32話 老執事の限界突破

 初回全滅


 15分、3体目のリーダーが現れる。


 コボルトの数が膨れ上がり、丘菟の剣が鈍る。


 セバスのレイピアは素早いが、リーダーの斧が丘菟の肩を掠める。


「くっ!」と丘菟が膝をつく。


「丘菟様!」とセバスが援護するが、コボルトの群れが押し寄せ、2人は飲み込まれる。


 視界が暗転し、「全滅」の文字が浮かぶ。


 拘束された3人の内のアソンのステータスが半減し、遺跡の入口へ転送される。


「うわ、ステータス半分!?」とアソンが叫ぶ。 


「丘菟、大丈夫!?」とリルが心配する。「あぅ、次は私が…!」とピヨニットが耳を震わせる。


 丘菟とセバスは再び闘技場に立つ。「まだ2回…耐えるぞ」と丘菟が息を整える。



 モニタールーム


 男性がスクリーンを見つめ、「セバスの反応速度、星5級だな。だが、丘菟の耐久力が足りない」と呟く。


 脇田が「先輩、50分は鬼畜っすよ。2人でコボルトの無限湧き、耐えられるんすか?」と聞く。    


「セバスの学習速度が鍵だ。マザーAIがどこまで介入してるか…」と男性がログをチェック。  


「課金要素の星5アップデート、会議前なのに適用されてる。マザー、やりすぎだろ」と苦笑する。



 2回目全滅


 30分、6体目のリーダーが現れる。丘菟の剣がコボルトを斬るが、疲労がピークに。


 セバスのレイピアがリーダーを牽制するが、コボルトの短剣が丘菟の背を刺す。


「がっ!」と丘菟が倒れ、セバスが「お嬢様の名を!」と叫ぶが、群れに押し潰される。


 また暗転。「全滅」


 2人のうちのリルのステータスがさらに半減。


 入り口に戻されはしたが戦闘画面をリアルタイムで見ていたアソンが悔しがる。


「くそ、私のセバスが…!こうも簡単に押しつぶされるとは」


 アソンに引き続きリルが入り口へ飛ばされるが直前に「丘菟、セバス、頑張って!」とリルが叫ぶ。  


「あぅ、私、動けなくて…!」とピヨニットが涙目。


 丘菟は「あと1回…絶対耐える」と拳を握る。



 モニタールーム


「2回全滅か。セバスの動きはさらに最適化してる」と男性が呟く。


 脇田が「先輩、マザーAIがセバスに全能力解放でもさせたんじゃ…?」と推測。


「可能性あるな。星5のランダムアップデートなら、限界突破もあり得る」と男性がスクリーンを拡大。


「丘菟のプレイヤーデータもリアルリンクしてる。身体測定の反応速度が反映されてるな」と感心する。



 闘技場で丘菟とセバスが立つ。


 丘菟の体は半透明に揺らぎ、瀕死状態だ。「セバス、頼むぞ」と呟く。


 セバスが「お嬢様の名にかけて、必ず耐えます」とレイピアを構える。


 コボルトが湧き、リーダーが5分ごとに増える。40分、8体目のリーダー。


 丘菟の剣が鈍り、コボルトの棍棒が腹を打つ。「うっ!」と膝をつく。


 セバスが突然光に包まれる。「お嬢様、ご期待に応えます!」と叫び、レイピアが雷光のように閃く。


 全能力解放。


 セバスの突きがコボルトを次々貫き、リーダーの斧を弾き飛ばす。丘菟は半透明の体で剣を振り、「セバス、すげぇ…!」と感嘆。


 45分、9体目のリーダーが現れる。


 セバスのレイピアが嵐のように動き、コボルトを一掃。丘菟が最後の力を振り絞り、剣でリーダーを斬る。50分、水晶が「試練クリア」と告げる。


 丘菟は床に膝をつき、半透明の体で息を切らす。


「セバス…お前、なんだその力…」と感嘆する。


 セバスが「お嬢様の勝利です」と一礼。


 試練が終わって事で、入り口へ飛ばされていたアソンとリルが元の拘束状態へ戻る。

 だが、間髪おかずに拘束が解けアソン、リル、ピヨニットが駆け寄る。


「丘菟、セバス、すげぇ!」とアソンが叫ぶ。

「やったよ!」とリルが跳ねる。

「あぅ、すごかったですわ!」とピヨニットが耳を立てる。



 モニタールーム


 男性がスクリーンを見つめ、「やはりこれは確定だな。セバスの全能力解放、星5アップデートの証拠だ」と呟く。


 脇田が「先輩、マザーAIが勝手に…!会議で大問題っすよ!」と叫ぶ。


 男性が立ち上がり、「緊急メンテを入れる。トップ集めて会議だ!」と宣言。


 スクリーンの光が彼の顔を照らし、遺跡の水晶が新たな光を放つ。

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