15話 文芸部活動、アソンと女生徒
本日の部活は月2回、あるいは5週ある月には3回ある料理部の活動ではなく、文芸部の活動だ。
丘菟は鞄を肩にかけ、文化部棟の廊下を進む。
古びた木の床が軋み、春の風が窓から流れ込む。部室の前に差し掛かると、聞き覚えのある声が響いてきた。
昨日メッセージをくれた守善朝臣、通称アソンだ。
「いや、だからさ、今年はもっと誌面を面白くしたいんだよ!」
と熱っぽく話している。
アソンは背が高く、短い黒髪が少し跳ねている。別のクラスだけど1年時同じクラスだった縁で、文芸部でも顔なじみだ。
その周りでは数人の女生徒が「でも、アソン先輩、それって手間かかるよね」
「テーマ決めるの大変そう」と笑いながら応じている。
部室のドアが見える位置まで来ると、彼女たちの楽しそうな雰囲気が漂う。
僕は少し立ち止まり、彼らの声を聞く。
アソンは部誌の編集に熱心で、去年もアイデアを出し合ったことを思い出す。
リルのホログラムが腕の端末から小さく現れ、「賑やかだね」と囁く。桜色の髪が揺れ、ウィッチ帽子が可愛らしい。
「うん、いつものこと」と小さく呟き、部室へ向かう足を再び進める。
ドアに手をかけると、アソンが気づき、「お、丘菟!やっと来たか」と笑う。
女生徒たちが「丘菟くん、お疲れ~」と軽く手を振る。
僕は「うん、お疲れ」と小さく返し、部室に入る。
机には原稿用紙やノートが散らばり、壁には去年の部誌が飾られている。
現実の僕は騒がしさに慣れないけど、アソンの明るさが少しだけ心地よい。
リルが「文芸部って楽しそうだね!」と囁き、僕は内心で頷く。
部活が始まる前のこの時間が、現実での小さな居場所だ。
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