12話 メッセージ、新学期への思い

 風呂から上がると、濡れた髪をタオルで拭きながら部屋に戻る。


 ボブカットの髪が首に張り付き、少し冷たい。


 窓の外では春の夜風が木々を揺らし、静かな音が聞こえる。


 スマホを見ると、メッセージアプリに通知が来ていた。


 送り主は守善朝臣(シュゼン アサオミ)、通称アソンだ。別のクラスだが1年時は一緒だった友人で、文芸部でも顔なじみ。


「明日から部活始まるけど、出るか出ないかどっち?」と書いてある。


 画面を見つめ、少し考える。アソンの明るい声が頭に浮かぶ。


「行くよ。話もしたいし」と書き込んで送信。


 返事を待たず、ベッドに潜り込む。


 枕に頭を沈めると、遺跡での戦いやガルドとのフレンド登録が頭をよぎる。


 ガルドの傷跡のある笑顔、リルの元気な声、フィアの小さな羽根。ゲームでの繋がりが、現実の僕に少しだけ心の支えを与えてくれる。


 明日から新学期の本格的な生活が始まる。


 授業、部活、友達との時間。現実では華奢で頼りない自分だけど、ゲームの中の僕は違う。


 目を閉じると、浮島の風が頬を撫でる感覚が蘇る。


 あの世界での自分が、現実の僕を少しだけ強くしてくれる気がした。


 静かな眠りに落ちる前、アソンの返事が気になりつつも、まぶたが重くなる。


 春の夜が家を包み、静寂が広がる。


 夢の中で、剣を手に持つ自分が浮島に立っていた。


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