6話 ガルドのサポートAI

 戦闘の余韻が残る中、浮島の風が冷たく頬を撫でる。


 ガルドが大剣を地面に立て、肩を軽く回して息を整える。


「お前ら、なかなかやるな」


 と笑うと、彼の背後で小さな光が瞬いた。


 現れたのは手のひらサイズの妖精だ。


 蝶のような虹色の羽根が背中に付き、紫がかった髪をポニーテールにした少女の姿。緑のドレスを纏い、好奇心に満ちた目で僕らを見回す。


「こいつが俺のサポートAI、フィアだ」とガルドが紹介する。


 狼耳がピクリと動き、白銀髪が風に揺れる。


「実は運営が寸法を間違えてな。普通のAIより小さすぎたから、珍しい妖精種って設定で羽根を付けてくれたんだ。

 初見じゃ俺以外に表示されない仕様だったけど…丘菟、お前なら信用できる。お披露目だよ」


 と傷跡のある顔でニヤリと笑う。


 フィアがふわりと浮かび、「初めまして!ガルドのサポートは私にお任せ♪」と元気な声で言う。


 虹色の羽根が風に揺れ、小さな体が軽やかに動く。


 リルが「可愛い!」と目を輝かせ、桜色のワンレンロングが肩に掛かる。ウィッチ帽子を軽く押さえ、「ねえ、丘菟、私とどっちが可愛い?」と少し拗ねた声で聞く。


 僕は苦笑し、「どっちもいいよ」と返す。


 フィアが「えへへ、ありがとう!」と笑い、ガルドが「見た目より役に立つぜ」と付け加えた。


 アイアンメイルが鈍く光り、彼の存在感が浮島の頂上で際立つ。試練を越えた絆が、また一つ深まった気がした。


 フィアが僕の周りをくるりと飛び、「丘菟って強いね!ガルドと一緒ならもっとすごいことできそう!」と言う。


 リルが「私だって負けないよ!」とタクトワンドを振る。


 ガルドが「まあまあ、仲良くしろ」と笑い、傷跡が刻まれた顔が柔らかくなる。


 僕は革鎧の擦れ音を聞きながら、仲間たちの賑やかさに小さく笑った。


 この世界では、現実の孤独が遠く感じられる。


 フィアの小ささとリルの元気、ガルドの頼もしさが、僕をここに留める理由だ。


 水晶が静かに光り、次の冒険を予感させる。


 ガルドが「さて、次は何だ?」と呟き、僕も剣を握り直す。


 風が強さを増し、浮島の頂上が新たな可能性に満ちているように思えた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る