28話 虚ろなものは仲間を呼んだ
(2035年4月10日・夜)
エアルーン平原の夜空の下、丘菟、アソン、リル、ピヨニット、セバスが浮島の遺跡入口に集まる。前回、リルと2人で解放した時と同じく、ゴツゴツとした石畳の通路が広がる。松明の炎が薄暗い通路を照らし、壁に影が揺らめく。前回は静寂と暗さに緊張したが、今回は5人パーティーで賑やかさが増し、恐ろしさや心細さはあまり感じられない。「前と同じだな」と丘菟が呟き、剣を手に進む。アソンが「よし、俺の風スキル試すぜ!」と扇を手に軽やかに歩く。リルの桜色の髪が風に揺れ、ピヨニットが「私が先頭で戦いますわ、アソン様、丘菟様!」とダートナイフを構えるが、石に躓き「あぅ!」と叫ぶ。「ピヨニットさん、お嬢様の足元に気をつけてくださいませ」とセバスがレイピアを手に注意する。
10分ほど歩きながら会話を楽しむ。「前回ここでリルとモンスターと戦ったよな」と丘菟が言う。「うん!丘菟が剣で、私が魔法で頑張ったよね!」とリルが笑う。「今度は私が身体強化で前衛しますわ!」とピヨニットがダートナイフを握り直す。「お嬢様の私が風魔法で援護するからまかせな」とアソンが扇を広げる。「お嬢様のために私が前を切り開きいたします」とセバスがレイピアを構える。「このパーティーなら何でも来いだな」と丘菟が笑う。通路の冷たい空気が頬を撫で、石畳の音がコツコツと響く。「人数増えたから明るく感じるな」と丘菟が呟くと、「うん、皆がいるから心強いよ!」とリルが返す。「私が皆を守りますわ!」とピヨニットが意気込むが、また躓き、「あぅ、すみませんですわ」と照れる。
10分ほど進むと、小さな小部屋が現れる。「お、前回と同じだな」と丘菟が呟く。中央には蒼白い光を放つ水晶が浮かんでいる。リルが目を輝かせ、「これこれ!あったよね!綺麗だけど不思議だね、どう思う?」とピヨニットに振る。「私が思うにですわ、ただの飾りじゃないですわね。こんな大事な場所に置いてあるんですから、何か意味があるはずですわ!」とピヨニットが耳をピクピクさせる。セバスがカイゼル髭を撫で、「ふむふむ、飾りに着けられているにしては、中央に鎮座しているだけというのは不自然でございますな。お嬢様、このアイテムは重要かと存じます」と言う。アソンは扇を手に「ふーん」と見守り、「前回はどうしたんだ?」と聞く。「慎重に行こうって話して、リルと触らないでいた。でも今回は違う展開もあるかも」と丘菟が答える。
「じゃあ触ってみるか?何か起こるかもしれねぇし」とアソンが扇を振る。「うん、でも危ないかもしれないから、触る前に各自警戒してほしい」と丘菟が全員を見回す。「了解だぜ!風魔法で備えるよ」とアソンが扇を構え、「私が身体強化で前に行きますわ!」とピヨニットがダートナイフを握る。「お嬢様のために私が前衛を務めますございます。丘菟様もご武運を」とセバスが軽くサポートを約束する。「私も魔法準備するよ!」とリルがタクトワンドを掲げる。丘菟は深呼吸し、「よし、いくぞ」と呟き、水晶に手を伸ばす。指先が触れた瞬間、低い振動音が「ヴゥゥン」と響き、水晶から機械的な音声が放たれる。「現状の段階に進行が進んだデータがありますが、パーティーを維持しますか?維持される場合は破棄されます」と告げる。
丘菟は手を引っ込め、周りに目配せする。「誰か知ってる情報あるか?」と聞くと、アソンが「俺は初耳だな」と扇を振る。リルが「前回はここまでだったから分からないよ」と言う。ピヨニットが「あぅ、私もですわ…」と耳を伏せる。セバスが一歩進み、「恐らくでございますが、前回のボーン系のモンスターを討伐した所までの行動データと、今新たに解放後に侵入した我々がいる新しいパーティーが、データとして上書きされる仕組みかと存じます。お嬢様、丘菟様が触れたことで進行状況の選択を迫られているのでございますな」と分析する。「成る程」と丘菟が合点が行く。「前回の続きをこのパーティーで上書きするか、新しく始めるかってことか」と確認する。「その通りかと存じます、丘菟様」とセバスが頷く。
