14話 ハイチーズ、イエーイ

浮島の遺跡に到着した一行に、空から怪しい光が降り注ぐ。「何だ!?」と丘菟が盾を構え、リルが「うわっ!」と目を覆う。アソンは扇を手に「何かしら?」と警戒し、セバスが「お嬢様、お気を付けを」と一歩前に出る。ピヨニットは「ひゃっ!」とアソンの裾を掴む。一同が身に異変がないか確認するが、特に何も起こらず、「…異常なし、か」と丘菟が盾を下ろす。アソンが「ふぅ、気を引き締めて行きましょ」と扇を閉じ、一行は遺跡の中へと進む。

遺跡の壁が優しく光を放ち、通路を照らす。丘菟は「前に来た時は暗くて不安もあったけど、この光なら安心して進めるな」と呟き、リルが「うん、ドキドキしたけど今は平気!」と笑う。アソンは「趣があって良いね。遺跡っぽいわ」と感心し、セバスが「情緒ありますな。お嬢様に相応しい場所でございます」と頷く。ピヨニットだけは「ポタッ」と水滴が落ちる度に「ビクッ!」と肩を震わせ、アソンの服の裾を掴みながら「お、お嬢様…!」と必死についていく。一行は丘菟を先頭に、緩やかな光に導かれながら奥へ進む。

やがて、通路が開けて大きな広間に到着する。「バッ!」と現実の光源のような明るさが一同の目を襲う。丘菟とアソンが「うわぁ、眩し!!」とハモり、何処か出来合いの台詞のような響きにリルが「ぷっ」と笑う。セバスが「成る程、先程聞いたギミックの一つですかな?」と冷静に呟き、リルとピヨニットは「明るいね!」と目を丸くしてはしゃぐ。一同が互いに感想を述べ合う中、中央の中空に文字が浮かび上がる。「丘菟、リル、アソン、ピヨニット、セバースチャーン。5人の並んだ姿の投影写真とパズルを15分で完成せよ」と記され、丘菟達の姿が光のシルエットとして映し出される。

同時に、「ゴゴゴ…」と音を立てて会議室のテーブルほどの大理石製の台がせり上がってくる。落ち着くと、正方形の木製ピースが300個、「バラバラ」と台に落ちてくる。台の端には「スタート」と「ストップ」のボタンも見える。丘菟が「あれ、僕らが挑戦したのより難易度上がってない?」とリルに言うと、リルが「人数の関係かな?それとも私達2回目だからかな?」と首をかしげる。アソンが「ほーん、良く分からないけど完成させれば良いんでしょ?」と楽観的に笑い、セバスとピヨニットが「仰る通りで御座います」と声を揃える。アソンが「うむ!よーいスタート!」とボタンを押し、パズルが始まる。

丘菟が「右端は僕の盾だな」とピースを置き、リルが「ここ、私のタクトワンド!」と嵌め、アソンが「私の扇はここよ」と次々進める。セバスが「ピヨニットさんの耳、ここでございます」とサポートし、ピヨニットが「執事長、私の尾はこっちです!」と楽しげに返す。連携はスムーズで、10分掛からずに完成。「できた!」と丘菟がストップボタンを押すと、投影写真とピースが一致し、「カチッ」と音がして光が消える。アソンが「数はなんたらかんたらだよ!兄貴!兄貴居ないけど!」と意味不明な叫びを上げ、一同が「何!?」と笑う。特にハラハラする展開もなく、第一の試練をクリアした。

再び薄暗くとも照らされた通路を進む。先程まで水滴にビクついていたピヨニットが、「♪ララ~」と鼻歌を歌いながら「あたしについてきてください!」と先導。一同はニヤニヤしながら「はいはい」とついていく。また大きな広間にたどり着くが、今度は明かりが多少明るくなる程度で、夜に街灯の近くにいるような雰囲気だ。「ふぅ、また広間か」と丘菟が呟く中、広間を挟んだ向こう側の暗闇から、「グルル…」と狼達の唸り声が響き、「ドドド…」と地面を蹴るような足音が近づいてくる。第二の試練が始まる気配に、一同は息を呑み、構えを取る。


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