第3話 双子のサトル
サトルは双子の弟だった。
わたしより20分くらい遅く生まれて弟になった。
午前0時をまたがって生まれたわたしたち。わたしは3月31日生まれに、サトルは4月1日生まれに。同じ日にちに届けることも出来たみたいだけど、学年が変わらないからそのままありのままに……。
同じ保育園、同じ小学校、同じ中学校に通って育った。
双子だからっていつも一緒というわけもなく、わたしは女の子同士で遊んだし、サトルは——友だちは男が多かったと思う、けど自宅の団地に連れてきた子は少なかった。
サトルは人間の友達よりも、きっと……木の方が好きだったんだと思う。勉強が好きだった。理系で、特に植物に関する本を読んだり自由研究? 勉強部屋の壁を埋め尽くす巨大なポスターをひとりで作ったり、勉強というより趣味だった。小学6年生で親に樹木の図鑑のシリーズで買ってもらっていた。まるで植物オタクだった。
私は理科も数学もまあまあ普通、絵を描くのは好きだった……工芸科のある都立にしたが、サトルは違っていた頭脳のレベルが。国立の附属高校で、母親が先生に「絶対に無理、塾とか通い切れない無理ですから都立にします」とレベルダウンを頼んでいた。中学の担任がすごく熱心に、サトルでなく親を教育(洗脳かも)し続けたおかげで、サトルは国立の附属高校を受け、合格した。
なのに——
新入学の四月の雨の朝に、自転車で駅に向かう途中に信号無視のヤンキーに、衝突されて頭を強く打ってしまい、三日間眠ったままで心臓が先に停まった。
誕生日から二週間も経ってなかった。誕生日祝いより、入学祝いの方が盛大だった。親戚中に、さとるみたいな秀才ほかにいなかっただろうし……。
でも——
一週間しか授業をうけてないサトルは15歳で燃えて、少し煙になって、あとは灰と白っぽい骨になってしまった。人を焼却する炉は県の施設で、広い庭があって、花と葉が両方出ている桜の樹が何本も植えられていた。
サトルならきっと夢中になって、メモを取ったり写真撮影するのに、もうできなくなってしまった、そう気づいたとたん、それまで大丈夫だったのに涙が止まらなくなった。
そのことをよく覚えている。
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