6話 穴の主の風貌

丘菟はエアルーン平原の草むらを歩き、風に揺れる緑の波を見やる。アソン、リル、セバス、ピヨニットと5人での冒険は賑やかだ。アソンが「ふふん、この美貌が平原を彩るわね」と鼻歌混じりに進む中、たまたま石を蹴ろうとしてつまずき、「あっ!」とパンプスが飛んでしまう。「あらやだ!」とアソンが叫ぶと、セバスが「はい、お嬢様がお転婆ゆえに怒った次第でありますが…」と冷静に拾いに向かう。草をかき分けると、セバスが「おや?」と立ち止まる。「発見したのは私めに御座います。こちらに大きな巣穴が」と報告する。アソンが「たまたまパンプスが飛んでっちゃって、セバスに回収してもらったら大きい巣穴を見つけてさぁ〜!」と笑う。ピヨニットが「アタシは警戒を兼ねてお嬢様の隣におりました!」と胸を張る。丘菟とリルが「ふむふむ」と頷き合う。

丘菟は顎に指を当て、「僕らも始めてから毎日ここで冒険してたのに気づかなかったなぁ。何かしらの条件があったのか、アソン達が倒した数でワールド内の角兎討伐数が一定数越えたのかもしれないね」と推測する。アソンが「この美貌ゆえに運営がボーナス的な感じでポップさせたんじゃないか?知らんけど」とくくくと不敵に嗤う。丘菟は「まあ、それもあり得るか」と苦笑しつつ、先を進むと、見るからに子供がすんなり入ってしまいそうな大きなぽっかり空いた穴を見つける。一同が足を止め、丘菟が「これだけの大きさとは…角兎が角を除いても50cmだから、3倍超える大型なのかもしれないな」と呟く。リルが「面白そうな丘菟!覗いてみる?入ってみる?」とワクワクして落ち着きなく動き回る。ピヨニットが「リルちゃん駄目ですよ!無謀にそんな事したら巣穴から出てきて角が刺さっちゃいますよ!」と慌てて止める。

セバスが「ははは、お若い方は元気でよろしいですな。ピヨニットや、ダートナイフを一つ貸してくださいな」と笑う。ピヨニットが「解りました、執事長」と持ち手を向け、刃を自分側にしてダートナイフを渡す。セバスが「有り難う。準備が宜しかったら釣れるか試してみますので、皆さんも警戒してくださいませ」と言う。一同が見合い、頷き合うのを確認したセバスが「では参ります」と巣穴の直上へジャンプする。「ヒットスロー!」と掛け声と共にダートナイフを投げ込むと、ナイフが巣穴に吸い込まれるように消える。セバスは空中で反動を利かせたように元の位置へ降り立ち、カイゼル髭を撫でながら「腕が鈍っていなければ、この巣穴の主にはダメージかすり傷程度でも当たって、怒って出てくるでしょうなぁ」と呟く。

次の瞬間、「ピギー!」と怒りとも非難とも取れる甲高い音が巣穴から響く。砂煙を上げながら、一匹の大きな兎と通常サイズの角兎5匹が飛び出してきた。大きな兎――ビックラビットは角がなく、四足歩行ではなく二足で立ち、こちらを恨むように睨みつけてくる。体長は150cmを超え、筋肉質な脚が地面をしっかりと踏む。その前に守るように、角を持つ通常の角兎5匹が並ぶ。丘菟が「うわっ、レアモンスターだ!」と剣を構えると、アソンが「ふふん、この美貌が引き寄せたに違いないわね!」とドレスを翻す。リルが「大きい兎さんだね!やっちゃう?」とタクトワンドを握り、ピヨニットが「御主人様の為に!」とダートナイフを手に持つ。セバスが「御意に」とエストックを抜き、一行が戦闘態勢に入る。平原に緊張感が漂う。


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