5話 会話も続き冒険も続く
丘菟はエアルーン平原に立ち、眩しい陽光に目を細める。アソンと一緒だからか、たまたまか、夜だったはずの平原が昼間に変わっている。風が草を揺らし、マントが軽くはためく。丘菟は端末を操作し、アソンにパーティー申請を送る。アソンが「ふふん、了解よ!」とドレスを翻して承認すると、画面に「パーティー結成」の文字が浮かぶ。丘菟は改めてアソンを見やる。メガネをかけていないが、藤原と佐藤に似た顔の造形とスタイルが目立つ。胸元だけはアソンの好みが見え隠れするほど盛っていて、丘菟は内心「やりすぎじゃない?」と思う。だが、うんうんと一人頷き、「お嬢様だから紅い服とか想像してたけど、老緑で地味なはずのドレスがよく似合うし引き立ててるね」と言う。
アソンが「でしょでしょ!内から溢れる美が、服というプラス効果がなくとも私を輝かせるのよ!」と胸を張る。丘菟は「はいはい、そうですね~」と適当に流しつつ、「それとさ、AIの女の子はどうしたの?」と聞く。アソンが「あぁ、そういえばインしたのに呼んでなかったねー」と呟き、手をパンパンと叩く。すると、黒を基調とした執事服を纏った老紳士が現れる。白髪をオールバックに整え、三白眼が鋭く、カイゼル髭が威厳を放ち、白手袋をはめた手が静かに下がっている。「お嬢様、お呼びでしょうか」と低く落ち着いた声で言う。アソンが「うんうん、呼んだよセバースチャーン。あぁ、丘菟、伸ばすとこが何かに抵触しそうだから追加してるけど、セバスで呼んであげてね」と笑う。丘菟は「分かってるよ、アソン。よろしくお願いします、セバスさん」と返す。セバースチャーンが「そんな私、執事で皆様に仕える者ですので、セバスとお呼びください、丘菟様」と丁寧に頭を下げる。
リルが「セバースチャーン!」と元気に挨拶し、セバスが微かに微笑む。丘菟は「さて、兎狩りを始めようか」と言うが、その時、アソンの隣にもう一人が現れる。「御主人様ぁ、メンドのピヨニットをお忘れになるなんてあんまりですわぁ!」と駄々をこねるように泣く声。小柄な153cmの猫獣人族の少女だ。眉が少し下がりめの奥二重の目、薄いオレンジ色の髪はオカッパに近いが、項近くの一房だけ三つ編みで腰まで伸びている。猫耳がピクピク動き、細い尾はヴィクトリア調のメイド服の中で片足の太ももに巻かれている。「えっ?」と丘菟が目を丸くすると、アソンが「ふふふ、やっとガチ目に驚いてくれたか」と不敵に笑う。「サプライズってのもあるけど、お嬢様でメイドしか連れてないのはイメージ的に足らないと思ってな」と続ける。
「AIパートナーって2人目から5000円で解放だよね?AIもリセットかと思ったけど、ピヨニットはそのままってことは拡張したの?アソン!」と丘菟が詰め寄る。アソンが「あと、前と同じようにバックボーン設定つけたから、拡張と合わせて2人で7000円なり…。後、2人目の月額使用料が5月末から500円、ネット配線料と一緒に引かれるけど、親父だから分からんだろうなぁ」と悪戯っぽく言う。丘菟は「少額とはいえ、アソン、悪い顔してるね」と呆れ顔だ。話が切れるのを待っていたピヨニットが「丘菟様、リルちゃん、お久しぶりで御座います。また宜しくお願いします」と丁寧に挨拶する。丘菟は「ピヨニット、困り者の主さんだけど、セバスさんと頑張って支えてあげてね」と笑う。ピヨニットが「勿体ないお言葉、有り難うございます」とスカートの裾を持ちお辞儀すると、チラっと両足にダートナイフが装備されているのが見える。「お、お前…」と丘菟が呟くが、ピヨニットは無垢な笑顔だ。
リルが「ピヨニットちゃん、久しぶり!」と手を振ると、ピヨニットが「リルちゃん、お元気そうで何よりです」と返す。丘菟は剣を手に、「さてと、挨拶も済んだし、挑もうか」と言う。アソンが「ふふん、大きい兎さんを3人でやっつけるわよ!」とドレスを翻し、セバスが「御意に」とエストックを構える。ピヨニットが「御主人様の為なら!」とスカートからダートナイフを取り出し、リルが「うん、頑張るよ!」とタクトワンドを握る。平原の風が5人を包み、新たな戦いの幕が上がる。
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