよ。

風華:そう?じゃぁさ、訓練の時、一回も攻撃しなかったのは何で? 両手の手袋もしたまんまだったし…。

未無:それは僕の異能が関係してるからかな。僕が持ってるのは、触れた能力を無効化する異能でさ、それを訓練中に相手に使ったら、相手の異能が無効化されちゃって、訓練にならないじゃん?

風華:あー、そゆこと。だから、手袋外さなかったんだ。

未無:そういうこと。じゃぁ、次僕ね。風華は何でCランクヒーローなんだと思う?

風華:あー…何でだろ、考えたことなかったな。

風華は考えている素振りを見せる。

未無:…風華の異能はどんな能力なの?

風華:…アタシの異能は触れたものを風化させる能力。だからじゃないかな…Cランクなの。

未無:ん?どういうこと?

風華:風化ってさ、地面とか服とか、そういうのには効果あるんだけど、AIには効果がないんだよね。おかげで1回も戦場に出たことがなくてさ。そんなの、ヒーローって言えんのかな。

風華は自嘲気味に笑う。

未無:…僕がいうのも何だけどさ。自分がヒーローだって思えばヒーローなんじゃない?だって、風華にも守りたい人はいるんでしょ?

風華:…いる。アタシの、唯一の家族。アタシの、妹。

未無:だったら、その子のために頑張ってみたらいいんじゃないかな。それに、AIに効果がないって言ってたけどさ、実践してみたわけじゃないでしょ?長官には僕から掛け合っておくから、実際に効果があるかどうか…チャレンジしてみたら?

風華:未無がそこまで言うなら…分かった、やってみるよ。

未無:うん。それじゃ、またね。

風華:うん、また。

直後、長官室。

ドアをノックする。今回は氷凍の助言の通り、ノックの回数は3回だ。

未無:Cランクヒーロー、未無です。お時間よろしいでしょうか。

長官:入れ。

未無:…失礼します。

未無はドアを素早く開け、長官室へ入り、ドアを素早く閉めた。

長官室内。

長官:…ちょうど、コーヒーを淹れていたんだ。飲むか?

未無:いえ、コーヒーは好みじゃないので。

長官:そうか。

長官は机にカップを置く。

長官:それで、訓練後で疲れているだろうに、何の用事かな?

未無:…Cランクヒーローの風華を、彼女を戦場に出してください。

長官:…ほう。理由は?

未無:彼女の異能がAIに効果があるかどうか分からないからです。

長官:効果が見込めないのであれば、無為に出すわけには…。

未無:長官…!

未無は大きな声を出した。

長官:…何だね?そんなに大きな声を出して…。

未無:…風華は、必死でした。唯一の家族である、妹を守るために…。必死で、訓練に臨んでいました。訓練での様子を見ていただければ、分かると思います。

長官:…それがどうした。必死さだけでは、人は救えない!

未無:そうじゃありません!彼女は、守るべき人のために、ここにいるんです。妹のために、戦いたくて、ここにいるんです。異能の効果や評価だけでなく、少しは隊員の心にも向き合ってください。…お願いします。

未無は深々と頭を下げる。

長官:…明日の配置を改めて考える。今日はもう休め、未無。

未無:…最適解を、期待しています。それでは、失礼します。

未無は長官室のドアを開け、長官室から出て、長官室のドアを閉め、帰路に着いた。

未無:(…伝えたいことは、全て誠心誠意伝えた。…これで、風華が戦場に出ることができればいいんだけど…。)

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