13話 AI達はどう思ってるの?

レジャーシートに座る丘菟は、膝を抱えて考え込む。「チュートリアル専用か…でも、51200匹って数字がまだ引っかかるな。個別マップなら僕が倒した分だけのはずだけど」と呟く。その探求する姿勢に、リルが「あ!」と手を叩き、「丘菟、ママから言われたこと思い出したよ!」と話し始める。「ママがね、初めての浮島の遺跡へ向かわずに、ずっと鍛錬ばかりで決まってログインしてるユーザーは丘菟しかいないって。このままじゃまずいんじゃないかって、浮島の遺跡への探索を促すように頼まれてたの。で、4月7日に遺跡へ行くことを提案したんだ!」と目を輝かせる。

アソンが扇で口元を隠し、「リルって可愛らしく無邪気なのに、苦労してるのね」と巫山戯るように笑う。丘菟は「いつも言わなかったのに急に言われたのは、そういうことか」と納得し、「確かに、僕ログインしてからずっとここで兎狩りしてたし、4月7日にガルド達と初めての浮島の遺跡をクリアして充実感もあったし、アソン以外のフレンドも出来たのもそのお蔭かも」と頬を掻く。セバスが「その点、お嬢様は何でも貪欲に現実で情報収集しますからなぁ」と目尻に皺を寄せて言う。アソンが「ふふ、当然よ。この美貌と知恵は現実でも輝いてるんだから」とドレスを軽く揺らす。ピヨニットが「執事長が加わってから、あたしのお手伝いが減りましたので残念です」と少し拗ねたように言うと、セバスが「そんな事言わず、従者らしく盛り立てて参りましょう」と微笑む。

丘菟は内心、「覇権争いとは違うけど、2人のAIになると色々と問題も出そうだな」と考える。ふと顔を上げ、「そういえば、アソン!現実の性別とか見た目も違うけど、どう説明したりしてるの?僕の方は見た目だけで、リルはこの見た目も現実の姿も好いてくれるけどさ」と聞く。アソンは扇をパタパタ振って、「私の場合?現実じゃ男だけど、ここでは美貌の貴婦人よ。友達には『ゲーム内ではなりたい自分になる』って言ってるわ。別に隠してないし、丘菟みたいに深く考えないだけよ」と笑う。セバスが「ほう、お嬢様のそのお言葉、実に興味深いですな。現実と仮想の境界を超えるその姿勢、私のようなAIには理解しがたい人間の柔軟さでございます」と紅茶を啜りながら感嘆する。ピヨニットが「お嬢様、現実でも素敵ですけど、ここでの貴婦人姿も大好きですわ!性別なんて、私にはお嬢様がお嬢様なだけで十分です!」と耳をピクピクさせて目を輝かせる。

「まぁ、流石に現実ではアソンさんと周りに人がいたら呼ばせてるけど」とアソンがボソボソ珍しく呟く。リルが「丘菟は優しいし、大きいかアタシみたいな感じかだけで、中身は丘菟だし気にしないよ!」と急に立ち上がり、腰に手を当てて言う。丘菟が「ありがとうリル、気恥ずかしいよ!座って座って」と慌てて促すと、リルは「えへへ」と満面の笑顔で座り直す。アソンが「ふふ、リルの丘菟贔屓はすごいわね。私には厳しいのに」とからかうと、リルが「アソンは美貌ばっかり言うから!」と返す。一同が笑い合い、レジャーシートに和やかな空気が流れる。

丘菟が「でも4月7日に提案されてたってことは、僕が初めての遺跡をクリアした日のことだろ?普通は何日位で向かうものなんだ?」と呟くと、リルが「うん、ママが『丘菟が鍛錬好きだから急かしてね』って。ビックラビット倒したし、アソンがまだ浮島の遺跡クリアしてないし、パーティーも組んでるし、解放前の浮島の遺跡に入れるよ!」と提案する。アソンが「確かに、ここで兎狩りしてるより面白そうね。私の美貌も浮島の遺跡で輝かせるのも悪くないわ」と目を輝かせる。ピヨニットが「お嬢様、遺跡でもお手伝いしますね!」と耳をピクピクさせ、セバスが「私もお嬢様の為に尽力いたします。遺跡探索なら紅茶の準備も必要ですな」と言う。丘菟は「僕も手伝いができるよ。初めての浮島の遺跡はクリアしてるから、少しは慣れてるし」と頷く。

「でもさ、次の段階の浮島の遺跡って何があるんだ?ママから何か聞いてる?」と丘菟がリルに聞くと、リルが「うーん、詳しくは聞いてないよ。私、初めての浮島の遺跡は丘菟と一緒に行ったけど、次の浮島の遺跡はまだ骸骨としか戦ってないし、ママが『チュートリアル終わりの次の試練みたいな場所』って言ってただけ。強い敵とか謎解きがあるかもね!」と答える。アソンが「ふふ、試練なら私の知恵が光るわね。丘菟は剣振り回してればいいし」と冗談めかす。丘菟が「いや、謎解きも頑張るよ。アソンに全部任せるわけにはいかないし。初めて行った時にも少し解いたからな」と笑う。ピヨニットが「丘菟様、謎解きなら私も少しはお役に立てますよ!」と胸を張り、セバスが「私も執事の知恵でサポートいたします」と続ける。丘菟は「頼もしいな。じゃあ、浮島の遺跡へ行こう」と端末を取り出し、「現実時間もクリアしたら寝る時間だから駆け足で行こう」と提案する。浮島の遺跡への期待を膨らませながら語らいは終わり、一同は「イグジット!」と唱え、浮島の遺跡へと移動した。


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