17話 今度の報酬なんだろな?

ストーンガーディアンが白い塵と化した広間に、勝利の余韻が漂う。丘菟が「やったな!」と笑顔で手を差し出すと、リルが「うん!」とハイタッチ。アソンが「ふふ、私の美貌も輝いたわね」と扇を閉じて手を合わせ、ピヨニットが「丘菟様、お嬢様、すごいですわ!」と小さく跳ねてタッチ。セバスが「見事な戦いでございました」と穏やかに手を差し出し、丘菟が「セバスさんのダンスも最高だったよ」と笑いながら応じる。一同が互いを讃えるようにハイタッチを交わし、広間に和やかな空気が流れる。

丘菟が剣を鞘に収め、「パーティー構成によって試練って、大まかな形は変わらなくても中身が結構違いが出るものなんだね」と感慨深く呟く。リルが「そうだね!浮島の遺跡頂上でストーンガーディアンと私達、初回は戦ったもんね」と目を輝かせ、「うんうん」と頷く。アソンが扇で肩をポンポンと叩きながら、「あぁー、確かにパターン数は星とは言えないけど色々あるらしいわね。リンク・ワールドの奥深さってやつかしら」と言う。ピヨニットが耳をピクピクさせ、「現実でお嬢様が見ていた掲示板?という、沢山の方が書き込みされてるサイトですね。あそこに冒険の記録がいっぱいあって、私も読んでみたいですわ」と興味津々。セバスが手首をもう片方の手でニギニギしながら、「いろいろな方が冒険される話を読むのは、私も老骨ながらたぎり致しました。いやはや、若返った気分ですな」と笑う。一同が思い思いの感想を語り合い、戦いの熱が少しずつ冷めていく。

その時、「試練クリア、おめでとうございます」と機械的なアナウンスが広間に響く。同時に、丘菟とアソンの手元に淡い光が集まり、アクセサリーが現れる。丘菟の手には、枝が絡み合うように一周した装飾のリングが。アソンの手には、花弁のような模様が刻まれたリングが輝く。丘菟が「おっと、これで前のリングと違う形のまたリング来たか」と手元の装飾を見やる。リルが「ねぇねぇ、今度はどんな能力なの!?」と興味深々で丘菟の肩越しに覗き込む。「ちょっと待って、鑑定してみるよ」と丘菟が端末を取り出し、リングをスキャンする。

「えっと…『自然の守護リング』だって。防御力が少し上がって、回復魔法の効果が10%アップするみたい」と丘菟が読み上げると、リルが「わぁ!私にぴったりじゃん!丘菟、貸してよ!」と手を伸ばす。丘菟が笑いながらリングをはめる振りをしてリルの顔を見やるが、「ちょっとした冗談だよ」と残念がるリルに笑い、「譲渡する!」とリングの所有権を移譲する。「リルはさ、ヒールは使えるけど攻撃魔法に長けてるから、それ以上の回復スキルは覚えられないし、戦力アップの為にさ!」と理由を並べる。だが、アソンが扇をパタパタしながら「ふふ、素直になれないお年頃なのかな?」と温かい眼差しを送り、ピヨニットが「お嬢様、私もそう思いますわ。丘菟様、可愛いですわね」と頷く。セバスが「いやはや、若者の情熱は微笑ましいですな」と穏やかに目を細める。リルはそんな視線に気づかず、「うん!これ着けてもっと丘菟をサポート出来るように頑張るからね!」とリングをはめて拳を握る。

丘菟が「まぁ、そういうことだから」と少し照れながら頬を掻く。アソンが自分のリングを見せ、「私の『風花のリング』は攻撃速度が上がって、風属性の魔法が強化されるわ。美貌にふさわしい能力ね」と扇をパタパタ。続けて「掲示板でも、試練の報酬はパーティー構成で変わるって書いてあったわ。丘菟達が一緒だから、私にも良いものが来たのかもね」と言うと、ピヨニットが「お嬢様、それって運命ですわ!丘菟様と一緒ならもっとすごい冒険ができますよ!」と目を輝かせる。セバスが「ふむ、私達従者は報酬がないのが残念ですな。だが、お嬢様達の活躍が何よりの報酬でございます」と穏やかに微笑む。

丘菟が「確かに、パーティーが増えると試練も変わるし、報酬も面白いね。次は何が待ってるのか楽しみだよ」と広間の奥を見やる。リルが「うん!私ももっと強くなって、丘菟と一緒にすごい冒険したい!」と拳を握る。アソンが「ふふ、次も私の美貌で圧倒してあげるわ」と意気込む。一同の会話が弾む中、もう時間も遅く、明日に影響が出そうだと気づく。「そろそろ戻ろうか」と丘菟が提案し、皆で広間の中央に現れた魔法陣に乗る。「シュゥゥ…」と光に包まれ、浮島の遺跡の表へと転移する。

遺跡の入り口に戻ると、碑石が再び輝き始めている。丘菟がアソンを見て、「合流前と同じように碑石が輝いてるな」と笑い、アソンなら解放のあの手の台詞は得意だろうから恥ずかしがらず逆に誇らしげに言いそうだし問題なさそうだ」と笑う。


「アソン、楽しくてログアウト時逃して明日の学校遅刻するなよ!」と軽く肩を叩く。アソンが「ふふ、大丈夫よ。私、美貌で遅刻もカバーするから」と扇をパタパタ。ピヨニットがリルに近づき、「リル様!」とハグして「またご一緒いたしましょうね」と耳をピクピクさせる。セバスが「丘菟様、リル様、お疲れ様でした」と一礼し、丘菟が「二人とも、ありがとうな」と返す。丘菟がリルに「明日の朝はいつもの時間よりちょっと早くから声かけてくれよ、中々起きれないかもしれないし」と頼み、「ログアウト!」と唱える。アソン、ピヨニット、セバスも次々に「ログアウト!」と唱え、現実へ暗転する。

現実に戻った丘菟は、ベッドから起き上がり、「ふぅ」と息をつく。キッチンで水を飲んだり、トイレを済ませたりして就寝準備を整える。「今日も心地よく寝れそうだ」と心の中で思い、ベッドに潜り込んで眠りにつく。一方、現実の端末からホログラムでリンク・ワールドを見ていたリルが、「丘菟、お疲れ様。ゆっくり休んでね」と呟き、端末をそっと閉じる。


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