第2話 宣告

「今日は寒くなくて良かったね!ところでお母さん、今日は何の検査なの?」

「えっとね、こんなの出来ちゃって…」

母は巻いていたスカーフを外して少し首を右に傾げました。

「これは…リンパ?何かコロコロしてる」

「かしら…妹達もみんな癌だったし、気になってかかりつけの先生を受診したら、きちんと検査受けた方がいいからって病院に予約入れて下さったの。今日は日帰り入院になるみたい」

「じゃあちょっと時間がかかるかも知れないね」

「ごめんね。忙しいときに」

「ううん、大丈夫。本でも読みながら待ってるね」


病院に着いて紹介状を出し、問診に記入して母は処置室に入って行きました。本を読みながらどれだけ待っていたか今では思い出せません。結構な時間であったかと。そして首にガーゼを貼り付けた母が出て来ました。

「お待たせ。今日はこれで終わりですって。なんか組織の培養をするとかって」

「結果はいつわかるの?」

「また連絡があるって」

「そう。じゃあ次も声かけてね」


 幾日かの後、病院からの通達は

「培養の結果、癌細胞と判明しました。入院して詳しい検査を受けて下さい」

と言うものでした。

(やはり癌だったか…でも今日日癌は昔ほど怖い病気じゃないし、初期なら治るよね…)と、私はあまり深刻に考えていませんでした。

 入院の日、私は都合がつかず、気丈な母は一人でキャリーバッグを引いてタクシーも使わずに歩いて病院まで行ったそうです。

 そして次の病院からの呼び出しは、父、兄、私。

つまり家族全員。そして母も同席。先生曰く、

「左の腎臓に、直径7センチの癌が見つかりました」

「腎臓なら一つ取っても大丈夫ですよね?」と父。

「残念ながらステージは4。周りの組織に浸潤していて手術による摘出は返って死期を早める為適応ではありません。このまま開けずに持って行ってもらう形になります。余命は3ヶ月です」


末期癌の宣告でした。





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