30話 わんわんカーニバル

(2035年4月10日・夜)

 

 浮島の遺跡の小部屋で、丘菟、アソン、リル、ピヨニット、セバスの5人は水晶からの「試練の第一段階クリア」のアナウンスを聞き、次の試練に備える。


 丘菟が「トランジット・コアに近づいてる気がする」と呟き、剣を握り直す。


 アソンが「何来ても俺の風でぶっ飛ばすぜ!」と扇を広げ、


 リルが「私も魔法で援護するよ!」とタクトワンドを構える。


 ピヨニットが「私がダートナイフでやっつけますわ、アソン様、丘菟様!」と気合を入れるが、ナイフを落とし「あぅ!」と慌てる。


「ピヨニットさん、お嬢様の前でご注意を」とセバスが冷静に言う。


 5人は通路の奥へ進み、遺跡の深部へと踏み出す。

 


 通路を進むと、突然視界が開け、広大な円形の闘技場のような空間が現れる。


 床は磨かれた黒い石で、天井は高く、壁には古代の紋様が刻まれている。


 中央には巨大な水晶が浮かび、周囲を青白い光が照らす。


 丘菟が「ここ、なんかやばそうだな」と呟くと、リルが「うん、雰囲気すごいね…」と少し緊張した声で言う。


 アソンが「試練って感じだな。来るぜ!」と扇を構える。


 ピヨニットが「私が先頭で戦いますわ!」とダートナイフを握るが、セバスが「お嬢様の安全を第一に、まずは様子を見ましょう」と提案する。



 水晶が突然強く光り、機械的な音声が空間に響く。


「第二試練を開始します。パーティーから2名を選び、試練に挑んでください。

 その他のメンバーは両手両足を拘束され、試練を見守ります。

 試練は無限に湧くコボルトの群れを相手に、選ばれた2名が戦います。


 2名が全滅した場合、拘束メンバーはステータスが半減され、遺跡の入口へ強制転送されます。

 3回全滅すると、パーティー全員が入口へ戻され、ステータス半減により半日戦闘不能となります。


 パーティー人数は5名。1名につき10分、合計50分間コボルトの無限湧きに耐える必要があります。

 5分ごとにコボルトリーダーが1体必ず加わり、最終的に9体となります。試練の準備をしてください。」


 

 アナウンスが終わり、5人は一瞬沈黙する。


「50分間コボルトの無限湧き…しかもリーダーが増えるのか」と丘菟が呟く。


「全滅3回でゲームオーバーって、キツいな」とアソンが扇を握り直す。


「でも、皆なら耐えられるよね!」とリルが拳を握る。


「私がダートナイフでコボルトを倒しますわ!」とピヨニットが気合を入れるが、ナイフをまた落とし「あぅ、すみませんですわ!」と慌てる。


「お嬢様、私が援護いたしますが、まずは選ばれる2名を決めましょう」とセバスが冷静に言う。


 丘菟が一歩進み、「ルール聞いた。俺はもちろん戦う側になる」と宣言する。


 剣を手に、迷いなく水晶を見据える。


「丘菟、さすがだね!でも誰がもう1人?」とリルが聞く。


 アソンが「俺の風魔法なら範囲攻撃でコボルトを一掃できるぜ」と名乗りを上げかけるが、その瞬間、水晶から新たな声が響く。


 機械的な音声ではなく、低く落ち着いた男性の声だ。


「セバースチャーンが指名されます。」


「え、俺じゃなくてセバス!?」とアソンが驚く。


「セバースチャーン…私のことでございますな。お嬢様、ご期待に沿うべく全力を尽くします」とセバスがレイピアを手に一礼する。


「丘菟様、共に戦うことになりました。ご武運を」と穏やかに言う。


 丘菟は「了解、セバスとなら心強いな」と頷くが、内心「なんで男の声で指名されたんだ?」と疑問を抱く。


 ピヨニットが「あぅ、私も戦いたかったですわ…」と耳を伏せ、


 リルが「丘菟とセバスなら大丈夫だよ!」と励ます。


 アソンが「チッ、俺の出番が…まあ、嬢様のセバスならコボルトなんて楽勝だろ」と扇を振る。

 

 水晶が再び光り、アソン、リル、ピヨニットの両手両足に光の鎖が巻き付く。


「うわ、動けない!」とアソンが叫び、「これ、ちょっと怖いね」とリルが言う。


「あぅ、私、じっとしてますわ!」とピヨニットが耳を震わせる。


 3人は闘技場の端に浮かび、空中で拘束される。



 丘菟とセバスは中央に立ち、水晶が「試練開始」と告げる。


 床が振動し、四方からコボルトの群れが湧き出す。


 灰色の毛皮に赤い目、錆びた短剣や棍棒を握った小型のモンスターだ。


「来るぞ!」と丘菟が剣を構える。


「お嬢様の名にかけて、丘菟様を援護しますございます」とセバスがレイピアを手に進む。


 コボルトが「ギャア!」と叫びながら突進してくる。


 丘菟が「ハァッ!」と剣を振り、2体を一気に斬り裂く。


 セバスが素早い突きでコボルトを貫き、「お嬢様にご迷惑はかけません」と冷静に戦う。


 コボルトは倒しても次々と湧き、5分後に大型のコボルトリーダーが現れる。


 赤い毛皮に鉄の斧を持ち、咆哮を上げる。


「リーダーか!」と丘菟が剣を構え直す。


 セバスが「丘菟様、リーダーは私が引きつけます。群れをお願いします」とレイピアでリーダーを牽制する。


 丘菟は「了解!」とコボルトの群れに突っ込み、剣を振り回す。


 拘束されたアソンが「セバス、かっこいいぜ!嬢様の誇りだな!」と叫ぶ。


 リルが「丘菟、頑張って!魔法使えないけど応援してるよ!」と声を張る。


 ピヨニットが「あぅ、丘菟様、執事長、すごいですわ!」と耳を立てる。


 10分が過ぎ、2体目のコボルトリーダーが現れる。


 丘菟とセバスは息を合わせ、群れを削りつつリーダーを牽制する。


「このペースなら耐えられる!」と丘菟が言うが、コボルトの数がさらに増え、圧迫感が高まる。


 セバスが「お嬢様の勝利のために、決して退きません」とレイピアを閃かせ、リーダーの斧を弾く。


 試練は続く。


 5分ごとにリーダーが増え、30分時点で6体になる。


 丘菟の腕に疲れが溜まり、セバスのレイピアもわずかに動きが鈍る。


「まだ20分…!」と丘菟が息を切らす。


「丘菟様、お嬢様の名にかけて私が支えます。もう一息です」とセバスが励ます。


 コボルトの咆哮が響き、試練の苛烈さがパーティーを試す。


 丘菟は「絶対耐えるぞ!」と剣を握り直し、セバスと共にコボルトの波に立ち向かう。

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