9話 アイテム譲渡の仕組み

 フィアが指輪を付けたままくるくる回ると、ガルドが「やれやれ」と肩をすくめる。


「おい、丘菟、AIとのアイテム譲渡はユーザー間の取引の練習になるんだ」


 と僕に説明しつつ、彼は左腕の「智力アップの腕輪」を外した。


「フィア、こっちの方がお前らしいだろ。権利を譲る」


 と言うと、腕輪が光に包まれ、フィアに渡る。


 すると、身体の大きさとは不釣り合いだった腕輪が縮小し、彼女の手首にぴったり合うサイズに変わった。


 虹色の羽根が揺れ、緑のドレスが風に軽く翻る。ガルドが続ける。


「譲渡されたアイテムはAIにもユーザーにも能力が適用される。ただし、持ち逃げや盗まれないよう、持ち主じゃないと効果は反映されない仕様だ。

 サイズも持ち主に合わせて変わるから、フィアにもピッタリだろ?」


 フィアが「わあ、智力アップ!賢くなった気がする!」と笑い、腕輪を掲げる。


 リルが「素敵だね!」と拍手し、桜色のワンレンロングが肩に掛かる。


 ウィッチ帽子を押さえ、「私にも何か譲ってよ」と少し拗ねた声で言う。


 僕は「何か見つけたらな」と笑う。


 ガルドが傷跡のある顔で笑い、「まあ、こいつが喜ぶならいいか」と呟く。


 アイアンメイルが鈍く光り、白銀髪が風に揺れる。


 僕は革鎧の擦れ音を聞きながら、仲間との信頼が形になった瞬間を感じた。


 フィアが「丘菟も何か譲ってよ!」と僕に言うと、ガルドが「我儘言うな」とたしなめる。


 リルが「でも、仲間同士で分けるのって楽しそう」と笑う。


 僕は「そうだな」と頷き、リングを指でなぞる。


 この世界でのやりとりが、現実の僕に温かさを与える。


 ガルドが「アイテムは大事に使えよ。無駄にすんな」とアドバイスし、大剣を肩に担ぐ。


 浮島の頂上で、仲間たちの声が風に混じる。


 フィアが「次はもっとすごいアイテム欲しいな」と言うと、リルが「私も!」と続く。


 ガルドが「ったく、欲張りばかりだ」と笑う。


 僕も小さく笑い、革鎧の軽さが心地よい。仲間との絆が、ここでの冒険をより豊かにする。


 水晶が静かに光り、次の試練が終わりを迎えたことを告げる。


 ガルドが「さて、そろそろ動くか?」と提案し、僕は「うん」と頷いた。


 この時間が、現実の孤独を忘れさせてくれる。


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