7話 報酬、ガルドのポリシー
浮島の風が収まり、水晶の光が静かに消える。
僕とガルドの手元に小さなアクセサリーが現れた。
銀のリングで、表面に「微弱な力+1」と刻まれている。
「ガーディアン討伐の報酬だ。ランダムでステータスが少し上がる」
とガルドが説明する。アイアンメイルが風に鈍く響き、白銀髪が軽く揺れる。
リルとフィアには何も出ず、「報酬はユーザーだけだな」と彼が付け加えた。
僕はリングを指に嵌め、微かな重さが手に馴染むのを感じる。
「ここに一人でいた理由は?」
と聞くと、ガルドは傷跡のある顔を少し硬くした。
「運営の計らいでフィアに羽根が付いたが、ただ受け取るのは俺のポリシーに合わねえ。だから初心者をサポートして、自分で稼いでる。
この遺跡のガーディアンは未クリア者がいないと現れない仕様だ。
俺はここで待って、誰かが来るたび試練をクリアしてきた。お前が来てくれて助かったよ」
と狼耳をピクリと動かし、白銀髪を掻く。アイアンメイルがカチャリと鳴り、大剣を肩に担ぎ直す。
「報酬は微々たるもんだが、積み重ねが大事だろ?」と笑う。
フィアが「ガルドって真面目すぎるよね!」と虹色の羽根を揺らし、からかうように言う。
彼が「うるせえ」と返すと、リルが「でもかっこいいよね」と笑う。
僕はガルドの姿勢に敬意を感じた。
現実では味わえない、努力と仲間への思いがここにはある。
フィアが僕のリングを見て、「それ、力上がるんだね。私にも何かくれない?」と冗談めかして言う。
ガルドが「報酬はユーザー限定だっつってんだろ」と呆れ顔だ。
僕は小さく笑い、「何か見つけたらな」と返す。
リルが「私も欲しい!」とタクトワンドを振る。
ガルドが「ったく、騒がしい連中だ」と呟きつつ、傷跡のある顔に笑みが浮かぶ。
浮島の頂上で、仲間との軽いやりとりが心地よい。革鎧の軽さが体に馴染み、リングの微かな重みが現実の僕に少しだけ力を与える気がした。
水晶が再び光り、次の試練が終わりを迎えたことを告げる。
ガルドが「さて、そろそろ戻るか?」と提案し、僕は頷く。
この世界での時間が、現実の孤独を忘れさせてくれる。
仲間との絆が、僕をここに引き寄せる理由だ。
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