20話 新情報、夜のフィールド

 エアルーン平原に立つと風がマントを軽く揺らし、剣の重みが手に馴染む。


 リルが隣で桜色の髪を揺らし、「丘菟、誰か来るかな?」と青い瞳をキラキラさせる。


 丘菟は腕の端末を操作し、「ガルドのログイン状況、確認してみよう」と呟く。


 画面に「オフライン」と表示され、「今日はこの時間、ログインしてないみたいだね」と言うと、リルが「えー、残念!ガルドさん、また会いたかったのに」と肩を落とす。


 丘菟も「昨日助けてくれたしな」と少し寂しげに笑う。


 ふと空を見上げると、ワールド内の太陽が西に傾き始め、オレンジの光が草原を染めていく。現実の時間とは違う流れだ。


「そういえば、リル。10日も遊んできたけど、夜にログインしたことってなかったね。偶然かな?」と聞く。


 するとリルが目を丸くして「そういえば言ってなかったも!?」と驚く。


「実はね、浮島の遺跡を攻略したユーザーに追加される要素なんだよ!夜が遊べるの!」と得意げに説明する。


 丘菟は剣を手に持ったまま、「ちょっとリル、そういうのは相棒なんだから先に教えてよ」と軽く抗議する。


 リルがウィッチ帽子を直し、「あんまり慣れてないのに暗くなったら驚いちゃう子もいるから、そうママ達が設計したんだってさぁー」と笑う。


 ママとは運営や管理者AIで、リルにとっては生みの親だ。


「なるほどね」と丘菟は顎に人差し指と親指を当てて頷く。


「それで、夜になると何かあるの?見た目だけだったり?」と聞くと、リルが「ううん」と首を振る。


「遺跡にいた狼が出たり、フィールドの角兎や大鼠とかが2割ほど強くなるんだよ!私、負けないけどね!」とドヤ顔で胸を張る。


 丘菟は「よく分かったよ、ありがとうリル!」と笑い、剣を握り直す。


 話している間に空が藍色に変わり、星が瞬き始める。


「それじゃあ、安全地帯から出て戦おうか」と提案すると、リルがタクトワンドを手に「行くよ!」と目を輝かせる。


 夜の草原が二人を待っている。


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