13話 朝、リルの現実支援
朝、カーテンの隙間から差し込む陽光で目が覚める。
2035年4月8日。枕元の目覚まし時計が軽く振動し、リルの小さなホログラムが飛び出す。
「おはよう、丘菟!今日も元気にね」と桜色の髪を揺らし笑う。
彼女は時計から光の線を描き、僕の手首に着けた腕時計型端末へスーッと移動する。
「今は2035年。AIはゲームの中だけじゃなく、予約すれば現実でも一助になってくれるよ。まぁ、物理的にはまだまだ難しいらしいけど」と続ける。
青い瞳が輝き、ウィッチ帽子が揺れる。欠伸を噛み殺し、僕はベッドから起きる。
父の転勤で両親が不在の家は静かだ。
窓を開けると、春の風が部屋に流れ込み、カーテンが軽く揺れる。
パンと紅茶の軽い朝食を用意し、トースターの音が響く。紅茶の香りが漂い、小さなテーブルに座って外を見る。
桜の花びらが風に舞い、遠くで鳥の声が聞こえる。
食後、制服に着替えて鞄を持つと、誰もいない家に「行ってきます」と呟く。
リルが腕の端末から小さなホログラムで現れ、「さぁ~行こー」と出発を後押しする。桜色の髪が揺れ、笑顔が温かい。
玄関で靴を履き、扉を閉める音と鍵をかける音が静かに響いた。
春の風を感じながら、学校への道を歩き始める。15分ほどの道程は、リルとの会話で賑やかだ。
「昨日はガルドと楽しかったね」と彼女が言うと、「うん、フィアも可愛かった」と返す。
端末のホログラムが風に揺れ、春の日差しが優しい。
学校が見えてくると、リルが「頑張ってね!」と笑う。
僕は小さく頷き、校門をくぐった。上履きに履き替え、2-Bの教室へ向かう。
廊下側5列目の一番前の席に座り、小さなため息をつく。
背格好の割に学年で早生まれの僕は、今年の誕生日をもう迎えている。
現実の自分が少し頼りなく感じるけど、リルとの時間がそれを和らげる。
「また帰り道にね」と告げると、ふよふよ浮かんでいたリルがビシッと敬礼してホログラムが消えた。
教室の喧騒が遠く感じられる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます