16話 部活の面々、女生徒

 部室のドアを開けると、アソンが「丘菟、遅かったな!」と笑顔で迎える。


 彼は内部生で、中学からこの学校に繰り上がりで進学したため、入学したての後輩にも顔が利くようだ。


 短い黒髪が少し跳ね、背の高さゆえ目立つ。


 丘菟は試験を経てこの高校に入学したため年下の知り合いはおらず、アソンの社交性に少し圧倒される。


 部室には同級生の女生徒2人と後輩女子3人が集まっていて、机の上には原稿用紙やペンが散らばっている。


 丘菟の家庭は賃貸マンション暮らしだったが、高校入学に間に合うようこの街へ引っ越してきた。


 父親の転勤は1年次の夏の盛りになる前に決まり、夏休みに入る前に他県の支部がある街へ去っていった。


 それ以来、母も父に付き添い家は丘菟一人だ。


 料理部には母の「ちゃんと食べてね」という言葉がきっかけで1年次の二学期から所属したが、実質的に今訪れている文芸部がメインの部活だ。


 アソンが「今年は部誌をグレードアップさせたいんだ」と熱弁を振るう中、丘菟は静かに席に着く。


 同級生の藤原美咲(フジワラ ミサキ)はショートカットの髪を耳にかけ、「でも、デザイン増やすと大変じゃない?」と冷静に指摘する。


 もう一人の同級生、佐藤遥香(サトウ ハルカ)は眼鏡をかけつつ、「テーマは絞った方がいいかも」と呟く。


 後輩の1年生、林彩花(ハヤシ アヤカ)は長い髪をポニーテールにし、「先輩たちのアイデア、すごいですね」と目を輝かせる。


 同じく後輩の小林真緒(コバヤシ マオ)は小柄で、「私、挿絵描くの頑張ります!」と笑う。


 3人目の後輩、田中梨乃(タナカ リノ)は少し大人しめで、「文章書くの苦手だけど…手伝います」と控えめに言う。


 アソンが「みんなでやれば大丈夫だよ!」とまとめると、部室に笑い声が響く。


 リルのホログラムが腕の端末から浮かび、「丘菟は友達いっぱいだね」と囁く。


 僕は「まあね」と小さく返し、原稿用紙を手に持つ。


 現実での繋がりが、ゲームとは違う温かさをくれる。

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