丘菟はリルに目を向け、「またモンスターと戦うかもしれないけど、いいよね?」と確認する。リルは「うん!皆が居ればあっという間だから問題ないよ!私も強くなったし!」とシュシュと拳を握り、パンチを繰り出す。「さすがリルちゃん、頼もしいですわ!」とピヨニットが拍手する。「嬢様も風魔法で負けませんぜ!」とアソンが扇を広げる。「お嬢様の勝利を私が支えますございます」とセバスが言う。「オッケー、このパーティーを維持してもう一度挑むよ!」と丘菟が気合を込めて水晶に答える。「パーティーを維持します」と宣言すると、水晶が強く光り、「データが上書きされました。試練を再開します」と音声が響く。
部屋が一瞬揺れ、低い唸り声と足音が近づく。「来たか!」と丘菟が剣を構える。通路の奥から5体の影が現れる。前回のボーンウォーリアーとボーンマジシャンに加え、新たな3体だ。ボーンウォーリアーは前回同様、バスターソードを片手に骨だけの体を動かす。ボーンマジシャン(前回仕様)は両手でタクトワンドを握り、ボロボロのローブを纏う。新たなボーンマジシャンは両腕がなく、口にボロボロの扇を咥え、色褪せた緑のローブを着て靴はない。ボーンフェンサーは羽根帽子をかぶり、革鎧を着て、両手にレイピアを一本ずつ持つ。ボーンアサシンは下顎がなく、獣人族の長い八重歯と骨の尻尾を持ち、両手にダートナイフを四本ずつ握り、頭巾の耳穴二箇所が空いている。「俺達と同じ数だな」と丘菟が呟く。「なら俺の風でぶっ飛ばすぜ!」とアソンが扇を振る。
「フレイム・バースト!」とリルが魔法を放ち、炎が前回のボーンマジシャンを襲う。ボーンマジシャンがタクトを振って炎を返すが、アソンが「ウィンド・スラッシュ!」と扇で切り裂き、風で炎を散らす。「お嬢様、見事でございます!」とセバスがボーンフェンサーに斬りかかる。レイピア同士が「キン!」と火花を散らし、セバスが素早い突きで革鎧を貫く。「私がボーンアサシンを止めますわ!」とピヨニットが身体強化スキルを発動し、ダートナイフを投げる。ナイフが骨に当たり「カツン」と跳ね、アサシンが反撃でナイフを投げ返す。「あぅ!」とピヨニットが躓き、アソンが「ピヨニット、気をつけろ!」と風でナイフを逸らす。丘菟が「俺がボーンウォーリアーだ!」と斬りかかり、剣でバスターソードを受け止める。新ボーンマジシャンが扇を咥えて風を起こすが、アソンが「ウィンド・ストーム!」と扇で対抗し、風がぶつかり合う。
戦闘は連携で進む。リルの魔法が前回のボーンマジシャンを焼き、アソンの風が新ボーンマジシャンを押さえ、セバスがボーンフェンサーを仕留める。ピヨニットがボーンアサシンにナイフを連投し、丘菟がボーンウォーリアーの頭蓋を砕く。5体が塵と化し、「やったぜ!」とアソンが扇を閉じる。「皆がいるから楽勝だったね!」とリルが笑う。「私が役に立てましたわ、アソン様、丘菟様!」とピヨニットが耳を立てる。「お嬢様の勝利、見事でございました」とセバスが褒める。「これなら次も余裕だな」と丘菟が息を整える。水晶が再び光り、「試練の第一段階をクリアしました」と音声が告げる。「まだ続くのか?」とアソンが言う。「トランジット・コアに近づいてる気がする」と丘菟が呟き、冒険がさらに深まる。
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